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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

日本と海外の最新チャートから浮かび上がる"合算する/しない"問題を踏まえ、改善策を再提案する

ビルボードジャパンは毎週木曜夕方に、Global Japan Songs Excl. Japanというチャートを発表しています。これは米ビルボードによるGlobal 200をベースに、日本市場分を除いた上で日本の楽曲を抽出したものです。

最新6月12日公開分Global Japan Songs Excl. Japanは6月14日付Global 200と集計期間が同一となります。このチャートにおける最新動向、ならびに紹介した記事にて気になる点があり、今回紹介します。それは、合算についての取扱です。

 

 

6月12日公開分のGlobal Japan Songs Excl. Japanでは、キタニタツヤ「青のすみか」が上昇しています。

10位にチャートインしたキタニタツヤ「青のすみか」は、5月30日に本楽曲のアコースティックバージョンがリリースされたことで、約1年ぶりにトップ10に返り咲いた。アコースティックバージョンは、『劇場版総集編 呪術廻戦 懐玉・玉折』の主題歌に起用されており、同映画の海外公開によるさらなるランクアップに注目だ。

「青のすみか」は23→10位と推移し、同週20位以内に入った作品の中で上昇幅が最大に。記事にあるように同曲のアコースティックバージョンリリースに伴うもので、上昇幅の大きさからもアコースティック版が合算されていることが解ります。この"合算する"というチャートポリシー(集計方法)は、Global Japan Songs Excl. Japanの基となるGlobal 200のそれに即しています。

 

他方、6月12日公開分Global Japan Songs Excl. Japan(集計期間:5月30日~6月5日)と集計期間が重なるビルボードジャパンソングチャートでは、キタニタツヤ「青のすみか」は6月4日公開分(集計期間:5月26日~6月1日)にて総合100位未満だったのに対し6月11日公開分(集計期間:6月2~8日)では95位に浮上しているものの、ダウンロード指標はオリジナルバージョンとアコースティック版とが別集計となっています。

(上記は6月11日公開分ビルボードジャパンソングチャート、キタニタツヤ「青のすみか」2バージョンにおける有料会員が確認可能なCHART insight。有料会員は総合および各指標20位未満の動向を確認可能であり、ビルボードジャパンは有料会員のみが知り得る情報の掲載を可能としています。)

 

ビルボードジャパンではリミックス等については基本的に合算しないというチャートポリシーを採用しています。その動きが反映されたもうひとつの例にちゃんみな「SAD SONG」が挙げられ、最新チャートではオリジナルバージョンとは別にTHE FIRST TAKEで披露されたNo No Girls FINALISTSとのバージョンが初登場を果たしています。

THE FIRST TAKEについては、音源リリースされた場合はTHE FIRST TAKE動画の再生分がその音源に紐付けられます。このチャートポリシーは、3年前の記事から判明しています。

 「残響散歌」は、オープニングを飾るTVアニメ『鬼滅の刃 遊郭編』が最終回を迎えるなか、テレビ朝日系『ミュージックステーション』、YouTube『THE FIRST TAKE』での実演など、メディア露出が増え、ストリーミング、ダウンロード、動画再生、シングルセールス、Twitter、カラオケの6指標のポイントを伸ばした。米津玄師の「Lemon」、Official髭男dismの「Pretender」「I LOVE...」と並ぶ通算7度目の総合首位で、特に、動画再生は前週比182%増の5,979,516再生をマークし、総合ポイント49%増を大きく牽引した。これは前述の『THE FIRST TAKE』の再生回数が合算されたことによる(注)。

(中略)

注:『THE FIRST TAKE』の合算は、実演楽曲が映像ではなく音源としてリリースされた場合、別計算となります。

 

一方で歌詞の言語のみが異なり、アレンジが同一の場合は合算されます。こちらも最新6月11日公開分のビルボードジャパンソングチャートからの例となりますが、NEWS「チャンカパーナ」は英語詞版がオリジナルバージョンに合算されたことで40位に再浮上を果たしています。

そして3位には、NEWS「チャンカパーナ」が5,251DLでチャートイン。6月2日に英語バージョン「Chankapana (English Version)」がリリースされており、このタイミングで改めて注目が高まったことがうかがえる。

しかし、上記記事に添付されたCHART insight(ダウンロード5位までの総合および各指標順位(各20位まで判明))をみると、NEWS「チャンカパーナ」の表記はあくまでオリジナルバージョンであり、英語詞版(「Chankapana (English Version)」)ではありません。ゆえに言語のみが異なる場合は合算されることが解ります。なおオリジナルバージョンと英語詞版とではメンバーの数が異なるものの、それに関係なく合算対象となります。

 

先述したTHE FIRST TAKEについては、音源化されていない場合は動画再生分がオリジナルバージョンに紐付けられます。動画再生指標は動画に付番されたISRC(国際標準レコーディングコード)がカウント対象となるのですが、オリジナルバージョンと異なる音源でも動画にオリジナル版と同じISRCが付番されていれば合算される形です。これはTHE FIRST TAKEに限らず、ライブ動画が合算対象になる件からもみえてくることです。

加えて、ラジオ指標においては別バージョンがオリジナル版に合算されるケースも時折みられます(下記引用部分のリンク先にて事例を掲載しています)。オンエア曲情報を登録するラジオ局側が別バージョンとして扱っていない等が背景にあるとみられますが、しかしこれらの点を踏まえればビルボードジャパンソングチャートにおける合算基準は不明瞭と思われてもおかしくないと考えます。

 

 

ならば、ビルボードジャパンソングチャートにおいてグローバルチャートに倣い、すべてのバージョンを合算する形にチャートポリシーを変更することが、最もスマートで且つ管理もしやすいのではと考えます。

合算のチャートポリシーの違い、また集計期間初日の差(日本は月曜始まりに対し、グローバルチャートは金曜開始)もあり、日本と海外双方の音楽チャートで結果を出したい歌手の施策はどっちつかずなものになりかねません。そもそも日本の音楽チャートの月曜集計開始という設定が水曜のCDリリース(火曜のフラゲ)を前提としたものではないかと考えるに、音楽チャートが変わることでフィジカル重視の姿勢も変わると考えます。

日本の音楽が世界に轟くために、音楽チャート側にもできることはあります。ビルボードジャパンは日本以外の世界における日本の楽曲のヒットを可視化するGlobal Japan Songs Excl. Japanチャートを立ち上げましたが、その背景に日本の楽曲が世界に羽ばたくための後押しがあると考えるゆえ尚の事、チャートポリシーをグローバルチャートに合わせることは必要ではないかと思うのです。

ビルボードジャパンソングチャートにおける合算基準の変更提案は、Global Japan Songs Excl. Japan新設に関する紹介時(今回のエントリー冒頭にてリンクを添付)、そして昨年4月にも記したことですが(上記参照)、今回あらためて発信した次第です。

タニタツヤ「青のすみか」アコースティックバージョンのリリースは5月30日金曜、つまりは6月12日公開分のGlobal Japan Songs Excl. Japanおよびその基となる6月14日付Global 200の集計期間初日となります。映画『劇場版総集編 呪術廻戦 懐玉・玉折』公開日に合わせてのリリースと思われますが、結果的にアコースティック版が解禁日から1週間フル加算された最新のGlobal Japan Songs Excl. Japanにて、存在感を示しています。

そしてこの「青のすみか」については、オリジナルバージョンがビルボードジャパン最新ソングチャートにおいて動画再生指標を伸ばしている点から(100位未満→45位に上昇)、アコースティックバージョンのリリースを受けてオリジナル版を聴く方が増えていることが推測できます。バージョンの違いに関係なく「青のすみか」をチェックするという聴取行動の表れと考えれば、やはり合算は必要ではないかと感じます。

 

 

日本の楽曲を海外に広めるという意志はビルボードジャパンのGlobal Japan Songs Excl. Japan創設、そしてMUSIC AWARDS JAPANの開始からもみえてきます。一方で、その広まりを示す鑑たるグローバルチャートとビルボードジャパンソングチャートでチャートポリシーが異なることは、機会損失を招きかねないと危惧します。今からでもチャートポリシーについて見直すこと、その議論を開始することを願います。