昨年夏以降再開したこのエントリーですが、今週からタイトルを”前週トップ10初登場曲の最新動向”に変更した上で、副題を新たに設けます。前週の内容はこちら。
ビルボードジャパンソングチャートの動向を分析する者として、真の社会的ヒット曲とはロングヒットする、年間チャートで上位に進出する作品と考えます。週間単位で上位に入るのは好いことですが、他方で所有指標が極度に強い曲は加算2週目に、また接触指標が所有指標的な動きをなぞる曲(主にLINE MUSIC再生キャンペーン採用曲)はキャンペーン終了後に指標が大きく後退し、総合でも急落することが少なくありません。
この急落は毎週のようにみられます。ソングチャートのトップ10は多いときで5曲程度が毎週入れ替わり、ロングヒットするか否かが極端に分かれる状況です。主にライト層の支持が反映されるストリーミング指標がロングヒット曲では強い一方、急落する曲はコアファンとライト層との乖離が大きいのですが、これらを1週分のチャートの順位およびポイントのみで判断することは、現状では難しい状況です。
そのため、このブログエントリーではビルボードジャパンに対しチャートポリシー(集計方法)の改善も提案していますが、あくまで自分なりのと前置きしつつもチャートの見方を提示したいと考えたのがエントリー再開の理由です。
<2025年5月21日公開分 ビルボードジャパンソングチャート
前週初めてトップ10入りした作品の、前週および当週におけるCHART insight>
※CHART insightの説明
[色について]
黄:フィジカルセールス
紫:ダウンロード
青:ストリーミング
黄緑:ラジオ
赤:動画再生
緑:カラオケ
濃いオレンジ:UGC (ユーザー生成コンテンツ)
(Top User Generated Songsチャートにおける獲得ポイントであり、ソングチャートには含まれません。)
ピンク:ハイブリッド指標
(BUZZ、CONTACTおよびSALESから選択可能です。)
[表示範囲について]
総合順位、および構成指標等において20位まで表示
[チャート構成比について]
累計における指標毎のポイント構成
・Mrs. GREEN APPLE「天国」
5月14日公開分 1位→5月21日公開分 4位
・WEST.「ウェッサイソウル!」
5月14日公開分 4位→ 5月21日公開分 100位未満
・DXTEEN「Tick-Tack」
5月14日公開分 5位→5月21日公開分 100位未満
当週におけるストリーミング表はこちら。
フィジカルセールス初加算に伴い前週トップ5内に初登場した2曲は、わずか1週で100位圏外へ。DXTEEN「Tick-Tack」はストリーミングが加点されなかったこと、そしてWEST.「ウェッサイソウル!」はそもそもデジタル未解禁であることが影響しています。WEST.は国際音楽賞を謳うMUSIC AWARDS JAPANで受賞を果たしたことから、デジタル解禁に前向きになるかを注視しています。
そのMUSIC AWARDS JAPANで最優秀アーティスト賞を受賞したMrs. GREEN APPLEは当週もビルボードジャパンソングチャートのストリーミング指標でトップ3を占めていますが、うち前週総合首位も獲得した「天国」はストリーミング再生回数が1割以上減少。米ビルボードによる最新5月24日付Global 200(集計期間:5月9~15日)では同曲が前週の143位から200位未満に後退し、日本の楽曲は200位以内から姿を消しています。
実は、グローバルにおける日本の楽曲のインパクトはこれまでになく下がっているのではと感じています。
ビルボードジャパンには、Global 200をベースに日本市場分を除いた上で日本の楽曲を抽出するGlobal Japan Songs Excl. Japanが存在します。今回はGlobal 200で200位以内に入った日本の楽曲、Global Japan Songs Excl. Japan首位曲およびそのストリーミング数をまとめた表を掲載します。
(下記表における日付はGlobal 200におけるそれであり、Global Japan Songs Excl. Japanの公開日はその2日前となります。またGlobal Japan Songs Excl. Japan首位曲において色付けしている作品は、同週のGlobal 200にて200位以内にランクインしていることを意味します。)
表はGlobal Japan Songs Excl. Japan首位曲動向を踏まえたJ-POPの海外発信に関する提案と、NHKの重要性について(4月28日付)で掲載した内容に最新チャート分を追記したものですが、Global Japan Songs Excl. Japan首位曲のストリーミング数は記事未掲載分を除き、最新5月24日公開分では最も少なくなっています。加えて、Global Japan Songs Excl. JapanではMrs. GREEN APPLEが未だ20位以内にランクインしていない状況です。
最新5月22日公開分のGlobal Japan Songs Excl. Japanでは松原みき「真夜中のドア~Stay With Me」が最高位となる2位に到達。同曲はチャート創設週からランクインし安定した人気を誇っていますが、首位曲の再生回数が減少傾向にあることを踏まえれば、他の曲が全体的にダウンしたことでこの曲が上位に進出するようになったのかもしれません。
Global Japan Songs Excl. Japanで開示されている再生回数は首位曲のみであり、下位の再生回数は底上げされてきているかもしれません。ただ、世界に轟く大ヒットが生まれていないという状況は否定できないでしょう。またGlobal 200では次週、モーガン・ウォーレン『I'm The Problem』収録曲が大挙初登場もしくは再浮上することが見込まれます。そのため日本の楽曲のGlobal 200復帰はさらに難しくなることが予想されます。
一方で、YouTubeで世界配信されたMUSIC AWARDS JAPAN授賞式(Grand Ceremony開催)の翌日が6月7日付Global 200およびそれに基づく6月5日公開分Global Japan Songs Excl. Japanの集計期間初日となります。そこで新設音楽賞の影響がみられるか、日本の楽曲が強くなるかが注目ポイントといえるでしょう。そのインパクトが大きくなかったならば尚の事、音楽賞主催者側が海外発信について見直し、強化することが求められます。