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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

最新ビルボードジャパンソングチャートでトップ10内に初登場した5曲、その動向を読む

最新5月29日公開分ビルボードジャパンソングチャートでは、King & Prince「halfmoon」が制覇。この点については昨日のエントリーにて分析しています。

今後ロングヒットするかどうかがより重要な点と考えますが、週間単位での最高位到達も見事です。King & Princeがビルボードジャパンソングチャートでの首位獲得を目標にしていたこと(そもそもSTARTO ENTERTAINMENT所属歌手でビルボードジャパンソングチャートに言及すること自体少ない状況です)、そしてそのためのスケジュール策定等施策の実行も功を奏した形です。

 

さて、最新のビルボードジャパンソングチャートでは「halfmoon」を含め5曲がトップ10内に初エントリー(うち4曲が100位以内初登場)を果たしていますが、各曲の指標構成は大きく異なります。

 

<最新5月29日公開分ビルボードジャパンソングチャート トップ10初登場曲>

(各曲のCHART insightは後述。)

 

・1位 King & Prince「halfmoon」

 (12,086ポイント フィジカルセールス315,400枚/同指標1位)

・4位 M!LK「ブルーシャワー」

 (6,995ポイント フィジカルセールス98,044枚/同指標3位)

  

・5位 XG「WOKE UP」

 (6,878ポイント フィジカルセールス56,006枚/同指標5位)

・6位 NMB48「これが愛なのか?」

 (6,795ポイント フィジカルセールス280,540枚/同指標2位)

・8位 Mrs. GREEN APPLE「Dear」

 (6,020ポイント フィジカル未リリース)

「halfmoon」「ブルーシャワー」「WOKE UP」および「これが愛なのか?」はいずれもフィジカルセールス指標初加算が大きく影響しています(「ブルーシャワー」は前週88位にランクイン済)。一方で28万枚強を売り上げた「これが愛なのか?」が総合6位となり、4曲では最も順位が低くなりました。

 

それでは、各曲のCHART insightをみてみます。

(掲載したCHART insightにおいて、フィジカルセールスは黄、ダウンロードは紫、ストリーミングは青、ラジオは黄緑、動画再生は赤およびカラオケは緑で表示されます。)

 

King & Prince「halfmoon」は前日のブログエントリーでもお伝えしたように、ダウンロードとストリーミングの2指標でポイント全体の4分の1強を獲得。これがCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」(当週10,152ポイント獲得し総合2位)を上回った一因です。

「halfmoon」に似た指標構成がXG「WOKE UP」。リリースは5月21日火曜であり当週の集計期間2日目以降が加算対象ながら、カラオケ以外の5指標をまんべんなく獲得し総合5位に。「WOKE UP」そして「halfmoon」はストリーミング指標で100位に達していないものの(基となるStreaming Songsチャートでは100位以内にランクインしていません)、300位以内に入り加点対象となったことが高位置での初登場につながっています。

 

総合4位のM!LK「ブルーシャワー」もストリーミング指標が加点されていますが、前週まで4週続けて100位以内に入っていたストリーミング指標(の基となるStreaming Songsチャート)において、同曲は当週100位圏外となっています。

(※キャンペーン紹介を目的に、画像をキャプチャしています。問題があれば削除いたします。)

「ブルーシャワー」はLINE MUSIC再生キャンペーンを実施していたことがストリーミング上位進出の主要因ですが、キャンペーン開始はデジタル先行解禁のタイミングであり、フィジカルリリース前に目標を達成したユーザーが多かったことが推測できます。

またフィジカルリリース週にダウンロードや動画再生が300位未満となり加点されなかったことからは、この曲におけるコアファンとライト層の乖離、またコアファンが注力する指標はどれかが読み取れます。キャンペーン終了後にストリーミング指標が未加算となれば、この乖離はより明確になるものと考えます。

 

尤も、今回ソングチャートトップ10内に初登場した曲のうちNMB48「これが愛なのか?」が唯一、フィジカルセールス以外の指標を獲得していません。

デジタルについてはきちんと解禁しているAKB48グループですが、歌手側そしてコアファン双方におけるフィジカルとデジタルの注力の差が見て取れます。実際、AKB48カラコンウインク」(3月20日公開分ビルボードジャパンソングチャートで2位初登場)が当週73,729枚を売り上げフィジカルセールス指標4位、総合11位に返り咲いています。

ただし「カラコンウインク」は4月以降フィジカルセールス以外の指標が加点されず、またフィジカルセールスも前週300位圏外となっていました。おそらくはフィジカルセールス施策に伴う上昇であることは他指標の未加点からも推測可能であり、またこの状況はAKB48グループ全体にみられる傾向です。

 

 

フィジカルセールスという所有指標は総合ソングチャートでの上位進出に大きなインパクトを与えることが、ここまで紹介した曲の動向から解ります。一方でその効果は一時的ゆえ、ロングヒット曲において獲得ポイントの過半数を占めるストリーミング等の接触指標群が安定し、ヒットを持続させることが重要となります。曲は気になるが歌手のファンというわけではないライト層の支持を得ることは、この点において重要です。

一方で、(仮に一時的でも)最上位を目指すならば所有と接触、フィジカルとデジタルを同時に高めることが重要であることが、King & Prince「halfmoon」の首位獲得という結果から解ります。フィジカルセールスに長けたアイドルやダンスボーカルグループは、まずこの点を意識してデジタル施策を組み、コアファンとのエンゲージメントを高め、且つチャートの重要性を理解してもらい、ライト層へもリーチさせることが必要です。

 

 

さて、最新のビルボードジャパンソングチャート、初のトップ10入りを果たしたもう1曲はMrs. GREEN APPLE「Dear」。フィジカル未リリースで8位発進となり、獲得ポイントの過半数をストリーミング指標が占めています。

「Dear」のストリーミング指標(の基となるStreaming Songsチャート)は8位と高位置に。サブスクサービスの中で上昇が遅かったSpotifyでもその後ヒットの兆しをみせており、ロングヒットする可能性も。「Dear」は当週初めてトップ10入りした5曲の中で、次週最も高い位置にとどまるものと思われます。

5月29日公開分ビルボードジャパンソングチャート、ストリーミング再生回数が可視化された曲ではMrs. GREEN APPLEライラック」(総合3位/ストリーミング指標2位)および「ケセラセラ」(同14位/7位)も他曲に比べて高く、「Dear」リリース効果が反映されたといえます。Mrs. GREEN APPLEの施策の巧さは以前も紹介しましたが、リリースの度に歌手としてのステータスをきちんと高めているといって差し支えないでしょう。

 

 

最後に。前週フィジカルセールス指標初加算に伴い総合ソングチャート2位に初登場したAぇ! group「《A》BEGINNING」は、当週31位へ後退しています。フィジカルセールス9位、ラジオ10位を記録した一方、デジタル未リリースが小さくない下降幅につながったといえるでしょう。

「halfmoon」の次週の動向を確認する必要はあるものの、King & Princeのデジタル解禁に伴うビルボードジャパンソングチャート制覇という結果を、Aぇ! groupをはじめとするSTARTO ENTERTAINMENT側がどう捉えるか注視する必要があります。