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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

Mrs. GREEN APPLE「ライラック」が首位返り咲き、SixTONES「バリア」を僅差で上回った要因とは

最新3月26日公開分(集計期間:3月17~23日)のビルボードジャパンソングチャートは前週首位に立ったKing & Prince「HEART」が18位に後退。Mrs. GREEN APPLEライラック」が首位に返り咲いています。

本楽曲は、5週ぶり通算7度目の首位を獲得。前週と比べてストリーミングが103%、ダウンロード104%、カラオケ103%に増加し、50回目のチャートインを果たした。

当週はSixTONES「バリア」がフィジカルセールス指標初加算となりましたが、「ライラック」がわずかに上回っています。当週はこの2曲の動向を分析します。

 

 

Mrs. GREEN APPLEライラック」は当週ポイント前週比102.0%を記録、前週超えを達成しています。

ストリーミングはMrs. GREEN APPLEのランクイン曲すべてが前週超えを果たしており、「ライラック」も週間1千万回再生の大台に返り咲いています。『春休みシーズンで音楽の聴取時間が増えている』(上記記事より)ことも影響していますが、当週の集計期間は平日が4日であり、日本では平日より土日祝日のストリーミング再生回数が伸びることも「ライラック」のポイント上昇に寄与したといえるでしょう。

また今回の集計期間中に開催されたMTV Video Music Awards Japanにて「ライラック」がVideo of the Yearを受賞したこと、そのことがメディアを介して紹介されたことも影響したと考えられます。

 

 

仮にMrs. GREEN APPLEライラック」が前週同様の水準(7,784ポイント)だったならば、当週の集計期間において平日が5日間だったならば、SixTONES「バリア」が総合首位に立った可能性は高かったでしょう。祝日の存在が「ライラック」を有利にしたのは同曲がサブスク解禁されていることが大きく、翻って「バリア」ではデジタル未解禁であったことが総合首位を逃した要因と断言していいでしょう。

 

3月に入ってからはSTARTO ENTERTAINMENT所属歌手作品が前週まで総合首位に立っていますが、それらの作品とSixTONES「バリア」を比較すると、みえてくるものがあります。

<2025年3月公開分のビルボードジャパンソングチャート 

 総合2位以内に登場したSTARTO ENTERTAINMENT所属歌手作品の動向>

 

※ 掲載しているCHART insightは、フィジカルセールス指標初加算時のものです。

 

※CHART insightの説明

 

[色について]

黄:フィジカルセールス

紫:ダウンロード

青:ストリーミング

黄緑:ラジオ

赤:動画再生

緑:カラオケ

濃いオレンジ:UGC (ユーザー生成コンテンツ)

 (Top User Generated Songsチャートにおける獲得ポイントであり、ソングチャートには含まれません。)

ピンク:ハイブリッド指標

 (BUZZ、CONTACTおよびSALESから選択可能です。)

 

[表示範囲について]

総合順位、および構成指標等において20位まで表示

 

[チャート構成比について]

累計における指標毎のポイント構成

 

 

なにわ男子「Doki it」、Travis Japan「Say I do」、King & Prince「HEART」およびSixTONES「バリア」については、フィジカルセールス指標初加算時および翌週の動向を下記表にまとめています。フィジカルセールス指標の元となる売上枚数はSixTONES「バリア」が最も多いながら、総合ポイントは最も少なくなっています。

フィジカルセールス指標初加算時にストリーミングも強かったKing & Prince「HEART」はSixTONES「バリア」の1.79倍のポイントを獲得し、首位初登場時の累計ポイントに占めるフィジカルセールスの割合は5割を下回っています。またなにわ男子「Doki it」(ストリーミング指標300位未満につき未加点)やTravis Japan「Say I do」はダウンロード指標の存在も小さくありません。これらからデジタルの重要性がよく分かるでしょう。

 

当週のソングチャート、動画再生指標の上位順に並べ替えたCHART insightを上記に。有料会員が確認可能な各指標100位までの順位を表示しています(ビルボードジャパンでは有料会員のみ知り得る情報の掲載を可能としており、今回紹介しています)。動画再生はストリーミングと比例する傾向にあることから、動画再生指標が好調なSixTONES「バリア」はサブスク解禁すればストリーミング指標を十分獲得できたと考えます。

(上記CHART insightはフィジカルセールス初加算時におけるポイント構成比であり、累計ではありません。この点についてはビルボードジャパンがCHART insightを”当初のアナウンス通り”に変更したことを踏まえた提案(2024年9月20日付)をご参照ください。)

その「バリア」は、SixTONESによるフィジカルシングルの前作「GONG」(7月17日公開分 2位 7,428ポイント)より300ポイント以上増加しています。初週フィジカルセールスは6万枚以上下がったものの、動画再生指標は「GONG」の33位に対し「バリア」は7位となっていることも、フィジカルセールス指標初加算時における「バリア」の強さの要因といえます。デジタルを味方につけることの重要性はここからも解るはずです。

 

 

フィジカルセールス(特にアルバム)ではSnow Manに次ぐ高水準をマークしているSixTONESですが、今作「バリア」の総合ポイントは(フィジカルデビューにおける)直近の先輩や後輩に差をつけられた形です。

尤も、フィジカルセールス指標加算2週目に急落するならば社会的ヒットに至るとは言い難いでしょう。そしてそもそも論として、音楽チャートがすべてではないと言われればそれまでです。しかし後者に関し、フィジカルセールスでの首位(ビルボードジャパンよりオリコン)を重視しているならばチャートにこだわっているとほぼイコールであり、ならば社会的ヒットの鑑たるビルボードジャパンを意識しない理由はないでしょう。

 

音楽への高いこだわりが広く音楽ファンに浸透しつつあるといえるSixTONESは、デジタルに放つことでより多くの方を引き込めるものと推測します。日本の音楽業界全体がより好くなる意味でも、彼らのデジタル解禁は大きな意味を持つはずです。