(※追記(8月9日4時46分):引用枠内で紹介したSTARTO for you「WE ARE」について歌手名および曲名に誤りがあり、訂正を実施しています。心よりお詫び申し上げます。)
今週も大きな地震が発生し、異様な状況が続いています。
特に大きかったのは能登半島地震ですが、エンタテインメント業界において支援の動きがみられます。その一環が、先月から今月にかけて登場したふたつのチャリティーソングです。今回はTOBE、および旧ジャニーズ事務所(現STARTO ENTERTAINMENT)から発信された2曲におけるチャートアクションを紹介します。
(なおto HEROes「Be on your side」は厳密には"プロジェクトテーマソング"と謳われていますが、寄付という性質上チャリティーソングという位置付けで紹介します。)
TOBE所属歌手が一堂に介し、”to HEROes"名義で「Be on your side」を発表。TOBE所属歌手が集合した東京ドームでのイベント【to HEROes ~TOBE 1st Super Live~】最終公演の翌日である3月18日月曜にデジタル先行でリリースし、フィジカルは5月1日に発売します。
(上記はNumber_iの公式YouTubeチャンネルからアップされています。曲紹介ページはこちら。)
そしてSTARTO ENTERTAINMENT所属歌手の多くが一堂に介し、”STARTO for you”名義で「WE ARE」を発表。STARTO ENTERTAINMENT所属歌手が集合した東京ドームでのイベント【WE ARE! Let's get the party STARTO!!】公演直後の4月10日水曜21時にデジタル先行でリリースし、フィジカルは6月12日に発売します。
(上記はリリックビデオのショートバージョン。またイベントや曲の関連ページは後述します。)
この2曲は共に、ビルボードジャパンソングチャートの初エントリー時においてダウンロード指標が突出しています。2曲の初登場時におけるCHART insightは以下に。
・to HEROes「Be on your side」
3月27日公開分ビルボードジャパンソングチャート 16位初登場 (3,529ポイント獲得)
20位内ランクインの指標:ダウンロード(2位 20,300DL)、動画再生(10位)
・STARTO for you「WE ARE」
4月17日公開分ビルボードジャパンソングチャート 33位初登場 (2,364ポイント獲得)
20位内ランクインの指標:ダウンロード(3位 19,705DL)
(CHART insightは3月27日公開分(to HEROes「Be on your side」初登場週)以降にリニューアルしており、無料会員は総合および各指標の20位未満が確認できない形です。また円グラフにはUGC(ユーザー生成コンテンツ)も含まれていますが、ソングチャートの構成指標には含まれていません。なおこの円グラフはリニューアル以降は累計表示と紹介されていますが、確認する限り現在も最新週の動向を示すものと考えます。)
初週ダウンロード数はto HEROes「Be on your side」、STARTO for you「WE ARE」共にさほど変わりません。初週カウント対象期間が前者が1週間、後者が4日と3時間であることを踏まえれば、「WE ARE」が健闘したと捉えることが可能です。
他方、総合順位やポイントでは小さくない差が生じており、「Be on your side」は「WE ARE」より1,165ポイント多く獲得しています。初登場時のCHART insightから、ストリーミング(青で表示)および動画再生(赤)という接触2指標が「Be on your side」で加点されている(300位以内に入っている)、一方で「WE ARE」では加点されていない(300位未満である)ことが解ります。
動画においては、to HEROes「Be on your side」のミュージックビデオがIMP.、北山宏光さん、Number_i、三宅健さんそれぞれの公式YouTubeチャンネルにてアップされている(冒頭の挨拶部分のみ異なる)一方、STARTO for you「WE ARE」ではミュージックビデオは存在せず、また先述したリリックビデオは短尺版となります。短尺版は再生回数が少なくなる傾向があります。
2曲とも公演から間もなく配信されていますが、「Be on your side」のミュージックビデオは【to HEROes ~TOBE 1st Super Live~】公演の模様を振り返られる仕様ともいえます(最終公演がAmazon Prime Videoで生配信されていることもあり、ライト層にも訴求可能です)。他方、【WE ARE! Let's get the party STARTO!!】は大阪での最終公演が生配信されるものの、東京ドームでの公演はいわゆるクローズドな内容となっています。
仮にSTARTO for you「WE ARE」がto HEROes「Be on your side」同様、ライブの模様をミュージックビデオとして公開すれば注目度は高まったはずです。ただし公演は来月も行われること、また(東京公演の模様は報道された模様ですが)ライブのミュージックビデオ化が大阪公演のネタバレになる可能性を踏まえ、ビデオは制作しないと判断したのかもしれません。
一方、ストリーミング指標は2曲共に100位以内に到達していません。初週1週間フル加算かどうかも影響しているとはいえますが、この動向からはデジタルよりもフィジカル、接触よりも所有というコアファン(もっと大きくいえばアイドルファン)の心理がみえてくるかもしれません。また推す歌手が参加していながらも一部に限られるならば、接触さらには所有行動にも積極的ではないという心理もみえると感じています。
※本シングル、ならびに配信楽曲は、すべて2024年12月31日までの期間限定販売となります。
※本シングル、ならびに配信楽曲は、すべて2020年12月31日(木)までの期間限定販売となります。
STARTO for you「WE ARE」は今年いっぱいの販売や配信であることが公式ホームページで紹介されていますが、この動きは旧ジャニーズ事務所時代にリリースされたチャリティーシングル(Twenty★Twenty名義での「smile」)と同様であり、前回の事例、また現在でもSTARTO ENTERTAINMENT側が全体的にデジタルに明るくないことを踏まえ、ともすればコアファン内でも接触行動が生まれにくいのかもしれません。
TOBE、STARTO ENTERTAINMENT双方のチャリティーシングルにおける初週動向からは所有指標が高位置に登場したことが解る一方、接触指標においては動画等の充実度合いが作用するだろうことが見て取れます。また、ストリーミングの獲得については双方に課題が残ったのではと考えます。ライト層人気が特に反映されるこの指標ですが、まずはコアファンの間で聴取行動に至ってもらうことが必要でしょう。
そして二社に対する疑問も浮かんでいます。STARTO ENTERTAINMENTに対しては先日記したばかりです。
チャリティーソングゆえの措置かもしれませんが、しかし聴かれ続ける限り利益が発生することを考慮すれば、解禁を続けることは重要と考えます。そしてデジタルに明るくないという姿勢を組織変更後も踏襲している旧ジャニーズ事務所側に対し、逆風が吹き続けるのではないか、変わったことを訴求できないのではないかと捉えています。
一方でTOBEにおいては、今回のフィジカルシングルも公式ショップのみでのリリースのようです。フィジカルにおける販路限定は所属歌手においても同様ですが(ただし通常盤はリリース後も購入可能な模様)、たとえばアルバムや今回のようなチャリティーシングルに限っては販路を拡げていいのではというのが私見です。