イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

【ビルボードジャパン最新動向】19週ぶり首位の「アイドル」、ポイントはもっと伸びたと考える理由

最新1月17日公開分のビルボードジャパンソングチャート(集計期間:1月8~14日)では、前週初登場で首位を獲得したNumber_i「GOAT」が3位に後退、YOASOBI「アイドル」が19週ぶり、通算22週目の首位を獲得しました。

YOASOBI「アイドル」は昨年9月6日公開分にて最後に首位を獲得した後、4ヶ月以上に渡ってその座に就くことはありませんでした。しかしその期間、ポイント前週比が1割以上減少したのは首位から離れた直後の週、そして当週のみ。他の週においてはポイントが下がるとしても1割以内にとどめ、上昇する週も複数みられます。

YOASOBI「アイドル」が首位から離れた直後の週には動画再生指標の欠測(もしくは欠損)(上記リンク先参照)、そして当週は昨年の『NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか 以下"紅白"と記載)の影響に伴う上昇の反動が考えられます。一方で前週2位だったAdo「唱」はポイント前週比81.3%で推移し、結果的に44ポイントという僅差で「アイドル」が勝った形です。

数値が可視化されているダウンロード、そして指標の基となるストリーミング再生回数については共に、Ado「唱」よりYOASOBI「アイドル」の前週比が勝っています。これは後述する動画の他指標への影響、さらには今回の集計期間の前日に放送された『NHKスペシャル 世界に響く歌 ~日韓POPS新時代~』の反響も考えられます。

この番組については放送の翌日、このブログでも取り上げました(『NHKスペシャル 世界に響く歌 日韓POPS新時代』の関連データを紹介し、私見を記す参照)。番組でYOASOBIが取り上げられたことも、最新チャートにおける首位獲得に貢献したと考えていいでしょう。

 

 

さて、今回のチャートについては特にYOASOBI「アイドル」において、さらなるポイントを獲得できた可能性があったのではと感じています。紅白等のパフォーマンス映像が動画再生指標を加点できる体制にしていれば、と思わざるを得ないのです。紅白の映像は他指標に波及したと捉える一方、動画再生指標にはダイレクトに反映されていないだろうというのが私見です。

 

NHKが紅白パフォーマンス映像を放送から間もなくYouTubeにて短尺版で公開した試みは、前回以上の人気を博しています。特にYOASOBI「アイドル」が抜きん出る点等について、徒然研究室さんが日々ポストしたものをnoteにまとめられていますが、現在YouTube動画はそのほとんどが削除されています。その姿勢やNHKYouTube動画の利便性の問題等については、一昨日付の下記エントリーにてまとめています。

このエントリーを、noteプロデューサー/ブロガーの徳力基彦さんが引用してくださいました(この場を借りて感謝申し上げます)。『NHKYouTube動画は記事にエンベッドができないもっとも厳しいポリシーになってる』という表現に納得した次第です。

 

一昨日付のブログエントリー(→こちら)でも記したように、NHK発のYouTube動画はISRC(国際標準レコーディングコード)が未付番と思われ、ゆえにビルボードジャパンソングチャートの動画再生指標ではカウントされません。動画再生指標のカウント方法はビルボードジャパンで紹介されていますが(下記ポスト参照)、未付番(ゆえカウント対象外)となる場合は『各社様に今後も引き続き呼びかけを続けて』いるとのことです。

しかし、ビルボードジャパンが呼びかけを行っている『各社』には、ともすれば放送局やテレビ番組制作会社は含まれていないのではと感じています。これはNHK発のFoorin「パプリカ」や嵐「カイト」の動画がずっとカウントされなかったこともさることながら、たとえばテレビアニメのノンクレジットムービーとして公開された動画の再生回数もカウントされないことから、そう捉えていいのかもしれません。

(星野源「生命体」におけるふたつのCHART insightについては総合および構成全指標を表示したもの、および動画再生指標のみ抽出したものを掲載しています。)

星野源「生命体」は昨年9月26日に『SONGS』(NHK総合)の、今年1月10日には紅白のパフォーマンス映像がフルにてNHKアカウント発としてYouTubeに公開されました。動画公開は上記CHART insightにて前者は7週目(集計期間2日目以降)、後者は最新21週目(集計期間3日目以降)に反映されるはずですが、動画再生指標は共に300位圏外となっています。

またテレビアニメ『マッシュル-MASHLE-』のノンクレジットオープニングムービーが1月7日に公開され、現時点で600万回再生を突破。Creepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」が世界でバズを起こしていることはCreepy Nutsが世界でヒットの兆し、そして乱高下するキングリーとは…Spotify直近の注目動向(1月16日付)で紹介しており、世界からのアクセスも多いと思われますが、この動画も動画再生指標未カウントの模様です。

テレビアニメのノンクレジットムービーがビルボードジャパンソングチャートの動画再生指標において未カウントとなることは、『チェンソーマン』や『呪術廻戦』を例に紹介しています。

テレビアニメ『チェンソーマン』のオープニング曲である「KICK BACK」は、制作側のYouTubeアカウントでノンクレジットオープニングムービー(→こちら)が今回の集計期間中にアップされ、現段階で2千万回以上の再生回数を誇りますが、おそらく公式動画扱いではないと考えられます。

一方で上記動画は米津玄師さんの公式YouTubeアカウントから10月15日土曜に公開。現段階で170万弱の再生回数を記録しており、この再生回数(のうち国内での再生分)が動画再生指標に加算されたといえます。仮にこの動画が公開されていなければ、総合首位に至れなかったとも言えるでしょう。

「SPECIALZ」についてはオープニングテーマに起用されたテレビアニメ『呪術廻戦』のノンクレジットオープニングムービーが9月8日4時の段階で1385万もの再生回数を記録していますが、こちらは動画再生指標の対象となっていません(当該動画にISRC(国際標準レコーディングコード)が採番されていない、もしくは動画がUGC(ユーザー生成コンテンツ)扱いとなり動画再生のカウント対象外になっているためと考えられます)。

テレビアニメのノンクレジットムービーは歌手側の公式動画として扱われず、UGC(ユーザー生成コンテンツ)とみなされ除外されている可能性もありますが、これらはいずれも制作会社側のYouTubeチャンネル発の動画となります。しかし米津玄師「KICK BACK」は歌手側の公式YouTubeチャンネルにて(ノンクレジットムービーより1分近く短い)33秒尺のアニメ動画をアップし、そちらはカウント対象になったと考えられます。

 

ここから言えることは、テレビ関連(放送局や制作会社)側において、ISRC(国際標準レコーディングコード)を付番することの意識が総じて高くないという可能性です。

披露された曲やタイアップに起用した曲が音楽チャートで人気となれば、テレビ番組の見逃し配信や口コミでの話題も拡がり、さらには番組や会社への信頼にもつながるでしょう。ゆえにISRCの付番、そして歌手側のYouTubeチャンネルでのアップ(に託すこと)も含め、テレビ関連側は動画発信のあり方を見直すべきと考えます。

そしてビルボードジャパンにおいても、まずはテレビ関連側のYouTubeチャンネルにてアップした動画を公式動画/UGC(ユーザー生成コンテンツ)のどちらとみなしているのか、そして公式動画とみなしているならばテレビ関連側に対する働きかけを行っているのかを提示していただきたいと願います。

 

 

テレビ関連動画による現状のアップロードでは歌手側も、そして結果的に番組や放送局、制作会社側も損をしているのではという疑問を提示します。『放送直後から』『歌手側の公式YouTubeチャンネルで』『期間限定せずに』『フルで』という、テレビ番組のパフォーマンス映像をYouTubeに公開する上で提示した理想の4条件が叶うならば、国内はもとより世界に対し日本発の音楽そしてエンタテインメントが轟くはずです。