2021年度下半期に社会的にヒットした、もしくはチャートを語る上で欠かせない曲を選んでみました。J-Popについては12月10日に発表されたビルボードジャパンによる各種年間チャートを、海外の作品については日本時間の12月3日に発表された米ビルボードによる各種年間チャート、特にソングスチャートおよびグローバルチャートを参照しています。なおこれまでは10曲のところ、今回12曲選んでいます。
2021年度上半期についてはこちら。
今回は今年6月から11月の間にヒットした作品を取り上げています。リリースタイミングはこの限りではありません。その作品を以前ブログで取り上げている場合、そのエントリーのリンクを掲載しています。
なお、今週配信されたビルボードジャパンのポッドキャスト(ビルボードポッドキャスト)にて、2021年度下半期のビルボードジャパンソングスチャートおよびアルバムチャートが公開されています。こちらもぜひご参照ください。
2021年度下半期ソングスチャート
— Kei (@Kei_radio) 2021年12月15日
1位 #BTS「#Butter」
2位 #優里「#ドライフラワー」
3位 BTS「#PermissionToDance」
4位 #Official髭男dism「#CryBaby」
5位 BTS「#Dynamite」
6位 #YOASOBI「#怪物」
7位 YOASOBI「#夜に駆ける」
8位 #藤井風「#きらり」
9位 #Ado「#踊」
10位 #米津玄師「#PaleBlue」
2021年度下半期アルバムチャート
— Kei (@Kei_radio) 2021年12月15日
1位 #BTS『#BTSTHEBEST』
2位 #SnowMan『#SnowManiaS1』
3位 #KingandPrince『#ReSence』
4位 #SEVENTEEN 『#Attacca』
5位 #Official髭男dism『#Editorial』
6位 #KisMyFt2『#BESTofKisMyFt2』
7位 SEVENTEEN 『#YourChoice』
(続く)
2021年度下半期アルバムチャート (続き)
— Kei (@Kei_radio) 2021年12月15日
8位 #V6『#Very6BEST』
9位 #BTS『#Butter』
10位 #TOMORROW_X_TOGETHER『#ChaoticWonderland』
※ BTS『Butter』のフィジカルはアルバムとしてカウントされています。
2021年度下半期の社会的なヒット曲、もしくはチャートを語る上で欠かせない曲
① back number「水平線」
2021年度下半期を代表するヒット曲のひとつにして、実は昨年YouTubeにて公開されていた作品。実質ずらし解禁になったことがプレビュー効果やリリースの切望につながり、チャートアクションにさらに有効に作用したと言えます。これまでサブスクに強い歌手は2010年代半ば以降にデビューした方が強い状況でしたが、サブスク解禁が遅かったと言えるback numberがこの1年で一気にサブスクに強くなった印象です。
② 藤井風「きらり」
5月に週間ソングスチャートで2位に初登場した際、下記ブログエントリーで『楽曲リリースに至るまでの認知度の絶え間なき上昇、タイアップによる箔付け、音楽フェスやYouTube配信で見せつけた非凡な才能』が押し上げた要因と記載しましたが、その勢いを長くキープし、下半期のビルボードジャパンソングスチャートでトップ10入りを果たすまでに至っています。
③ Ado「踊」
藤井風「きらり」同様、下半期のビルボードジャパンソングスチャートでトップ10入り。上半期では「うっせぇわ」を選出しましたが、その後も「ギラギラ」そしてこの「踊」をはじめとしたヒット曲が続々登場したことで、Adoさん自体の認知度、そして新曲への期待度の高さがチャートアクションで証明されることとなりました。
④ YOASOBI「三原色」
下半期のYOASOBIを代表する曲と言える一方、この曲のミュージックビデオにおける再生回数がきちんとカウントされていないのではという状況が続いています。
(上記は最新12月15日公開分(12月20日付)ビルボードジャパンソングスチャートにおけるCHART insight。上は総合および構成8指標の順位、そして下は総合および動画再生指標のみの順位を抜粋したものですが、「三原色」の動画再生指標はほぼカウントされていないといっていい状態です。)
動画再生指標は、ISRC(国際標準レコーディングコード)が付番された公式動画がカウント対象となります。ゆえにISRCが未付番の可能性もありますが、一方ではビルボードジャパンによるデータ処理上の問題もありそうです。
このような事態は他の曲でも発生しており、歌手側がきちんとビルボードジャパンにデータ欠損の理由を問う必要があります。YOASOBIは2021年度のビルボードジャパン年間アーティストチャートにおいてBTSに終盤で逆転されていますが、この欠損がそのままになっていたことによる損失はともすれば大きかったのではないでしょうか。
【今年のBillboard】
— YOASOBI (@YOASOBI_staff) 2021年12月10日
🎵総合SONG TOP10に3曲、TOP100に11曲
📕総合AL #THEBOOK 4位
👫アーティストランキング2位
沢山の応援本当にありがとうございました!
アーティストランキング1位を目標に掲げていたので悔しい気持ちもありますが、更なる高みを目指し来年も頑張ります!よろしくお願いします🔥 https://t.co/24zonG5MIM pic.twitter.com/WYLylyHSdU
データを提供する段階でのYouTube側のミスか、ビルボードジャパンのデータ処理の問題か、はたまたYouTubeにおけるISRC未付番の可能性もゼロではなく、その原因は判りませんが、いずれにせよ判明の段階できちんと申告しなければ最終的に損をするのは歌手側です。
⑤ INI「Rocketeer」・BE:FIRST「Gifted.」・なにわ男子「初心LOVE」
(なにわ男子「初心LOVE」のミュージックビデオはショートバージョンとなります。)
今回この企画で初めて、3曲をまとめてひとつの項目として選曲した形です。いずれも11月にフィジカルでデビューし、そのタイミングでチャート2位までに上昇。音楽業界全体が活性化されたと言っていいでしょう。その中でBE:FIRST「Gifted.」およびなにわ男子「初心LOVE」はビルボードジャパンソングスチャートを制したのみならず、「初心LOVE」は連覇を達成しています。
INI「Rocketeer」やBE:FIRST「Gifted.」はストリーミングの強さが、なにわ男子「初心LOVE」は動画再生やTikTokの人気がチャート上位進出の要因となっているのが興味深いところ。ただしその一方で、ストリーミング指標が強いながらもコアなファンの再生に偏っているだろう点や、TikTokで大ヒットしながらダウンロードやサブスク未解禁のために遷移先が限られてしまうといった弱点の克服が、3組にとっての課題と言えます。
テレビ露出の圧倒的な差やチャート上で結果を残してもその差が埋まらないことに、既存メディアの課題も露出したというのが私見です。一方、ビルボードジャパンによるチャートポリシーの変更やBE:FIRST「Gifted.」でのJ-Popの壁を打ち破る姿勢を踏まえれば、音楽業界が健全化しチャートが益々面白くなってきていると感じています。なにわ男子「初心LOVE」の戦略も、所属事務所の既存の手法をいい意味で打ち破っています。この3組の動向が、今後の音楽業界活性化やメディアの健全化につながると信じます。
⑥ BTS「Butter」
米ビルボードソングスチャートで2021年度最長不倒となる通算10週の首位を獲得した一方、所有指標に偏りがあるため広く社会に浸透したとは言い難いのではないかという自分の見方は、厳しいと言われるのを承知で、しかし現在でも変わっていません。
対象的に日本では、接触指標が特大且つロングヒットし、文句なしのチャートアクションを記録。下半期では圧倒的な強さを誇る作品となりました。LINE MUSIC再生キャンペーン(再生回数キャンペーン)を用いながら終了後も勢いが持続しており、コアなファンからライト層への人気の波及がよく解ります。続く「Permission To Dance」も大ヒットし、BTSは英語詞曲でさらなるステップアップを果たしたと言えるでしょう。
⑦ オリヴィア・ロドリゴ「Good 4 U」
米ビルボードソングスチャートで初登場首位を記録しながら翌週以降はBTS「Butter」に阻まれる形となりましたが、年間チャートは「Butter」を上回りました。オリヴィア・ロドリゴは来年開催されるグラミー賞では主要4部門すべてに絡んでおり、本命といえる状況です(グラミー賞ノミネートについてはひとつ前の項目のリンク先をご参照ください)。
そして重要なのは、この「Good 4 U」がロックのアプローチを施しているということ。そのロックはTikTokのムーブメントに乗り、また同ジャンルがこれまで強くなかったストリーミングで存在感を高めていますが、ロック復権の立役者のひとりがオリヴィア・ロドリゴというのは非常に興味深いと言えます。
⑧ ザ・キッド・ラロイ & ジャスティン・ビーバー「Stay」
米ビルボードソングスチャートで通算7週首位を獲得し、ビルボードジャパンでもK-Pop以外の洋楽としてレディー・ガガ & アリアナ・グランデ「Rain On Me」以来となるトップ10入りを達成。TikTokでバズを起こしたのみならず、そのバズの一因となるダンスをチョコレートプラネット松尾駿さんが披露した特別動画の存在も話題となりました。また直近ではクレヨンしんちゃんも起用されています。
日本ではK-Pop以外の洋楽は強くはありませんが、TikTokの興隆や芸人等の起用が洋楽の認知浸透に有効に作用することが判明したと言えるでしょう。
⑨ アデル「Easy On Me」
6年ぶりのアルバム『30』からの先行曲にして、最新12月18日付米ビルボードソングスチャートで通算7週目の首位を記録している「Easy On Me」。米ビルボードソングスチャートでは登場2週目に首位を獲得しましたが、初週はわずか5時間で100位以内エントリーを達成しており、期待度の高さがよく解る結果となりました。
「Easy On Me」および『30』が2023年開催のグラミー賞にどこまで絡むか、注目です。
⑩ LISA「Money」
(「Money」のミュージックビデオは現段階で公開されておらず、上記は同曲のパフォーマンス動画となります。)
K-Popはグローバルな人気を得ていると言えますが、特にアメリカにおいてはBTSにおいても所有指標が強い一方で接触指標の人気が比例しないため、ロングヒットに至りにくい状況にあります(BTS「Butter」においては所有指標が長期に渡って強く、ゆえに10週首位を記録しています)。その中にあってBLACKPINKからのソロ曲「Money」がもうひとつのシングル曲「Lalisa」とは異なり、動画の人気を受けてチャートを徐々に上昇。
K-Popにて新たなチャートアクションの形が生まれたことは注目すべきと考えます。今後「Money」のようなチャートアクションが米ビルボードソングスチャートでも増えていけば(つまりは接触指標が強くなっていけば)、K-Popの米での認知浸透がさらに高まることになるでしょう。
以上10曲、如何だったでしょうか。2022年度も社会的なヒット曲が生まれること、そしてJ-Popが世界に轟いていくことを楽しみにしています。