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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

吉田夜世「オーバーライド」ソングチャート100位以内到達、ネット音楽の社会的ヒットに必要な指標とは

最新4月24日公開分ビルボードジャパンソングチャートでは、吉田夜世「オーバーライド」が98位に初登場を果たしています。

(上記ビルボードジャパンのCHART insightは無料会員向けに発信されているものであり、総合および構成指標は20位までが公開されています。)

吉田夜世「オーバーライド」はニコニコ動画で既に人気を博していた曲であり、最新4月24日公開分のビルボードジャパンによるニコニコ VOCALOID SONGS TOP20チャートでは首位の座に返り咲いています。

一方で、ニコニコ動画での人気曲が総合ソングチャート100位以内に入ることは多くはありません。カップラーメンのCMにも使用されたゆこぴ「強風オールバック」もそのひとつですが(ただし同曲は収録アルバムのリリースまでデジタル解禁されなかったのが要因と捉えています)、一方で吉田夜世「オーバーライド」の総合チャート登場にはストリーミングの獲得が寄与していることが、Heatseekers Songsチャートから判ります。

そして吉田夜世「オーバーライド」はポイントを倍増させ3位に上昇。Synthesizer V AI「重音テト」をボーカルに起用した本楽曲は、年末年始にニコニコ動画で大量な二次創作を生み出し、“ニコニコ VOCALOID SONGS TOP20”で通算8週首位を記録した。ポイントの内訳を見ると動画再生が11位、ダウンロードとストリーミングもトップ300圏内に入り、より広い範囲で注目を浴びている。

(ビルボードジャパンによるHeatseekers Songsチャートの概要については、About Charts│Billboard JAPANをご参照ください。)

吉田夜世「オーバーライド」はダウンロード指標が6週連続で300位以内に入っていますが、ストリーミング指標については今回初めて300位圏内に入り加算対象に。これが『より広い範囲で注目を浴びている』状況につながり(『』内はビルボードジャパンの記事より)、総合100位以内ランクインの原動力となっています。

 

ちなみに、CHART insightは先月下旬にリニューアルし、円グラフが示す指標構成が最新週から累計に変更したとビルボードジャパン側は説明しています。ただ、現在でも最新週の指標構成を示しているというのが私見です。

この見方が正しければ、吉田夜世「オーバーライド」は当週、100位未満300位圏内のストリーミング指標による獲得ポイントが、11位を記録した動画再生指標のそれを上回ったことになります。ストリーミング指標の重要性はこの点からもよく解るのです。

 

 

このストリーミング指標の獲得および強化が、ボカロPやVTuber等のネット音楽を広く音楽ファン、そして世間に浸透させるために必要なことではないかというのが私見です。この点は1年前にも指摘しています。

上記エントリーでも紹介したVTuberの星街すいせいは、現在「ビビデバ」がヒット中。最新4月24日公開分ビルボードジャパンソングチャートで21位にランクインしていますが、指標構成をみるとストリーミングの上昇および安定(同指標の基となるStreaming Songsチャートでは76→42→28→26位と推移)が、総合順位の安定(27→20→21→21位と推移)にリンクしていることが解ります。

星街すいせい「ビビデバ」はストリーミング指標が獲得ポイント全体の過半数に達し、今のロングヒット曲における指標構成を踏襲。データ提供元のサブスクサービスでは順位にばらつきがあるものの、好調な動画再生指標を踏まえればYouTubeのオーディオストリーミングがストリーミング指標に影響したともいえます。この「ビビデバ」のチャートアクションが、ニコニコ動画投稿作品おけるひとつの指針に成るかもしれません。

 

 

最後に。これはあくまで個人的な疑問なのですが、ニコニコ動画関連作品には生命/死にまつわる言葉を用いた歌詞、またそれをテーマにした作品が少なくない印象です。このテーマの曲が多く作られ、そして支持される理由が気になっています。