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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

(追記あり) ビルボードジャパン年間チャート発表、2023年度のチャートトピック10項目を挙げる

(※追記(6時49分):掲載当初、チャートトピックが11項目となっていたため訂正を実施しました。失礼いたしました。)

(※追記(8時00分):ビルボードジャパンがソングチャートにおけるTop Singles Salesチャート(フィジカルセールス指標の基となるチャート)の記事を訂正し、ポストを改めて投稿されています。それを踏まえ、貼付するポストを差し替えました。)

(※追記(12月9日6時43分):年間ソングチャート100位まで、およびフィジカルセールス、ダウンロードおよびストリーミング各指標の基となるチャートの順位をまとめた表について、フィジカル未リリースの曲の表記(グレー表示)が十分ではありませんでした。それを踏まえ表を再作成し、差し替えています。お詫び申し上げます。)

(※追記(12月15日7時09分):今回のエントリー公開の後、年間ソングチャート、年間アルバムチャートおよび年間トップアーティストチャートについて、詳細な分析を行いました。つきましては、このエントリーの巻末にてリンクを掲載しています。また12月11日には音楽インフルエンサーのRYOさんとコラボスペース(生配信)も実施しており、年間トップアーティストチャートのエントリーにアーカイブを貼付しています。)

(※追記(12月21日11時30分):ビルボードジャパン年間ソングチャート総合100位以内に入らなかった一方で3指標の基礎となるチャートでは50位以内に入った曲をまとめた表において、BUMP OF CHICKEN「SOUVENIR」およびBE:FIRST「Smile Again」が抜けておりましたので、表を再作成した上で差し替えました。心よりお詫び申し上げます。)

 

 

 

2023年度のビルボードジャパン年間チャートが本日発表されました。集計期間は2022年11月28日~2023年11月26日(2022年12月7日公開分~2023年11月29日公開分)となりま

す。

 

各チャートの詳細はこちらから確認できます。いつでもチェックできるよう、ビルボードジャパンのポストを貼付した形です。

 

 

・年間ソングチャートおよび各指標の基となるチャートの順位

 【ビルボード 2023年 年間総合ソング・チャート“JAPAN Hot100”】

 

・年間アニメーションソングチャート

 

・年間アルバムチャートおよび各指標

 

・年間トップアーティストチャート

 

・年間作詞家および作曲家チャート

 

・年間Heatseekers Songsチャート

 

・年間Top User Generated Songsチャート

 

・年間TikTok Songsチャート

 

・年間ニコニコ VOCALOID SONGSチャート

 

・首位獲得歌手のインタビュー

(なお、年間アルバムチャートを制したKing & Princeのコメント動画はありません。)

 

 

ではここから、ソングチャートを中心に年間チャートから見えてくる今年度のチャートトピックスを10項目挙げていきます。2022年度については下記リンク先をご参照ください。

 

年間ソングチャート100位まで、およびフィジカルセールス、ダウンロードおよびストリーミング各指標の基となるチャートの順位は下記表をご参照ください。フィジカルセールス、ダウンロードおよびストリーミングについて、総合100位以内ランクイン曲は100位まで、総合100位未満については50位までを掲載しています。

 

ソングチャート毎週の1~5位曲リストおよび各指標週間上位20曲(フィジカルセールスを除く)、TikTok Weekly Top 20、Top User Generated Songsチャートおよびニコニコ VOCALOID SONGS TOP20の週間上位20曲等を紹介した表については、以前のエントリーにてまとめています。なお、一部についてはこちらでも掲載します。

またトップアーティストチャート20位までの歌手における指標別順位はこちら。このブログエントリーで最初に紹介したポストからも辿ることができます。

 

紹介する曲やアルバムについては、2023年度最終週までの最長60週分におけるチャートアクションを示したCHART insightを貼付しています。CHART insightについては下記ポストをご参照ください。

 

 

今年度の10項目を取り上げる前に、まずは現在のソングチャートの傾向を紹介します。

ストリーミングが社会的ヒット曲において最重要となり、週間獲得ポイントの過半数を占めています。この指標が高位置で安定することによりロングヒットする作品が増えたことで、2023年度の年間ソングチャートにおいては2022年度以前のリリース曲が上位に進出することが多い状況です。言い換えれば、その状況下で2023年度に初登場した曲が年間ソングチャート100位以内に入ることが如何に凄いことか、よくわかるでしょう。

 

 

それでは、2023年度のトピック10項目を取り上げます。

 

 

ビルボードジャパン年間チャート発表、2023年度のチャートトピック

 

 

① YOASOBI「アイドル」、異次元の勢いでソングチャート首位獲得

YOASOBI「アイドル」が"異次元"のヒットと成ったことは間違いありません。

YOASOBI「アイドル」は4月19日公開分ソングチャートを初登場で制して以降、21週連続で首位を獲得。ビルボードジャパンで最長首位記録を更新したのみならず、4月26日公開分以降14週連続で週間獲得ポイントが1万5千を上回っています。手元のデータによると、YOASOBI「アイドル」の獲得ポイントは468,774。Official髭男dism「Subtitle」(2位 311,192ポイント)の1.5倍以上となり、他の作品を如何に圧倒したかがよく解ります。

上記CHART insightは2023年度最終週となる11月29日公開分を指しますが、チャート構成比をみると青で表示されるストリーミング指標がポイントの大半を占めていることが解ります。同指標の基となるサブスク等の再生回数は11月に5億回を突破。Official髭男dism「Subtitle」が48週で果たしたこのハードルをわずか30週で突破していることが、まさに「アイドル」の強さの表れです。最終的には5億2714万回再生を記録しました。

 

ビルボードジャパンのソングチャートは2010年代後半のストリーミング指標の影響力増大に伴い、ロングヒット曲、それも年間チャートの序盤からランクインする曲が上位を占める傾向にあります。

2017年度に年間ソングチャートを制した星野源「恋」は2016年10月、2018~2019年度の米津玄師「Lemon」は2018年2月、2020年度のYOASOBI「夜に駆ける」は2019年12月、2021年度の優里「ドライフラワー」は2020年10月、そして2022年度のAimer「残響散歌」は2021年12月リリースであり、集計期間前もしくは遅くとも第1四半期までにチャートで初登場を果たした曲がこれまで年間首位の座に就いています。

YOASOBI「アイドル」は2023年度開始から20週目、第2四半期に初登場。その点からもこの曲の勢いがよく解るはずです。

 

 

② 「アイドル」および「唱」からみえてくる"活用"の重要性

YOASOBI「アイドル」が2023年度半ばのビルボードジャパンソングチャートを席巻したのと同様に、第4四半期のチャートで存在感を示したのがAdo「唱」でした。第4四半期になって登場した「唱」が年間ソングチャート17位に至ったのは、何よりその爆発力に因るところが大きいのです。

Ado「唱」、そしてYOASOBI「アイドル」においてまず注目すべきはソングチャートにおけるカラオケ指標の急浮上。他指標に比べて上昇しにくいカラオケが比較的速く上昇することに加えて、TikTok Weekly Top 20では「アイドル」が4月26日公開分以降20週連続、「唱」が年度最終週まで11曲連続トップ10入り、またTop User Generated Songsチャートでは前者が33週、後者が10週続けて4位以内に入っています。

2曲共に2023年を代表する強力なトピック(「アイドル」はテレビアニメ『【推しの子】』オープニング主題歌、「唱」はユニバーサル・スタジオ・ジャパンハロウィーン・ホラー・ナイト』とのコラボレーション曲)に起用されたこともさることながら、曲調の多様な変化が曲の様々な部分の動画使用をもたらしたともいえるでしょう。このブログにて"活用"と形容した部分における強さが、大ヒットの理由と考えます。

 

 

TikTok、THE FIRST TAKE…動画でのバズがヒットを加速

ひとつ前の項目にて"活用"の重要性を記しました。活用は主に接触指標群に波及しますが、その中でも動画再生指標に強くリンクするという印象があり、そしてその指標が強いと感じる曲は、年間順位以上に広く社会に浸透しているのではないかと感じています。それを代表するのが、3年前にリリースされた新しい学校のリーダーズ「オトナブルー」(年間ソングチャート37位)、およびano「ちゅ、多様性。」(同75位)です。

TikTok Weekly Top 20では20位以内に「オトナブルー」が16週、「ちゅ、多様性。」が18週ランクイン。またTop User Generated Songsチャートにおいては20位以内に前者が18週登場しています(後者は1週)。そしてCHART insightにおいて、2曲ともストリーミング以上に動画再生指標の順位が高いのが特徴です。

通常は歌詞の言語が異なるバージョンを除きオリジナル版と合算されないというビルボードジャパンのチャートポリシー(集計方法)にあって、THE FIRST TAKEは合算対象となっています。

(おそらくはTHE FIRST TAKEの動画にて、(指標の加算対象となる)国際標準レコーディングコード(ISRC)がオリジナル版と統一されているのが原因と考えます。この矛盾は続いており、このブログでは以前よりビルボードジャパンに対し合算化を求めています。なおTHE FIRST TAKEが音源リリースされれば、THE FIRST TAKEの動画再生指標は音源化されたバージョンに紐付けされます。)

新しい学校のリーダーズ「オトナブルー」は今年公開されたTHE FIRST TAKEチャンネル発の動画の中でダントツの再生回数を誇り、ano「ちゅ、多様性。」も上位に。これら動画を経てより広く"見つかった"ことが総合のヒットにつながったと捉えています。

 

また、なとり「Overdose」は前年度の75位から9位に浮上しています。前年度にこの曲を紹介する際、TikTokをティザー(ティーザー)として活用したことがヒットにつながったと紹介しましたが、たとえば米でも今年12月2日付で首位を獲得したジャック・ハーロウ「Lovin On Me」がその施策を用いています。米ビルボードではTikTok関連チャートも今秋開始しており、世界中で(ショート)動画に基づくヒットは活性化するでしょう。

 

なおこのブログでは、これら動画再生指標で強い曲の認知度と週間/年間ソングチャートの乖離(動画でのヒット曲は週間/年間チャートでもう少し順位が高くてもいいのではないかという考え)を踏まえ、ビルボードジャパンに対し動画再生指標のウエイト上昇というチャートポリシー改善提案を記しています。

 

 

④ ソングチャートで際立つアニメタイアップの強さ

この項目は昨年度の年間チャート振り返りにおいて最初に取り上げたものですが、最早アニメタイアップ曲の大ヒット化は定番になったといえるかもしれません。その一方で、"すべてのアニメタイアップ曲がヒットするとは限らない"ということ、そして"サブスクにどんなに強い歌手でもアニメタイアップを含むすべての曲がヒットするとは限らない"ということは、きちんと認識する必要があるでしょう。

アニメソングが大ヒットに至るにはタイアップ作品との相性の良さ(世界観をきちんと踏襲していること)、そしてアニメがいわゆる"覇権"を握ることが重要だと感じています。これを最も示したのがテレビアニメ『【推しの子】』と、オープニング主題歌のYOASOBI「アイドル」という関係性でしょう。同曲については最初の項目で取り上げています。

他にも、いずれもテレビアニメですが『鬼滅の刃 刀鍛冶の里編』オープニングテーマのMAN WITH A MISSION × milet「絆ノ奇跡」が年間ソングチャート18位、『呪術廻戦 懐玉・玉折』オープニングテーマのキタニタツヤ「青のすみか」が同24位に。そして『呪術廻戦 渋谷事変』オープニングテーマのKing Gnu「SPECIALZ」は、配信開始から3ヶ月弱で年間ソングチャート41位を記録しています。

 

 

⑤ ベテランロックバンドがアニメソングで大ヒット

ひとつ前の項目に関連して、劇場公開されたアニメにおいても2023年度は覇権といえる作品が複数登場しています。

『THE FIRST SLAM DUNK』のエンディング主題歌である10-FEET「第ゼロ感」が年間ソングチャート5位、『名探偵コナン 黒鉄の魚影 (サブマリン)』主題歌のスピッツ「美しい鰭」が同10位にランクイン。興行収入は前者が157億円超え、また後者は9月初旬の段階で136億円を突破しシリーズ歴代最高を更新しています。

CDデビューは10-FEETが2001年、スピッツが1989年であり、共にロックジャンルで活躍を続けるベテランバンド。先日米ビルボードやグローバルの年間ソングチャート(前者はこちら、後者はこちら)について振り返りましたが、ロックジャンル、またベテラン歌手の曲が年間上位に進出することはあまりなく、その点においても日本音楽業界の面白さを感じます。

 

なおベテランという点においては、宇多田ヒカルさんによる1999年のシングル「First Love」がNetflixのドラマ『First Love 初恋』のインスパイア源となったことで再ブレイクとなり年間ソングチャート45位に登場。また2000年リリースのポルノグラフィティサウダージ」は年間ソングチャート99位にランクインを果たしていますが、THE FIRST TAKE等デジタル環境の強さがカラオケ指標とリンクしたといえるでしょう。

(ポルノグラフィティサウダージ」のCHART insightについては、2024年度初週にあたる12月6日公開分までの60週分を表示。)

 

Mrs. GREEN APPLEおよびVaundy、トップアーティストチャートでさらに躍進

前項でロック×バンドという組み合わせを紹介しましたが、日本では若手や中堅と呼べる歌手がソングチャートで存在感を示しています。Official髭男dismやKing Gnu、back numberがその代表格であり、いずれも昨年の『NHK紅白歌合戦』(以下"紅白"と表記)に出場。一方でこの層が厚かったこともあってか、Mrs. GREEN APPLEは「ダンスホール」がヒットしながら昨年紅白に出場していませんでした。

そのMrs. GREEN APPLEは「ダンスホール」のロングヒット以降、今夏リリースのアルバム『ANTENNA』に収録された曲を続々ヒットさせていきます。

アルバム『ANTENNA』は週間チャートを制することはできませんでしたがロングヒットを続け、さらには活動休止前となる2020年までにリリースされた作品群も浮上。「青と夏」は2023年になって週間最高位を更新しています。

ソングチャートとアルバムチャートを合算したトップアーティストチャートにおいて、Mrs. GREEN APPLEは今年初めて首位を獲得。このことは「青と夏」の最高位更新共々上記エントリーにて紹介していますが、『ANTENNA』のアルバムチャート登場3週目での歌手別チャート首位到達は、ヒットが如何に持続しているかを象徴しています。年間ソングチャートでは100位以内に10曲も入っており、今年の紅白出場は必然といえます。

Mrs. GREEN APPLEは2022年度のトップアーティストチャートで11位でしたが、2023年度は2位に躍進。今年を代表する歌手になったことは間違いありません。

 

2023年、大ブレイクを果たしたもう一組の歌手はVaundyさんで間違いないでしょう。YOASOBI、Mrs. GREEN APPLEOfficial髭男dismに続く4位に就いています。

2020年にリリースされた「怪獣の花唄」は少しずつチャートで存在感を発揮していましたが、昨年の紅白披露後に大ヒットのフェーズに突入。収録アルバム『strobo』もフックアップされ、トップアーティストチャートにおいてもさらなる上位安定に成功します。尤も歌手別チャートでは紅白以前から人気だったことが解るのですが、紅白を機により広く世間に認知された、いわば"見つかった"と言っていいでしょう。

 

 

K-POP第4世代女性ダンスボーカルグループにおける理想的な軌跡の確立

K-POPの活躍は2023年度も続いています。紅白への出場は自然なことであり、非難する方にはこちらこちらのエントリーをご覧いただきたいと思うのですが、とりわけ第4世代女性ダンスボーカルグループで成功を収めた歌手は新作がリリースの度にヒット、さらに旧作もフックアップされ、トップアーティストチャートにおいてはっきりステップアップしていること(CHART insight総合順位における階段型の上昇)が解ります。

NewJeansとLE SSERAFIMの歌手別のCHART insightからは、ストリーミング指標の高値安定も見て取れます。年間トップアーティストチャートではNewJeansが11位、LE SSERAFIMが18位にランクインしています。

この動向はK-POPの男性ダンスボーカルグループ(昨年度におけるBTSは除く)と異なるのですが、NewJeans等の動向をなぞっている男性歌手がBTSのメンバーであるジョングク。ラトーを迎えた「Seven」以降のトップアーティストチャートでの動向から、短期間でもステップアップを果たしていることが解るはずです。実際、年間トップアーティストチャートでは24位にランクインしています。

 

 

⑧ アイドル/ダンスボーカルグループにおける瞬発力と持続力の差の拡大

年間ソングチャートにおいては先述したBTSのジョングクによるソロ活動を除き、この1年の間にリリースされた男性アイドルやダンスボーカルグループによる作品は50位以内に入っていない状況。これはK-POPのみならず、J-POPにおいても同様です。

ソングチャートでは週間5位以内に入る曲が多いものの、フィジカルセールス初加算週に上位進出を果たしながら翌週急落する流れが目立っています。またLINE MUSIC再生キャンペーンの実施に伴いストリーミングが急伸することで上位進出を果たす曲が男女を問わずアイドルやダンスボーカルグループ等で少なくありませんが、ほとんどの曲はキャンペーン終了後に急降下する傾向にあります。

LINE MUSIC再生キャンペーンは接触指標の上昇を招くものの、コアファンの熱量を高める一方で歌手のファンというわけではないが曲が気になるというライト層にはリーチしにくく、所有指標的な動きをなぞります。所有指標の突出は素晴らしい一方で、瞬発力と持続力との乖離をどう小さくするかがこのジャンル全体における課題であり、真のヒット曲はライト層の支持による持続的人気であることを認識する必要があるでしょう。

 

そのアイドルやダンスボーカルグループにあって、特筆すべき動向を示したのがKing & Prince「ツキヨミ」。年間ソングチャート76位にランクインしたこの曲は、フィジカルセールス指標の基となるTop Singles Salesチャートで50位以内に入った曲の中で総合ソングチャート100位以内に唯一到達しています。

当時メンバーだった平野紫耀さんが主演したドラマ『クロサギ』(TBS)の主題歌、「ツキヨミ」はサブスクやダウンロードの未解禁が多い旧ジャニーズ事務所所属歌手にあって2023年度では唯一年間ソングチャート100位以内にランクインを果たしています。これは同曲で自身初のフィジカルミリオンセールスを達成したのみならず、下記記事にもあるように年度初週に週間10万枚を超える売上を記録したことも寄与した形です。

King & Princeは次作「Life goes on」(フィジカルでは「We are young」とダブルAサイド扱い)でもミリオンセールスを記録しますが、前年度に初ランクインを果たしていた(ゆえにフィジカルセールスの多くが前年度に加算される)「ツキヨミ」が2023年度年間ソングチャートで100位以内に入ったのは、動画再生指標の継続的なヒットが大きく影響したことは間違いありません。

接触指標である動画再生はロングヒットに欠かせない一方、ストリーミング指標と比例する傾向にあることは年間上位登場曲の動向から解ります。ゆえに「ツキヨミ」が、そしてKing & Princeの作品がサブスクを解禁していたならば、ストリーミング指標も継続的に獲得してロングヒットし、年間ソングチャートでも上位に進出したことは間違いないはずです。

 

上記エントリー等にてサブスク未解禁が勿体ないことだと指摘しているのですが、これは何もチャート上に限ったことではありません。たとえばいつ何時過去曲がフックアップされた場合でもデジタルを解禁していればより大きな人気を獲ることが可能であり、またテレビパフォーマンスや話題がフィジカルよりデジタルに即時に反映される(そしてそれにより利益を得られる)等を踏まえれば、解禁するに越したことはないのです。

ちなみに旧ジャニーズ事務所所属歌手についてはシングルの週間フィジカルセールスが20万を超える歌手の未解禁が続いていますが、わずかでも解禁への流れは生まれています。仮に事務所全体が解禁に舵を切れば、大ヒットのフェーズに突入する曲を毎年のように輩出する可能性はあり得ると考えます。

 

 

⑨ 所有指標のみになったアルバムチャートの、ソングチャートとの乖離

年間アルバムチャートトップ10作品の中に、年間ソングチャート100位以内エントリー曲が含まれることはほぼありません。他方年間ソングチャート上位曲を含むYOASOBI『THE BOOK 3』が年間アルバムチャート30位、Mrs. GREEN APPLE『ANTENNA』は同27位、スピッツ『ひみつスタジオ』は同41位となり、いずれも週間チャートを制していない点からも、アルバムチャートとソングチャートの乖離は大きいといえるでしょう。

 

アルバムチャートでは、CHART insightにてオレンジで示されるルックアップ指標が2022年度で廃止に。この指標はCDをパソコン等に取り込んだ際、インターネットデータベースのGracenoteにアクセスする数を指し、CDの売上枚数に対する実際の購入者数(ユニークユーザー数)やレンタル枚数の推測を可能とします。しかしGracenoteのサービス継続の課題やコアファンのチャート施策の影響度も考慮し、廃止に至っています。

ただ、ルックアップがレンタル動向も想起可能なものだった以上、この指標は接触という側面も果たしていたといえます。言い換えれば、2023年度以降のアルバムチャートは所有指標のみという形になりました。また、ダウンロード1DLのほうがフィジカルセールス1枚よりもウエイトが大きいものの売上数自体に大差が生じていることで、フィジカルセールスに強い作品が週間、そして年間でも上位に入る傾向が高まっています。

ゆえに、アルバムチャートはコアファンの多さや、そのコアファンによる熱量の高さ等が大きく反映されるものとなりました。無論その中には、仮にルックアップ指標があればさらに安定したチャートアクションになるだろう作品もあるものの、今回のアルバムとソングチャートにおけるヒットの乖離は今年度上半期に予想したことが当たっていたと言っていいでしょう。

アルバムチャートから真の社会的ヒット曲が読みにくいということについては、ストリーミング指標(動画再生を含む)を導入する米ビルボードとの違いからも見て取れるはずです。

 

ビルボードジャパンは今回の結果を踏まえ、米ビルボードのように接触指標をアルバムチャートに導入することをまずは議論することを願います。この点は以前も提案していますが(→こちら)、これは決してフィジカルセールスに強い作品を軽視するものではありません。下記ポストは、ソングチャートにおいても成立する考え方です。

最善はストリーミングで継続的にヒットさせ、フィジカルリリースがあるならば最良のタイミングで発売し瞬発力も高めるという、接触/所有双方の指標の強化だと考えます。

4番目の項目にて"サブスクにどんなに強い歌手でもアニメタイアップを含むすべての曲がヒットするとは限らない"と書きましたが、熱量の高いコアファンがストリーミングにてライト層にリーチさせる手段を構築することができたならば、アイドルやダンスボーカルグループが社会的ヒットを多く輩出できる、その最前線に躍り出るかもしれません。

 

 

⑩ ロングヒット曲の多さを踏まえた、リカレントルール適用議論の必要性

10項目紹介の直前に、"ソングチャートの前提"について取り上げました。

ストリーミングが社会的ヒット曲において最重要となり、週間獲得ポイントの過半数を占めています。この指標が高位置で安定することによりロングヒットする作品が増えたことで、2023年度の年間ソングチャートにおいては2022年度以前のリリース曲が上位に進出することが多い状況です。言い換えれば、その状況下で2023年度に初登場した曲が年間ソングチャート100位以内に入ることが如何に凄いことか、よくわかるでしょう。

2022年10月にリリースされ、短期間で前年度の年間トップ30入りを果たしたOfficial髭男dism「Subtitle」や米津玄師「KICK BACK」については今年度もヒットが継続。週間チャートでは最終週まで20位以内に入り続けた「Subtitle」が年間ソングチャート2位に、また「KICK BACK」は同4位にランクインを果たしました。

前年度からランクインした「Subtitle」や「KICK BACK」のCHART insightをみると、接触指標群は徐々にダウンしてもその減少幅は緩やかなことが解ります。特にストリーミングのウエイトが大きいソングチャートにおいて、ストリーミングを中心とした接触指標群の支持はロングヒットにつながり、年度を越えてヒットすることになります。

その状況下において2023年度以降週間100位以内に初登場した曲の年間ソングエントリーは難しく、2023年度においては100位以内への進出がおよそ3割にとどまっています。

 

この状況をどう捉えるかですが、まずはビルボードジャパンが今のソングチャートの特性をきちんと伝えることが必要でしょう。新陳代謝がないと言われかねない状況に対して、チャートポリシーを今の形にした理由や真の社会的ヒット曲とは何かをきちんと説明することが大事であり、その浸透の上で、"リカレントルール"を設けるか否かの議論を始めることが大事だと考えます。

リカレントルールとは、一定週数以上ランクインした曲が規定の順位を下回ればチャートから外れるという、米ビルボードソングチャートにて採り入れているもの。米では登場21週目以降に51位以下になった場合、また53週目以降に26位以下になった場合に適用され、チャートから外れた曲のみで構成されるチャートに移行します。

ビルボードジャパンにおいてもHeatseekers Songsチャートには違う形ながらリカレントルールが適用されていますが、仮にソングチャートにも用意されていれば状況は変わったでしょう。

ただ、リカレントルールには問題点があることも否めません。米ではストリーミングに強いアルバムが初登場した際に収録曲がソングチャートにも大挙エントリーし、それによって押し出された曲にリカレントルールが適用される傾向があります。しかし翌週、収録曲の大半が急落する傾向もまた高く、ゆえにリカレントルールの適用が正しかったのかと疑問に思うことは否めません。

 

仮にビルボードジャパンがソングチャートにリカレントルールを適用するならば、米ビルボードソングチャートの動向を参考にしつつ日本的な最善を探した上でルールを敷くことが必要と考えます。ただし日本は海外よりもストリーミングが初週から高くない、新曲がリリース直後から聴かれにくいという状況であり、何よりもまず日本全体の聴取環境改善が重要ではないかとも感じています。

 

 

以上10項目採り上げました。後半はビルボードジャパンへの提案が増えた形となりましたが、その点はご容赦ください。

 

 

最後に。ビルボードジャパンの年間チャートや記事、このブログの内容や各種データ、また音楽チャート分析者による様々な見方も踏まえ、ご覧いただいたみなさんが音楽チャートを分析したり楽しんでいただけるならば幸いです。また気付きが生まれたならば嬉しく思います。そしてより良い音楽チャートになるには、さらに日本の音楽業界がより好くなるにはを考え、それぞれが提案を発信することを願っています。

 

 

 

※追記(12月15日7時09分)

今回のエントリー公開の後、年間ソングチャート、年間アルバムチャートおよび年間トップアーティストチャートについて、詳細な分析を行いました。つきましては、このエントリーの巻末にてリンクを掲載しています。また12月11日には音楽インフルエンサーのRYOさんとコラボスペース(生配信)も実施しており、年間トップアーティストチャートのエントリーにアーカイブを貼付しています。