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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

(訂正あり)【ビルボードジャパン最新動向】YOASOBI「アイドル」11連覇、2022年度以降における週間最高ポイント更新の原動力とは

(※訂正(7時39分):ブログエントリーのタイトルに”2022年度以降における”を追加しました。)

 

 

 

最新6月28日公開分ビルボードジャパンソングチャート(集計期間:6月19-25日)ではYOASOBI「アイドル」が初登場から11週連続で首位を獲得しました。

YOASOBI「アイドル」の動向はこちら。構成6指標のうち4つを制したYOASOBI「アイドル」は同曲における週間最高となる24,359ポイントを獲得したのみならず、2022年度以降のビルボードジャパンソングチャートにおいて週間最高ポイントを更新しました。

これは当週初加算となったフィジカルセールスの存在が大きく、4枚目のフィジカルシングルにして初の初週5万枚超えを達成。これまでは「怪物」が27,275枚、「祝福」が24,926枚、「セブンティーン」が加算対象となった『はじめての - EP』が9,649枚であり、「アイドル」が大きく上回っています。下記CHART insightによると、フィジカルセールス指標(黄色で表示)がポイント全体のおよそ2割を占めています。

フィジカルシングル全体のリリースが減っている状況も踏まえるに、現在の複合指標から成る音楽チャートにおいてフィジカルセールスはデジタルの補完的役割、デジタル人気曲の底上げという位置付けと捉えていいでしょう。YOASOBIはオープニングテーマとなったテレビアニメ『【推しの子】』最終回前週にフィジカルをリリースしており、そのタイミングの巧さも最高ポイント更新に大きく寄与した形です。

 

フィジカルセールス初加算となった「アイドル」は、一方ではカラオケ以外の指標が微減となったことがソングチャートの記事で紹介されています。フィジカルリリースにより所有方法の選択肢が増えることで伸びる可能性も考えられたダウンロード指標の下落は意外でしたが、一方で注目したいのは微減したもののラジオの高値安定。この点は上半期のラジオ指標でヒットした曲と比較すると、よりはっきり解るはずです。

先日発表した「2023年上半期ラジオ・オンエア・チャート」にて1位となった10-FEET「第ゼロ感」が、今週も87位にチャートインした。配信限定シングルとして2022年11月9日にリリースされ、同週11月7日~11月13日チャートで21位に初登場して以来、今週で実に32週目の連続チャートインとなる。しかも常にTOP100圏内をキープしているのだ。

ラジオ指標は全国31のラジオ局におけるOAチャートに基づき、ビルボードジャパンが聴取可能人口等を加味して指標化したもの。その基となるプランテックのチャートでは今年度上半期において10-FEET「第ゼロ感」がトップに立ち、最新週においても100位以内にランクインしています。

CHART insightにおいてラジオは黄緑で表示。10-FEET「第ゼロ感」はこの指標において初登場以降20→13→30→14→6→3→21→2→5→10→14位と推移。その後なだらかにダウンしながらも安定した状態が続いていますが、一方でYOASOBI「アイドル」は22位に初登場して以降常時トップ10内をキープ。最高位こそ3位であり「第ゼロ感」を下回っていますが、ラジオ指標においては「第ゼロ感」クラスのヒットであることが解ります。

10-FEET「第ゼロ感」はアニメ映画『THE FIRST SLAM DUNK』のエンディング主題歌として大ヒットした一方、YOASOBI「アイドル」がオープニングテーマとなったテレビアニメ『【推しの子】』は昨日第1期の最終回を迎えており、「アイドル」はアニメの話題が落ち着くことでラジオ指標も漸減すると思われますが、他指標に比べて勢いが落ちやすいラジオでのロングヒットは、曲やタイアップ作品の訴求力を示すに十分です。

 

さて、YOASOBI「アイドル」は次週にもOfficial髭男dism「Subtitle」をポイントで上回り2023年度の年間ソングチャート制覇が現実味を帯びてきますが、「アイドル」のピークは未だ先になるのではないかと考えます。

次週はフィジカルセールス指標加算2週目につきポイント前週比が比較的大きくダウンするかもしれませんが、それを補完する動きが登場。昨日18時、ライブツアーでの「アイドル」パフォーマンス映像がYouTubeで公開。そして同時に、「アイドル」のアナログリリースもアナウンスされています。

前者は次週以降の動画再生指標に加わり、後者は5週後以降のフィジカルセールス指標に加算されます。『【推しの子】』OA直前であること、YOASOBI側がビルボードジャパンの成績をツイートする習慣(最新チャートについては下記ツイート参照)も考えれば、これらアナウンスはより広く届いていくことでしょう。そして次週はアニメ最終回効果もチャートに反映されるはずです。

 

ロングヒット曲のポイント下落幅が緩やかであることを踏まえれば、YOASOBI「アイドル」の総合ソングチャート首位獲得週数は過去最高を更新するのは間違いないでしょう。これまではOfficial髭男dism「Subtitle」の13週が過去最長であり、次いで星野源「恋」の11週となっています。

チャートポリシー(集計方法)の時代に応じた変更に伴いデジタルに強い曲が週間単位でも最上位に進出しやすい環境が整備されたことも、YOASOBI「アイドル」の長期首位獲得に寄与したことは間違いありません。それでも、仮に2023年度初週のルックアップおよびTwitter指標廃止という変更措置が採られなかったとしても、デジタルの大ヒットを踏まえれば「アイドル」の長期首位獲得は確実だったと捉えていいでしょう。

そしてYOASOBI側は「アイドル」のヒットをより長く、より強くすべく施策を続々と用意し、それも最善のタイミングを狙って投入しています。戦略の重要性は英語詞版「Idol」のリリースも相まって米ビルボードのグローバルチャートのうちGlobal Excl. U.S.(Global 200から米の分を除く)で初めて首位を獲得したことでも証明済(上記エントリー参照)。次に何を仕掛けてくるか、「アイドル」ファンを魅了し続けるか、注目です。