イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

【ビルボードジャパン最新動向】チャートと連動するテレビパフォーマンスの重要性を考える

最新12月6日公開分ビルボードジャパンソングチャート(集計期間:11月27日~12月3日)ではAdo「唱」が6週連続、通算10週目の首位を獲得しました。なお今回のチャートが2024年度初週となります。

Ado「唱」はポイント前週比が94.0%。これはこの4週においては最も高い、言い換えれば下落幅が最も小さい状況です。

ビルボードジャパンの記事にもあるように、Ado「唱」は当週、ストリーミングおよび動画再生が共におよそ7%減少した一方で、ダウンロードが6%以上上昇。これは集計期間中の12月2日、『ベストアーティスト2023』(日本テレビ)にて初のテレビパフォーマンスを行ったことが影響した形です。テレビでの話題は何よりもまずダウンロード指標に表れることについて、下記エントリー等にて以前からお伝えしています。

接触指標群はダウンロードほどテレビ効果は大きくないかもしれませんが、ストリーミングの下げ幅もまたこの1ヶ月では最も小さくなっています。次週12月13日公開分の集計期間においては『2023 FNS歌謡祭 第1夜』(フジテレビ 12月6日放送)でのパフォーマンスに伴うリアクションも反映されることから、ポイントの下げ幅は引き続き小さくなるかもしれません。

 

 

さて今回、tuki.「晩餐歌」が初のトップ10入りを果たしています。

tuki.「晩餐歌」はラジオで300位以内に入らず加点されなかった一方、カラオケではおよそ7%、ダウンロード、ストリーミングおよび動画再生指標では10%強、いずれも前週より伸びていることが記事から解ります。

接触指標群の安定に加えてカラオケの上昇も顕著なtuki.「晩餐歌」は9月29日にリリースされていますが、リリースに至るまでの経緯が興味深いのです。

昨年4月からTikTokでギターの弾き語り動画を投稿するようになった彼女は、今年7月に自身のオリジナル曲「晩餐歌」の制作過程を投稿し始め、「オリジナル曲の1番です」「オリジナルのCメロです」と新しい動画を公開するたびに、圧倒的な歌声とあまりに完成された歌詞とメロディが多くの人に注目された。

(中略)

9月13日、YouTubeに「晩餐歌」弾き語りバージョンの動画が公開されると、わずか数日で100万回再生を突破。

制作過程がTikTokおよびYouTubeショートにて投稿され、また弾き語りver.が音源リリースに先駆けて公開されたこともあってか、tuki.「晩餐歌」はリリース後初の1週間フル加算週に総合14位を記録。その後も安定した成績を収め、最終的にトップ10入りを果たした形です。TikTokでの先行公開とも形容可能な「晩餐歌」のヒットの図式は、最近では米ソングチャートを制したジャック・ハーロウ「Lovin On Me」にも通じます。

 

さて、トップ10ヒットとなったゆえ尚の事、先述したAdoさんのようにtuki.さんがいつテレビで、特に地上波にて「晩餐歌」を披露するかが気になるところです。15歳という年齢に伴い深夜帯の生放送には出演できませんが、それに加えて地上波では11月以降、音楽番組において1年を総括する長時間特番が主体となります。そうなるとこの時期にブレイクした歌手の登場は遅れることになりかねません。

この件は今年春以降にブレイクしたConton Candyやチョーキューメイについても同様です。上記エントリーにてテレビ出演の遅れを懸念していたのですが、実際にConton Candyがテレビで初めて「ファジーネーブル」を披露したのは先月のことでした(下記ポスト参照)。そしてチョーキューメイについては現時点で「貴方の恋人になりたい」がテレビでパフォーマンスされていない模様です。

 

先程のCHART insightからも解るように、tuki.「晩餐歌」はラジオ指標が直近2週続けて300位以内に達しておらず、ここからもネットと(オールド)メディアのヒットへの嗅覚の差がみえてくるかもしれません。特番主体という年末進行ゆえやむなしと言われればそれまでですが、ならば特番に因り放送が休止されることのない枠に音楽チャート番組等を用意し、そこで披露の場を設けることを業界全体が働きかけることは必須でしょう。

 

 

最後に。ビルボードジャパンに対し、合算ルールについて今一度提案します。

tuki.「晩餐歌」のCHART insightを再掲しますが、同曲では音源リリース前にあたる9月27日公開分にて既に動画再生指標(赤で表示)が初登場を果たしています。しかしこれは本来のビルボードジャパンのチャートポリシー(集計方法)とは異なるものです。

ビルボードジャパンは言語が異なる場合を除き合算対象外とするチャートポリシーを採っており、本来オリジナル版とバージョンの異なる弾き語り版が合算されるのは矛盾していると捉えられてもおかしくありません。

ビルボードジャパンは動画再生指標において、動画に付番されたISRC(国際標準レコーディングコード)をカウント対象としていますが、おそらくtuki.「晩餐歌」の弾き語り版にオリジナルバージョンのISRCが付番されているものと思われます。しかし動画再生指標では合算される/他指標では合算されないという矛盾が残り続けており、グローバルチャート等に沿わせる観点からもすべてのバージョンを合算すべきというのが私見です。

この合算についての提案も含め、先月のエントリー(上記参照)にてビルボードジャパンに対し記していますが、2024年度の初週となる今回、てチャートポリシー変更を行ったとのアナウンスはありませんでした。上記の内容が絶対的に正しいとは断言しかねるものの、しかしより良くなるとして提案しています。ビルボードジャパン側が議論することを願います。