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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

ジョナス・ブルーが「Don't Wake Me Up」でBE:FIRSTをフィーチャー…ここから洋楽ヒットの法則を考える

毎月リリースされる膨大な作品の中から私的トップ10ソングスと題したプレイリストを、翌月の早い段階で発表しています(6月分はこちら)。昨日リリースされた下記2曲はSpotifyのNew Music Fridayプレイリストに並んで登場しており、その心地良さに聴き惚れました。

アレックス・ラスティグ feat. kiki vivi lily「Runaway」はカナダと福岡、Tomggg feat. ヴィラ・タリサ「Turn The Lights On」は千葉とインドネシアという組み合わせ。コラボレーションにより、これまでの作品とは異なる化学反応が生まれることで聴き手を楽しませてくれます。邦楽メインで聴いていた方には、洋楽を知るきっかけになるはずです。

 

このようなコラボレーションから、新たなヒットが生まれるかもしれません。ロンドンで活動するジョナス・ブルー「Don't Wake Me Up」に、BE:FIRSTが新たに参加したバージョンが今週リリース。元はホワイ・ドント・ウィーを迎えたこの曲に、日本語をベースに新たな息吹が与えられています。

(上記は公式オーディオ。ホワイ・ドント・ウィー参加版のミュージックビデオはこちら。)

LINE MUSICではデイリーチャートでトップ10入り、また新曲が上位に進出しにくいSpotifyでは71→55→65位と推移しています。ビルボードジャパンのダウンロード指標速報値では首位を獲得しており(下記ツイート参照)、ジョナス・ブルー feat. BE:FIRST「Don't Wake Me Up」の7月20日公開分(7月25日付)ビルボードジャパンソングスチャートの動向が気になるところです。

「Don't Wake Me Up」のヒット如何では、日本における洋楽ヒットに新たなアプローチが根付くかもしれません。

 

 

ビルボードジャパンには、ソングスチャートからK-Popを除く洋楽のみを抽出したHot Overseasというチャートが存在します。

最新7月13日公開分(7月18日付)のHot Overseasチャート(→こちら)では、3週連続でチャーリー・プース feat. ジョングク(BTS)「Left And Right」が制しています(ジョングクはK-Popアクトですが、主演がチャーリー・プースであることからHot Overseasに含まれます。これはコールドプレイ & BTS「My Universe」のような双方主演でも同様です)。「Left And Right」は総合ソングスチャートでもトップ50入りを続けています。

この「Left And Right」のヒットについては7月6日公開分(7月11日付)ビルボードジャパンソングスチャートの結果を踏まえて、音楽ライターの栗本斉さんが分析されています。

チャートを見る限りでは、ラジオでのオンエア回数が1位ということもあり、プロモーションが熱いのがわかる。チャーリー・プースくらいのアーティストだと比較的ラジオ・プロモーションはしやすい方だろうが、それでもBTSのメンバーが絡んでいるとなると鬼に金棒。ここはチャンスとばかりオンエアを促進するのは当然の施策だ。

ビルボードジャパンソングスチャートのラジオ指標はプランテックによる31局のラジオOA回数を基に、ビルボードジャパンが聴取可能人口等を加味して独自に算出。7月6日公開分(7月11日付)ビルボードジャパンソングスチャートと同一の集計期間におけるプランテックのOA回数ランキングでは、「Left And Right」は3位となっています。

3位はチャーリー・プース「レフト・アンド・ライト(feat. Jung Kook of BTS)」が前週129位から大きく浮上した。米シンガーソングライターがBTSのJung Kookとコラボレーションした同新曲は、前週末6月24日のリリースと同時にラジオオンエアが開始されると、初めて一週間フルでの集計期間を迎えた今週、いっきにTOP3入りを果たした。また、FM全局でオンエアを獲得しつつ、洋楽ながらAM局でのオンエアが確認されるなど、全体でのオンエア獲得ステーション率も80.6%と高水準だ。コラボによる理想的な相乗効果がその注目度に表れている。

プランテックはOA回数ランキングの記事において、施策がみられるものは時にはっきり記すことがあります。またパワープレイ(ヘビーローテーション)も施策の一環であり、採用することで放送局に偏りが生じながらもOA回数が増幅され、ラジオ指標も制することが少なくありません。

チャーリー・プースは今年「Light Switch」がラジオヒットし、ジョングクが所属するBTSは活動がソロ主体となるとアナウンスされて間もないゆえ、「Left And Right」の注目度上昇は自然でありレコード会社の施策ではないというのが私見ですが、OA回数3位ながらラジオ指標1位という結果は人口の多い地域のラジオ局でより多くかかったことを示すため、レコード会社が都心部のラジオ局を重点的に回った可能性は否めません。

先述したチャーリー・プース「Light Switch」は、ビルボードジャパンがこの春からデータを提供したJ-WAVE TOKIO HOT 100チャートで上半期23位を獲得(<コラム>J-WAVE「SAISON CARD TOKIO HOT 100」×Billboard JAPAN「HOT100」 2つの上半期チャートが映し出すヒット感の違いとは? | Special | Billboard JAPAN参照)。ビルボードジャパンのCHART insightをみると、黄緑で示されるラジオ指標が突出する一方で他指標が振るわず、100位以内エントリーは2月2日公開分(2月7日付 84位)の1週のみとなっています。

 

「Light Switch」を含め、この1年の間にヒットした洋楽をみると、その動きは大きく異なります。大ヒット曲にははっきりとした傾向が見られるのです。

上記はこの1年間にビルボードジャパンソングスチャートでトップ50入りしたレディー・ガガ「Hold My Hand」、コールドプレイ & BTS「My Universe」そしてザ・キッド・ラロイ & ジャスティン・ビーバー「Stay」のCHART insight。いずれもラジオやダウンロード(紫で表示)といった指標が強いことは共通していますが、ロングヒットする曲ほどサブスク等に基づくストリーミング(青)や動画再生(赤)が強いことがよく解ります。接触指標の充実は邦楽でも重要ですが、洋楽においてもヒットの鍵となるのです。

 

さて、下記ツイート内のリンク先にて、ビルボードジャパンのチャートディレクターを務める礒崎誠二さんのコラムが掲載されています。

(MarkeZineに無料会員登録すれば閲覧することができです。)

MarkeZineのコラムを見るに、今回ジョナス・ブルーとコラボしたBE:FIRSTは少しずつストリーミング指標を伸ばしている印象があります。LINE MUSIC再生キャンペーンの実施もあり同サービスに強い傾向がありましたが、「Bye-Good-Bye」はSpotifyでも5月16日付以降50位以内にランクイン。Spotifyでは「Don't Wake Me Up」初登場時にBE:FIRSTの過去曲も伸び、サブスクに強い歌手と似た動きが生まれています。

一方でBE:FIRSTは、MarkeZineの言葉を借りればホームラン型からヒット量産型には移り切れていません。ただ、ホームラン型を構成する所有指標も重要な要素であり、加算初週の高インパクトで好位置に初登場することにより、歌手の認知度上昇につながります。BE:FIRSTのファンダムが「Don't Wake Me Up」を押し上げることで、世間にジョナス・ブルーの存在をより広く知ってもらうことができるのではないでしょうか。

後はこのリミックスがロングヒットに至るかが重要となってきます。ジョナス・ブルーはフジロックフェスティバルで来日を果たすため、そのタイミングでBE:FIRSTとのミュージックビデオ制作やライブ共演(後日YouTubeで公開すれば尚好いでしょう)が行われるならば、認知やチャートアクションの強化につながるでしょう。

 

 

さて、ジョナス・ブルーとBE:FIRSTによる「Don't Wake Me Up」、そのリミックスのアプローチそのものも面白いと感じています。この点は明日のブログエントリーで取り上げる予定です。