桑田佳祐さんが同級生の佐野元春さん、世良公則さん、Charさんそして野口五郎さんを迎えて制作したチャリティ企画の配信シングル、「時代遅れのRock'n'Roll Band」が6月1日公開分(6月6日付 集計間:5月23~29日)ビルボードジャパンソングスチャートで9位に初登場。下記ミュージックビデオは一昨日公開につき、ミュージックビデオの再生回数を伴わない状態でトップ10入りを果たしたことになります。
さて、「時代遅れのRock'n'Roll Band」についてはビルボードジャパンでチャート分析記事が登場しています。チャート分析はジャーナリストの栗本斉さんが定期的に行い、記事に”?!"と表記されているのが特徴です。
企画物がヒットするためには?! 桑田佳祐 feat. 佐野元春、世良公則、Char、野口五郎「時代遅れのRock'n'Roll Band」 https://t.co/CHtcBi6Z2K pic.twitter.com/7TDx0IisuT
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) 2022年6月6日
この曲のCHART insightについて私見を述べるならば、桑田佳祐さん特有のチャートアクションとなっているのではないでしょうか。CHART insightは下記リンク先から確認可能、過去のチャートも調べることができます。
「時代遅れのRock'n'Roll Band」におけるCHART insightをみてみましょう。
チャート構成比をみると、ポイントの9割以上をダウンロード(CHART insightでは紫で表示)とラジオ(黄緑)で占めています。次いで動画再生(赤)のポイントが少なくない状況です。
ソングスチャートを構成する8つの指標は300位以内に入ればポイントの加点対象となるのですが、ストリーミング(青)およびカラオケ(緑)は300位以内に達していません。なおフィジカル未リリースにつき、フィジカルセールス(黄)およびルックアップ(オレンジ)は加点対象外となります。
桑田佳祐さんは昨年、3曲の配信シングルをリリースしています。そのCHART insightを見てみると、似た傾向であることが解るはずです。
・SMILE〜晴れ渡る空のように〜 (2021年7月12日リリース)
(上記は2021年7月14日公開分からの30週分。)
・炎の聖歌隊 [Choir] (2021年8月11日リリース)
(上記は30週分。)
・Soulコブラツイスト~魂の悶絶 (2021年8月30日リリース)
(上記は30週分。)
3曲共ダウンロードおよびラジオ指標の高さが際立ち、今作と共通。また「SMILE〜晴れ渡る空のように〜」以外はTwitter(水色)が100位以内に入っています。この指標はコアファンの熱量の高さが大きく影響しがちなため、その中での100位以内到達は特筆すべきでしょう。Twitterについてはサザンオールスターズの公式アカウントでプロモーションされており、ユーザーの中にはタイムラインで見かけた方も少なくないはずです。
ラジオにおいては、放送局がサザンオールスターズ等ベテランを愛する傾向があります。昨年の3曲そして今作もこの指標で首位を獲得しており、指標の基となるOAデータを提供するプランテックの記事からは、調査対象局のすべてで「時代遅れのRock'n'Roll Band」がOAされたことが解ります。また昨年、ラジオ指標においてサザンオールスターズ「真夏の果実」がBTS「Butter」を上回ったことも特筆すべき事態です。
さて、冒頭で紹介した栗本斉さんによるビルボードジャパンのチャート分析記事では気になる文言があり、自分は違和感を抱いたことを率直にツイートで表明しました。
『チャート動向でユニークなのが、配信リリースであるのに対し、ダウンロードでは堂々たる1位を獲得しているにもかかわらず、ストリーミングでは圏外になっていること (中略) 配信リリースの場合、比較的両者は連動するパターンが多い』とありますが、ベテランほど両者は乖離しがちだと捉えています。 https://t.co/63OqhVjp7u
— Kei (@Kei_radio) 2022年6月6日
文字数の関係上一部省略しましたが、省略箇所には『このあたりは、ファン層がサブスクとは縁が薄いということだろうか。』と書かれています。
ともすれば栗本さんは、ロングヒット曲においてダウンロードとストリーミングは連動すると述べたかったのかもしれません。だとすればそれはあながち間違ってはいないと思うのですが、たとえばリリース初週について述べるならば両者は連動しないことのほうが圧倒的に多いというのが私見です。
上記は最新6月1日公開分(6月6日付)ビルボードジャパンソングスチャートにおけるダウンロード指標のトップ10。ストリーミングでもトップ10入りしているのはロングヒットやそれが見込める3曲のみとなっています。
またダウンロード指標初加算により初登場した6曲(総合100位未達のダウンロード指標7位および8位を含む)のうち日向坂46「僕なんか」以外はストリーミングが300位未満となり、同指標が加点されていない状況です。うち複数の歌手が(別名義を含め)2000年以前から音楽活動を行っており、ベテランの乖離はこの点からも当てはまると考えます。
6月1日公開分(6月6日付)ビルボードジャパンソングスチャート、総合トップ10を上記に。総合且つストリーミング指標が10位以内に入った曲のうち、ダウンロード指標もトップ10入りしているものは2曲にとどまります。ここからも乖離がみられると捉えていいでしょう。
そして現在ストリーミングが牽引しロングヒットする曲については、初登場時におけるダウンロードとストリーミングは乖離していたものが大半です。徐々にチャートを上昇したSEKAI NO OWARI「Habit」やTani Yuuki「W/X/Y」に限らず、Official髭男dism「ミックスナッツ」や米津玄師「M八七」でも同様です。なお「M八七」はフィジカルリリースされていますが、総合初登場時はフィジカル関連指標が未加算となっています。
(上記はリリックビデオ。)
海外のチャートではダウンロード同様、ストリーミングもロケットスタートを切る傾向にあり、日本は大きく異なります。サブスクで新曲をリリース週にチェックする習慣がまだまだではないか、そしてそもそも論としてサブスクの普及自体がまだまだではないかというのが厳しくも私見です。
それでもOfficial髭男dism「ミックスナッツ」や米津玄師「M八七」はストリーミング指標が上位に初登場を果たしましたが、たとえばLINE MUSIC再生キャンペーン(再生回数キャンペーン)を採用した曲ほどのロケットスタートではありません(ただし2曲とも金曜リリースであり、月曜集計開始のビルボードジャパンソングスチャートでは初登場時において不利になることを書き添えておきます。)
ゆえに、栗本斉さんの記事におけるダウンロードおよびストリーミング指標の『両者は連動するパターンが多い』という指摘は、ロングヒット曲のヒットの最中には当てはまることもあれど、そのような作品でも初登場時は乖離が大きいというのが結論です。またベテランほど乖離しがちな状況については、ベテランほど『ファン層がサブスクとは縁が薄い』(『』内はいずれもビルボードジャパンの記事より)ことの証明と考えます。
桑田佳祐 feat. 佐野元春、世良公則、Char、野口五郎「時代遅れのRock'n'Roll Band」については、桑田さん特有のチャートアクションとなったと捉えています。得意のラジオが今回も安定し、Twitterも伸び、ベテランゆえ所有指標のダウンロードも高かった一方、そのベテランであることがストリーミングの強くなさの一因になったと言えます。ラジオやTwitterに関しては、所属事務所のプロモーションの巧さも影響したでしょう。
ストリーミングが強くないとはいえ、それでも初登場で総合トップ10入りを果たすことは見事です。またミュージックビデオの再生回数が加算されていない状況で動画再生指標33位というのは、この曲の注目の何よりの証拠でしょう。下記動画が牽引しているならば、それだけこの曲に注目が集まっていたことを示していると考えます。
本日更新されるビルボードジャパンソングスチャートの動向に注目しましょう。