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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

フォーエイト48「ロミエット」、フィジカルセールス2位ながらルックアップ300位未満…この理由を考える

最新7月13日公開分(7月18日付)ビルボードジャパンソングスチャートはOfficial髭男dism「ミックスナッツ」が2週連続、通算3週目の首位を獲得しました。2位はSEKAI NO OWARI「Habit」がこちらも2週連続で入りましたが、ポイント差は166→825と拡大しています。

次週は『FNS歌謡祭』(フジテレビ 7月13日放送)および『音楽の日』(TBS 7月16日放送)というふたつの音楽特番の影響が反映。Official髭男dismは出演をキャンセルせざるを得なくなった一方、SEKAI NO OWARIは双方に出演することから、「ミックスナッツ」に「Habit」が迫ることでしょう。尤も次週はSnow Man「オレンジkiss」がフィジカルセールスを武器に総合首位を確実としていますが、ロングヒットに至るかが注目点です。

 

さて今回はトップ20に新顔が続々登場していますが、気になる動きを示す作品が。それがフォーエイト48「ロミエット」(総合9位)です。

TikTokYouTubeで活動する7人組ユニットのメジャーデビュー曲はDECO*27さんが提供。CDは5種リリース、うち2種は収録内容の異なる映像盤が同梱し、1種はグッズ付き、その他2種もジャケットが異なりますが、CDの収録内容はいずれも同じとなっています(DISCOGRAPHY - フォーエイト48 - UNIVERSAL MUSIC JAPAN参照)。

7月7日木曜にリリースされ36,153枚を記録、フィジカルセールス指標で2位を獲得した「ロミエット」ですが、一方でルックアップは300位以内に入っていません。

(上記は「ロミエット」のCHART insight。こちらから確認できます。フィジカルセールスは黄色、ルックアップはオレンジで表示。チャート構成比にルックアップが含まれていないことが解ります。)

ルックアップとはCDをパソコン等インターネット接続機器に取り込んだ際、インターネットデータベースのGracenoteにアクセスする数を指します。売上枚数に対する実際の購入者数(ユニークユーザー数)、およびレンタル枚数の推測を可能とする指標です。

フォーエイト48「ロミエット」は7月9日にレンタルが解禁されています(TSUTAYAホームページにて確認可能→こちら)。ルックアップの高くなさからは店舗レンタル在庫が用意されていない可能性も考えられますが、しかし3万枚を大きく超える売上を獲得した作品がルックアップ300位未満というのは驚かされます。

 

仮にルックアップのエラーがあったならばビルボードジャパンは早期の訂正が必要ですが、おそらくこの指標の未加算は間違いないだろうと考えます。フォーエイト48「ロミエット」ではCD予約における二度のチャレンジ企画が実施され、ひとり複数応募可能なキャンペーンの存在がフィジカルセールスとルックアップの乖離の一因と言えるかもしれません。

企画による売上上昇の例として、AKB48を真っ先に挙げる方は少なくないかもしれません。実際、AKB48については長らく初週ミリオンセールスが続いていましたが、フィジカルセールスとルックアップの2指標共に首位になったシングルは「シュートサイン」(2017)が最後となっています。

 

フィジカルセールス、つまり所有指標の偏りはストリーミング指標からも示すことが可能です。本来サブスク再生回数等に基づくこの指標は所有ではなく接触を示すのですが、LINE MUSIC再生キャンペーン(再生回数キャンペーン)対象曲はコアファンのリピート再生に大きく支えられて上昇するため、ストリーミングが所有指標的な意味を持ちます。

ビルボードジャパンソングスチャートにおける「ロミエット」のストリーミング指標は100位未満(300位圏内)→38位→69位と推移していますが、同じ接触指標である動画再生指標は最新週にはじめて100位未満(300位圏内)に登場。ストリーミングに対する動画再生指標の低さからも、偏りのある触れ方になっていることが解ります。そしてキャンペーン終了後のストリーミング指標急落もまた、想像に難くありません。

 

 

総合トップ10入りは素晴らしいことです。一方でフィジカルセールス初加算週時の初速ばかりが強く、長期ヒットに至るとは考えにくいというのが厳しくも私見です。

SNS発の歌手は所有指標に長け、ストリーミングもキャンペーン開催ならば高くなる傾向が見えてきました。コアファンの熱量は十分みられる一方、ライト層との乖離が開きがちなことが気になります。この傾向はSNS発の歌手のみならずアイドル等にも共通の課題であり、キャンペーンを行わずともライト層を獲得できるかが中長期的な活動のための鍵と言えるでしょう。