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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

【ビルボードジャパン最新動向】BTS「Butter」、ラジオ指標のみリミックスを合算? チャートポリシー変更の議論を求める

毎週木曜は、最新のビルボードジャパンソングスチャートから注目点を紹介します。

12月6~12日を集計期間とする12月15日公開(12月20日付)ビルボードジャパンソングスチャート(Hot 100)。Aimer「残響散歌」が初登場で首位を獲得しました。

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テレビアニメ『「鬼滅の刃遊郭編』(フジテレビ)の初回放送直後となる12月6日、翌年リリースされるフィジカルに先駆けてダウンロードおよびストリーミングが解禁されたAimer「残響散歌」は、ダウンロードが8万7千を突破。8万を超える週間ダウンロード数は昨年6月9日公開分(6月14日付)における米津玄師「Pale Blue」以来であり、またストリーミングは1千万回再生を突破。如何に巨大なヒットかがよく解ります。

加えて上記ミュージックビデオは12月13日月曜0時に解禁。次週12月22日公開分(12月27日付)において動画再生指標が1週間分フル加算されるため、ダウンロードが減少しても動画再生で補填できるものと考えます。

 

 

さて今週は気になることが。

3位はBTS「Butter」が前週28位から再浮上した。【2021 ピープルズ・チョイス・アワード】での3冠ほか、海外の各メディアで“今年の曲”にピックアップされるなどの話題性とともに、新たにリリースされた“Holiday Remix”バージョンがオンエアを集めたかっこうだ。FM、AMともに全国範囲でオンエアされ、今週最も多くのステーションでオンエアを獲得している。6月14日〜6/20チャート以来、およそ半年ぶりのTOP3返り咲きとなった。

(※太字箇所は引用元では強調されておらず、こちらで処理したものです。)

BTS「Butter」のクリスマス仕様となる"Holiday Remix"は12月3日にリリースされています。

リミックス版はオリジナルバージョンとは合算されず、別扱いとなります。この合算可否は3年前に問い合わせて判ったものであり、以降この点に関するチャートポリシーの変更はみられません。最新12月15日公開(12月20日付)ビルボードジャパンソングスチャートのダウンロード指標では「Butter」のオリジナルバージョンおよび"Holiday Remix"がそれぞれエントリーし、別扱いだと判明します(同日付チャートはこちら)。

一方で、プランテックのラジオOAチャート記事からはBTS「Butter」のオリジナルバージョンに"Holiday Remix"が合算されたと想起可能。プランテックのデータはビルボードジャパンソングスチャートにおけるラジオ指標の元となり、ビルボードジャパンは各放送局の聴取可能人口等を加味して指標化するのですが、「Butter」においてはダウンロードでは別扱いだったものがラジオでは合算という矛盾が発生することになるのです。

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BTS「Butter」の最新12月15日公開分(12月20日付)におけるCHART insightを上記に。ラジオ指標はこの1ヶ月で100位未満(300位圏内)→18位→19位→2位と推移しています。この1ヶ月は世界の音楽賞の受賞やノミネート、米ビルボードによる各種年間チャートへのランクインで話題となったことで同指標20位以内に入ったと想起可能ですが、最新週における急伸はリミックスに因ると考えることは自然でしょう。

 

だとすれば、ラジオ指標のデータ提供元となるプランテックが問題かもしれませんが、プランテックとビルボードジャパンではチャートポリシーが異なるはずであり、提供された情報を自身のチャートポリシーに照らし合わせずそのままにしていると言えるビルボードジャパンが問題ではないかと考えます。実際、プランテックの合算問題は今に始まったことではありません。

ラジオ指標における合算問題は今年2月以降連続で発生しており、その都度ここで紹介しているのですが、プランテックの記事において合算を想起させたことは今回はじめてかもしれません。

さらに、総合では合算しないが構成指標では合算するという例は動画再生指標でも。この指標におけるTHE FIRST TAKE等のオリジナルバージョンへの合算については上記ブログエントリーで触れており、その際に改善案も記しています。合算すべきだという考えは当時も、そして今も変わりません。

 

合算しないことがデフォルトであるならば構成指標によって合算する/しないの曖昧な状況を合理的に説明する必要があると考えますが、それはおそらくできないのではないでしょうか。また米ビルボードやグローバルチャートでは合算されており、世界的な流れにも合いません。合算に慎重な見方もありますが、既に一部でも合算が行われているわけですからそれを踏まえるべきでしょう。そのほうが計算上楽だとも言えるのです。

 

実際、この合算する/しないの曖昧さが影響を及ぼしたと言える曲が登場しています。

(上記動画は「猫 〜THE FIRST TAKE ver.〜」。)

今年初の『NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか)に出場を果たすDISH//。彼らの大ブレイクのきっかけとなった「猫」は12月10日に発表されたビルボードジャパンによる2021年度年間ソングスチャートにおいてオリジナルバージョンが14位、THE FIRST TAKE ver.が35位にランクイン(年間ソングスチャートはこちら)。仮に合算すれば年間トップ10入りも十分有り得たのです。

尤もこの曲においては、他の曲でTHE FIRST TAKEバージョンが動画再生指標で合算されながら分けられていたという状況ではありますが、他方オリジナルバージョンには音源の異なるライブバージョンの動画が加算されています(これらについては【ビルボードコラム】ソングスチャート構成指標のひとつ、動画再生指標の3つの特徴と3つの改善案(9月13日付)にて、CHART insightを用いて詳しく紹介しています)。

こういう複雑な状況を回避、解決するためにも合算処理は必要だというのが私見。年間トップ10入りするか否かでそのインパクトは大きく異なるのです。ビルボードジャパンには合算について議論のテーブルを用意することを強く願います。