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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

TikTokやストリーミングからみえてくる次のヒット曲候補…リゾ「About Damn Time」の動向

今の日本、そして世界の音楽ヒットにおける大きな要となるのがサブスクやYouTubeであり、さらにその影響源にTikTokが存在します。これらの動向を押さえることで、歌手側は総合でのヒットを手に入れることができると言えるのです。

今回は次に期待される世界的ヒット曲として、リゾ「About Damn Time」を紹介します。

4月14日にリリースされた「About Damn Time」は、7月リリース予定のアルバム『Special』からのリード曲。リリースの2日後に放送された『サタデー・ナイト・ライブ』(NBC)では同曲をパフォーマンスしています。

「About Damn Time」は4月15日金曜からを集計期間とする4月30日付米ビルボードソングスチャートでは50位に初登場し、最新5月7日付(→こちら)では60位にダウン。初登場の翌週にダウンするのは、構成3指標のうちデジタル2指標(ストリーミングおよびダウンロード)が登場2週目にダウンし、一方で2週目以降徐々に上昇するラジオ指標がデジタルの減少を補完しきれないというチャートの特徴を示しているゆえと思われます。

しかしリゾ「About Damn Time」はここにきて上昇の気配をみせています。

@musicontiktok You don’t need Givenchy, you need @missionaryjack’s “First Class” on repeat 🔂 Jack Harlow retakes the top spot for this week’s #TopTracks ♬ original sound - TikTokMusic

TikTokアメリカにおける人気曲を示すTikTok US Top Tracksでは、最新4月25日週においてリゾ「About Damn Time」が6位に。同チャート首位となったジャック・ハーロウ「First Class」は4月22~28日を集計期間とする最新5月7日付米ビルボードソングスチャートで2位、2週前には首位に初登場しており、3週連続でストリーミング指標(米の場合は動画再生を含む)を制しています。TikTok接触指標との関連性がここから解ります。

TikTokの人気曲が必ずしもサブスク等に接触先を移行するとは限らない中、「About Damn Time」は拡がりをみせています。

海外では金曜がアルバムの標準リリース日。4月29日金曜にリリースされたフューチャーのアルバム『I Never Liked You』収録の16曲がサブスクサービスに大挙エントリーし、米におけるリリース日のSpotifyデイリーチャート(→こちら)では16曲が22位までに登場。この大量エントリーに押し出された曲が多い一方で、リゾ「About Damn Time」は前日から17ランクアップし35位につけていました。

その後「About Damn Time」は17位→7位(5月1日付は上記ツイートで紹介)と推移し、最新5月2日付でも7位をキープ。最新日では順位こそキープの状態ですが、再生回数は前日から2割以上の大きな伸びを示しています(下記ツイート参照)。

米における5月2日付Spotifyデイリーチャートでリゾ「About Damn Time」よりランクの高い6曲はフューチャーの3曲、ハリー・スタイルズ「As It Was」、ジャック・ハーロウ「First Class」およびグラス・アニマルズ「Heat Waves」。フューチャー以外の3曲は最新5月7日付米ビルボードソングスチャート(昨日のブログエントリーで解説)のトップ3に該当するため、リゾ「About Damn Time」の上位進出が予想できると言えるのです。

 

この「About Damn Time」についても様々な話題が生まれ、またリゾはその話題を味方にしています。

@lizzo

…tag me in ur Would You Rather videos… 👀

♬ ABOUT DAMN TIME PRESAVE DROPS 4.14 - lizzo

リゾは公式TikTokチャンネルにて、リリースの1週間以上前から「About Damn Time」を用いた動画を投稿。使用曲表示欄にはリリース日等が掲載されています。TikTokでのプレビュー(ティーザー(ティザー))については昨年秋のブログエントリーで紹介していますが(TikTokにおけるリリース前のチラ見せ公開、プロモーションの主流となるか(2021年9月22日付)参照)、今や定番化していますね。

@lizzo

Y’all ready for met gala tea?

♬ About Damn Time - Lizzo

リゾは「About Damn Time」リリース後も同曲を用いた動画を投稿。下記動画はメットガラにて収録されています。

メットガラでのリゾ登場記事をアップしたフロントロウが、記事内で必需品と紹介したのがフルート。ミュージックビデオでも披露している彼女の得意楽器は先述した『サタデー・ナイト・ライブ』でも用いられていますが、ここでシック「Good Times」(1979)の一節を吹いているというのは面白いところ。往年のディスコティークとの関連性を示し、老若男女にさらにリーチすると言えるでしょう。

またリゾは、先に紹介したSpotifyTikTokでの盛り上がりについても積極的にツイート。彼女が引用したツイートにおけるサブスク等の順位紹介アカウントは公式のものではないのですが、重要なのはリゾがチャートの好成績を紹介することでコアファンとの連帯を強めること、そして同時に客観的データを用いることによって曲の好リアクションをライト層にも訴求できるという点にあります。

これらリアクションを踏まえた接触や所有行動は、5月5日木曜までを集計期間とする5月14日付米ビルボードソングスチャート等に反映。また『サタデー・ナイト・ライブ』の映像はリゾの公式YouTubeアカウントにて5月1日にアップされており、アップ直後の再生回数も反映されます。

メットガラの登場も相俟って、リゾに関するすべての動きが次週の米ビルボードソングスチャートに集約されるかのような状況であり、そしてツイート等を踏まえればそこにリゾ自身が巧く絡んでいるという印象があります。ティーザー(ティザー)公開を含む歌手側の訴求は、日本人歌手においても見本となるのではないでしょうか。「About Damn Time」の次週のチャートアクションに注目しましょう。