イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

SixTONESのラジオ特番発表から感じる、ジャニーズ事務所所属歌手のシングルCD販売戦略の現状

昨日noteにて、BTSを取り上げました。

海外のiTunes Storeでも日本オリジナル曲は好調ですが、K-Popアクトは韓国語曲に比べて日本オリジナル曲ではJ-Popライクなメロディや尺の長さの点に特徴があり、日本オリジナル曲への海外の反応が気になるところです。

 

海外といえば、今週シングルCDをリリースした山下智久さん。配信ドラマ『THE HEAD』のエンディングに起用された「Nights Cold」は世界で配信された模様で、海外在住の方が所有もしくは接触できた旨をTwitter等に投稿しています。しかし日本ではiTunes Storeでダウンロードしたり、Spotifyで触れることはできません。

今週公開されたリリックビデオは短尺版。『日本語のオリジナルのほか、中国語(繁体字簡体字)、インドネシア語タイ語、韓国語、スペイン語、英語の6言語バージョンが制作され、それぞれを母国語とする国限定で公開』(音楽ナタリーより)とのことなので、諸外国ではフルバージョンで公開されているかもしれません。リリックビデオは先日リリースされた嵐「Face Down : Reborn」(→YouTube)でも登場しましたがこちらはフルバージョンでした。

一方で。

この『レコチョクではフルでダウンロードが可能』という状況、前作「CHANGE」でも同様でした。

今作「Nights Cold」は仮にダウンロードが躍進しても、次週のビルボードジャパンソングスチャートにおいてYOASOBI「夜に駆ける」や瑛人「香水」等のポイントを上回るかは微妙と言えそうです。これが仮に、ダウンロードがiTunes Store等でも可能だったならば状況は変わったかもしれません。それでも実施に至らずデジタル環境がさほど変わらない状況(リリックビデオが公開されたものの短尺であることも含む)は、個人的には至極勿体ないと感じています。

 

さて昨日飛び込んできた下記のニュースに、山下智久さんの件も、ここ最近自分が疑問を抱いていた件も解明できたように思う自分がいます。そのニュースとは、SixTONESスペシャル番組がJ-WAVEでOAされること。

OA日は祝日である23日木曜。前日にはセカンドシングル「NAVIGATOR」がリリースされ、新曲のタイトルが番組名(『J-WAVE SPECIAL MUSIC NAVIGATOR』)にも含まれています。J-WAVEではDJをナビゲーターと呼んでいるのですが、この特番タイトルはJ-WAVEナビゲーター集合番組と誤解されてもおかしくないと思うのは自分だけでしょうか。

この特番の存在を知り、自分の中で疑問が晴れたと感じています。ひとつは6月以降のジャニーズ事務所所属歌手のビルボードジャパンソングスチャートにおける、ラジオエアプレイ指標の好調さ。シングルCDセールス加算初週におけるラジオエアプレイ指標の順位はKing & Prince「Mazy Night」が19位、KinKi Kids「KANZAI BOYA」が22位、ジャニーズWEST「証拠」が21位、Hey! Say! JUMP「Last Mermaid...」は19位。Hey! Say! JUMP以外は前作もラジオエアプレイは好調でしたが、一方で関ジャニ∞「友よ」が37位、Kis-My-Ft2「Edge of Days」が83位、Sexy Zone麒麟の子」が85位等、昨年終盤にリリースした作品はラジオエアプレイが好調とは言えず、今年に入ってこのラジオエアプレイが好調に推移し出したと捉えています。これらは下記CHART insightで確認可能です。

ビルボードジャパンソングスチャートのラジオエアプレイ指標は32の放送局からOA数を割り出します。そもそも日本のラジオ局自体が少ないこともありますが、米ビルボードソングスチャートがおよそ1000局を調査するのとは対照的です。局数が多くないと、レコード会社等がラジオ局に対しプロモートしやすくなり、その成果が反映されやすいように思うのです。プロモートについてはサカナクション山口一郎さんのラジオ番組『サカナLOCKS!』の文字起こしをご参照ください。

尤も、プロモートされた曲がOAに至るかは各番組のスタッフの判断次第ですが、局としてヘビーローテションを用意するところもあります。ヘビーローテションを多く輩出するオフィスオーガスタ等の芸能事務所(音楽制作プロダクション)はラジオへのプロモートが強いと感じているのですが、ジャニーズ事務所は今年に入りそのプロモートに力を入れはじめたのではないかと思うのです。それが今回の20位前後というコンスタントなラジオエアプレイの成績につながっているのではないか、そしてプロモートの成果がJ-WAVEでのSixTONESの特番OAにつながったものと考えます。

 

現在では短尺ながらミュージックビデオも解禁されつつあり、また嵐やENDRECHERIはほとんどの曲をiTunes Store等ダウンロードサービスやSpotify等サブスクサービスにて配信していますが、ジャニーズ事務所所属歌手は未だにその多くがデジタルに明るくありません。ゆえに彼らがビルボードジャパンソングスチャートにて稼げる指標はシングルCDセールスやルックアップ、Twitterそしてラジオエアプレイの4指標。ラジオエアプレイの強化(の可能性)はすなわち、既に稼ぐことのできる部分で如何にポイントを増幅できるかという考えに基づくものであり、他方でダウンロードやサブスクさらにフルバージョンでのミュージックビデオ解禁といったこれまで行ってこなかったに着手するという姿勢は残念ながら見えにくいと感じています。この姿勢が、山下智久「Nights Cold」の日本でのデジタル施策の不十分さにも表れたのではないでしょうか。

 

 

ジャニーズ事務所所属歌手がデジタルを解禁することで生まれるのはメリットばかりではないでしょうか。CDが売れなくなる懸念を抱いているのかもしれませんがコアなファンはきちんと購入するはずです。さらにCD表題曲が事前に解禁されればそちらも買うでしょう。その上でサブスクやミュージックビデオフルバージョンでの解禁はライト層の取り込みにもつながり、ライト層からコアなファンに昇華する方も出てくるものと考えます。これらのメリットの可能性は以前から記載していることで、日本のエンタテインメントを世界に轟かすためにも解禁を前向きに検討してほしいと切に願います。