イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

最新ソングスチャートで「あいのちから」「Teenage Solution」が「残響散歌」に及ばなかった理由を考える

昨日お伝えしたように、12月15日公開(12月20日付)ビルボードジャパンソングスチャートにおいてAimer「残響散歌」が初登場で首位を獲得しています。

昨日のブログエントリーでは合算する/しないの問題をメインに記載しましたが、今回は首位から3位までの動向をメインに紹介します。

 

最新12月15日公開(12月20日付)ビルボードジャパンソングスチャートでは1位、3位そして4位が初登場。2位のSEVENTEEN「あいのちから」は前週初登場し、今回53ランク上昇しています。

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しかしながらポイントは大きく異なります。そしてこのポイント差には構成指標の動向が大きく影響しています。

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テレビアニメ『「鬼滅の刃遊郭編』(フジテレビ)のオープニングテーマに起用され、総合首位を獲得したAimer「残響散歌」はダウンロードおよびストリーミング指標も制覇。ダウンロードは米津玄師「Pale Blue」以来半年ぶりに週間8万ダウンロードを突破し、ストリーミングはLINE MUSIC再生キャンペーン(再生回数キャンペーン)未実施ながら1千万回再生を突破しています。

ストリーミングにおいて、キャンペーンがない状況下で1千万回を超えたのは見事です。所有指標となるダウンロードは次週ダウンが見込まれるものの、その分を13日に解禁したミュージックビデオの再生回数が補填することでしょう。

 

このAimer「残響散歌」に首位の座を阻まれたのがSEVENTEEN「あいのちから」。初週フィジカルセールスは246904枚で、前作「ひとりじゃない」の372913枚(4月28日公開分(5月3日付))からは大きく落ち込んだものの、同指標を制しています。

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上記は2021年度第4四半期初週にあたる9月8日公開分(9月13日付)で首位を獲得したSKE48「あの頃の君を見つけた」の、同週におけるCHART insight。この曲は「あいのちから」とほぼ同じフィジカルセールス(234600枚)を記録していますが、8649ポイントのうちフィジカルセールス指標の獲得分はおよそ8200ポイントとなっています。

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一方で、SEVENTEEN「あいのちから」におけるフィジカルセールス指標の獲得ポイントはおよそ7300。これは2022年度初週にあたる前週にフィジカルセールス指標のウエイトが減少したことが影響しています(厳密に言えばフィジカルセールスの係数処理適用枚数が引き下げられた模様)。とはいえ、仮にフィジカルセールス指標のウエイト減少がなかったとしても、SEVENTEEN「あいのちから」の首位獲得は難しかったとみられます。

ひとつはコアなファンとライト層の乖離が発生していること。フィジカルセールス指標が1位の一方で、ルックアップは14位と大差が生じています。ルックアップはパソコン等にCDをインポートする際にインターネットデータベースのGracenoteにアクセスされる数を示し、CDレンタル数やフィジカルセールスに対する実際の購入者数(ユニークユーザー数)の推測を可能とします。この順位の乖離について、ルックアップが低ければ低いほどコアなファン主体と捉えることが可能です。

また現段階で「あいのちから」はレンタル解禁日が未定となっていますが、これは以前から続くレンタル後日解禁策に因るものと言えます(上記ブログエントリーにて、前作「ひとりじゃない」の動向を紹介しています)。歌手としての認知度が高まってきている中にあって、レンタル需要を掘り起こすことができないのは勿体ないのではないかというのが私見です。

さらに、SEVENTEEN「あいのちから」においては最新12月15日公開分(12月20日付)の集計期間終了日までの2週間、LINE MUSIC再生キャンペーンが実施されていましたが、同曲のストリーミング指標は49→70位とダウンしています。

デジタル先行で解禁した曲もフィジカルリリース週にはストリーミングが上昇する傾向にありますが、それがみられないのはコアなファン主体の聴かれ方と言えます(ダウンロード指標の37位→100位未満(300位圏内)という推移も、コアなファン以外のチェックが乏しいことの表れと言えます)。またストリーミング指標がキャンペーン中にも関わらず伸びないのは、そのコアなファンの疲弊を生んだ可能性があるのではないでしょうか。

 

 

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一方で、モーニング娘。'21「Teenage Solution」は15万を超えるフィジカルセールスを武器に3位に登場しています。レンタルはアルバム同様17日後の設定につきレンタルに伴うルックアップは加算されませんが、同指標は4位と好調。フィジカルは8種リリースながらCDの収録内容は2種類であり、取り込み数が少なくないことがうかがえます。またダウンロード指標においてはダブルAサイドのカップリング曲共々好調です。

12月8日に発売されたモーニング娘。'21の「Teenage Solution」は、7,032DLを売り上げて、9位デビューを果たした。佐藤優樹の卒業シングルとなっており、カップリング曲の「ビートの惑星」は15位、「よしよししてほしいの」は17位にチャートインした。

一方で動画再生指標は盛り上がりを欠いています。11月10日公開分(11月15日付)で43位に登場した同指標は、最新12月15日公開分(12月20日付)では300位以内にも入らず加点対象となっていません。そしてストリーミングにおいてはハロー!プロジェクト全体の傾向としてサブスク解禁しておらず、同指標は加点されていません。これら接触指標群の動向は、前者においてはやはりライト層の非充実を示し、後者については芸能事務所側の意向が機会損失を招いているのではと考える自分がいます。

 

 

フィジカルセールスを主体としたコアなファンの支えだけでは首位獲得も、また勢いのキープも難しくなっています。コアなファンの方々共々、その魅力をより広く浸透させるにはどうするかを考える必要があるでしょう。なおSEVENTEENは12月20日に『CDTVライブ!ライブ!』(TBS)のスペシャルに登場することがアナウンスされており、ライト層獲得のきっかけになるものと考えます。

 

 

一方で、Aimerさんにも気になる点がみられます。

タイアップで引っ張りだこのAimerは、当週“Download Songs”8位に「ONE AND LAST」も初登場させている。7,813DLを売り上げた今作は、Aimerがオープニング・テーマを担当していたドラマ『あなたの番です』の劇場版の主題歌に起用されており、映画公開日となる12月10日に配信開始された。

先程のダウンロード指標の記事から引用しましたが、Aimerさんは「残響散歌」リリースの4日後に「ONE AND LAST」も解禁。ダウンロード指標では好調に推移するものの、この曲は最新12月15日公開分(12月20日付)において総合100位以内エントリーを逃しています。

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「ONE AND LAST」が最新12月15日公開分(12月20日付)において解禁から3日分のみの加算であることは考慮に入れる必要がありますが、同日リリース且つ(厳密な時間は異なるものの)同日夜のミュージックビデオ公開という流れは最新ソングスチャートで4位に初登場したKing Gnu「一途」も同様です。

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Aimerさんにおいてはタイアップ元の人気が曲の人気にダイレクトに反映される状況にあると言えます。そこからステップアップし、歌手人気が自身の曲全体に波及するという流れを築き上げてほしいと願っています。