最新3月1日付ビルボードジャパンソングスチャートでは総合100位未満(300位圏内)ながら、ラジオ指標で8位に入ったテイラー・スウィフト「Love Story」。この曲のチャート推移(CHART insight)をみると、以前から長きに渡りエントリーしていることが解るのです。先月発表されたセルフカバー版に、オリジナルバージョンが合算されているということなのでしょうか。
ラジオ指標はプランテックによるOAデータを基に、聴取可能人口等を加味し指標化されています(About Charts│Billboard JAPANでは放送回数と記載されていますが、集計期間を同じくするプランテックのOA回数に基づくチャートとは順位が異なるため、総インプレッション数に基づくものと推測可能)。プランテックの最新チャート(こちら。3月1日付ビルボードジャパンソングスチャートと集計期間は同じ)でもビルボードジャパン同様に「Love Story」がトップ10内にランクインしているのですが、このタイミングでの上昇において"Taylor's Version"の記載がないのは正しくないでしょう。
上記は2月12日金曜にリリースされた「Love Story (Taylor's Version)」。テイラーは初期アルバム群の原盤権をコントロールできず、それらの作品を再度レコーディングすると宣言、その第一弾として用意されたのがアルバム『Fearless (Taylor's Version)』(オリジナルは2008年)収録のこの曲だったということは、以前ブログに記しています。
2月27日付米ビルボードソングスチャートで11位に初登場を果たした「Love Story (Taylor's Version)」ですが、米ビルボードでは楽曲リリースから間もなく、オリジナル版の「Love Story」と今回の"Taylor's Version"とを分けるとアナウンスし、実際別扱いとなっています。
一方でビルボードジャパンでは、冒頭のチャート推移を見る限り合算していると受け取ることができます。「Love Story (Taylor's Version)」のリリースタイミングを踏まえればラジオでOA回数を伸ばしたのがセルフカバー版であると考えるのが自然です。もしくは、ビルボードジャパンソングスチャートの他指標ではきちんと分けられているものの、プランテックが誤って混同したデータをそのままラジオ指標に換算しただけなのかもしれませんが。
オリジナルバージョンとリミックス版とを合算することが米ビルボードソングスチャートにおける通常のチャートポリシーであり、テイラー・スウィフトの今作品における取り扱いは特殊なケースと言えます。他方、ビルボードジャパンでは合算しないことがチャートポリシーになっているだろうことは、たとえばDISH//「猫」におけるオリジナルバージョンとTHE FIRST TAKEバージョンとのダブルエントリーからも明らか。仮に合算がチャートポリシーの基礎にあったならば、DISH//「猫」はおよそ半年もの間トップ10内をキープできたことになるのです。
DISH//「猫」が合算非対象なのに対し、テイラー・スウィフト「Love Story」と「Love Story (Taylor's Version)」は合算対象と捉えられかねず、もしも自分がDISH//のファンならば尚の事憮然としてしまいます。ましてや、テイラー・スウィフトにとっては原盤権の問題という屈辱ゆえのセルフカバー版リリースであり、オリジナルバージョンと一緒くたにされることには複雑な心境を抱くのではないでしょうか。
合算する/しないの基準について、米ビルボードが「Love Story (Taylor's Version)」をオリジナルバージョンと合算しないとアナウンスしたことで"通常は合算する"ことがあらためて明らかになりました。日本では、それこそDISH//「猫」がブレイクするきっかけとなったTHE FIRST TAKEの音源が続々配信されていることもあり、合算の基準について一度きちんと公表すべきだというのが私見です。