ビルボードジャパンが毎週水曜に更新する最新チャートについて、翌日までに振り返りポッドキャストを配信しています。いわゆる中の人の緩い喋りが特徴的なこのポッドキャストでは最新2月24日付チャートの他、MCの太田明宏さんがヒップホップ好きなことから最新2月22日付米ビルボードソングスチャートで6週連続首位をマークしているロディ・リッチ「The Box」についても取り上げています。太田さん、2月14日リリースの洋楽が多い中で注目歌手にひとつにポロ・Gを挙げていたのがヒップホップ好きの証明だなと思ったり。
その中で、アルバムチャートに大挙ランクインした槇原敬之容疑者についてコメントされていました。ポッドキャストでは極々自然にさん付けされていますし、ここでは以下さん付けで記載します(下記ツイートは除く)。
アルバムチャートにおける槇原敬之容疑者のアルバムチャート急浮上について触れていますが、薬物問題に関して知識等曖昧などと前置きしつつ(かなり緩いやり取りではありますが)、”薬物問題は依存という病気”と話してくれた太田さん、生武さんの喋りに感謝します https://t.co/Pw3tPfdNq5
— Kei / ブレストコナカ (@Kei_radio) 2020年2月20日
2月14日付ビルボードジャパンアルバムチャートにおける槇原敬之さんの最高位は『SMILING~THE BEST OF NORIYUKI MAKIHARA~』(1997)の9位。ダウンロード指標は2位発信となり、King Gnu『CEREMONY』とOfficial髭男dism『Traveler』に挟まった形です。
ダウンロード指標では100位以内に10作品が登場。
【ビルボード】King Gnu 『CEREMONY』、ダウンロードアルバムで通算4度目の首位に 槇原敬之は100位以内に10作 https://t.co/kECQbcYUFL pic.twitter.com/mPWgXdDnxy
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) 2020年2月19日
総合アルバムチャートでも100位以内に5作が登場(2月24日付ビルボードジャパンアルバムチャートはこちら)。同日付ソングスチャートでも「どんなときも。」(1991)が63位、「もう恋なんてしない」(1992)が71位に登場し、楽曲の引力の高さが証明された形です。アルバムチャートではオリジナルアルバムが最新作および過去の大ヒット作、ベストアルバムも『SMILING…』からカバーベストまでまんべんなく登場していることから、楽曲の人気が一部に偏っていないことが理解出来ます。
さて、このような形でのチャートインは以前もみられたことでした…と書くと過去に罪を犯した方の名を再度出すことになることをご了承いただきたいのですが。2019年3月25日付のビルボードジャパンチャートにおいては。
前週事件に揺れた #電気グルーヴ は「#ShangriLa」が63位に初登場。レコード会社の自粛前に購入した方が多く、デジタルダウンロード指標13位に登場。Twitter指標も40位。100位圏外ながらストリーミング指標も稼いでいます #ビルボードジャパン最新チャート速報
— Kei / ブレストコナカ (@Kei_radio) 2019年3月20日
アルバムチャートトップ100 https://t.co/qZkE52SPxH には #電気グルーヴ が計6作品登場しています
— Kei / ブレストコナカ (@Kei_radio) 2019年3月20日
しかし、彼らにおいては事件発生の直後、速攻で回収や撤去という動きが発生。また同じソニー・ミュージックの対応問題は、昨年末の逮捕の件でも生まれています。
上記声明のリンク先はこちら。この二組について、たとえばSpotifyでは本日の段階でもほぼ未配信のまま。(ほぼ、と書いたのは1曲のみ残っているゆえ(→こちら))。前者においてはメンバーが昨年6月に懲役1年6月、執行猶予3年の刑が確定しましたが現在も執行猶予期間であることや、ソニー・ミュージックアーティスツとの契約が解除や終了となったことが影響しているかもしれませんが、『芸能界をはじめとするエンタテインメント業界全体が議論する場』を作り、過度なマナーではなく『ルール(ガイドライン)を提起』することが成されようとせず、またその議論の呼びかけをソニー・ミュージック側が図ろうとしなかっ姿勢が見て取れたことが本当に残念でなりません。『』内については下記ブログエントリーに記載しています。
エンタテインメント業界が一向にルールを策定しようとせず過去の慣例をマナーとしてきた一方、回収等はおかしいと声を上げる方が署名活動等を行ったことが今回活きた形となったものと考えます。槇原敬之さんにおいては現段階で『SMILING…』を含め撤回されることなく配信されており、自分がその対応に疑問を呈したソニーにおいても、同グループのレーベルゲートが運営するMoraで今も掲載されています(→こちら)。ソニー・ミュージックへの移籍第一弾アルバム『Such a Lovely Place』(1997)もきちんと残っており(→こちら)。だからこそのチャートインと捉えることも出来ます。
個人的には、音楽業界における潮目の変化を鎮座DOPENESSさんの件から感じています(ここでもさん付けさせていただきます)。主演曲はたとえばSpotifyには上がっていないものの、グループの一員であるFNCYのセルフタイトルアルバム(2019)はきちんと残っており(→こちら)、またKIRINJIに客演参加した「Almond Eyes」を含むアルバム『cherish』(2019)もあります。
KIRINJIの堀込高樹さんは逮捕の一方が入った直後、このようなツイートをされています。
騒ぐな。静かにしてなさい。ほ
— KIRINJI (@KIRINJIOFFICIAL) 2019年11月30日
騒いだら見つかってしまい回収等されかねないから静かにしてなさいという意味ではなく、逮捕されたからといって楽曲が問題になることはないという意味のツイートだというのが私見。もしかしたらレコード会社より何らかの措置が採られそうになったのかもしれませんが堀込さんは毅然とした対応を採ったのだとも予想します。ミュージックビデオもきちんと残っていますし、それは槇原敬之さんにおいても同様です。
自分はビルボードジャパンのポッドキャストに対し、薬物問題は依存という病気であることを(専門知識はわからないと言葉を濁しながらも)きちんと伝えたことに敬意を示しました。”薬物問題は依存という病気”ということについては『荻上チキ Session-22』(TBSラジオ 月-金曜22時』ではっきりと示され、暴走する報道姿勢に一石を投じています。番組が作成した薬物報道ガイドラインは少しずつ浸透している印象があり、そのことも音楽業界の対応の変化につながったと言えるかもしれません。
【音声配信・書き起こし】「薬物報道ガイドラインを作ろう」荻上チキ×松本俊彦×上岡陽江×田中紀子▼2017年1月17日(火)放送分(TBSラジオ「荻上チキ・Session-22」平日22時~) https://t.co/gnNPHacC7G #ss954 #薬物報道ガイドライン
— 荻上チキ・Session-22 (@Session_22) 2020年2月13日
今回の槇原敬之さんの件における事件の詳細は不明ですが、相次ぐ薬物依存による問題発覚の際に思うことをこのタイミングで記しました。
自分は20年以上摂食障害(過食嘔吐)に侵されてきました。5年ほど前に一時治ったものの再発を繰り返し、ようやく今年にはいってから一度も戻していない状態となっています。
— Kei / ブレストコナカ (@Kei_radio) 2020年2月13日
食べ物への依存は罪には問われませんがれっきとした病気です。依存は誰でもなる可能性があります。想像力のない者が多すぎます https://t.co/n0kgmwQYwq
親友とジムに入会したことが摂食障害(の現段階での)克服の一助となっていますが、いつ再発するかはわかりませんし、再発の恐れは生涯抱えていくと思います。そしてその引き金はどこにあるかもわかりません。この引き金、薬物依存においては克服せんとする方を意図的に陥れようと近づく方が少なくない模様でありそのことに強い不快感を抱くのですが、薬物問題における別の引き金が事件をゴシップのネタとして消化し、推定無罪の原則を守ろうとせず人権がないかの如く叩くことに躊躇がない心なきメディアや市井の存在であることを、ひとりひとりが理解してほしいと思います。当人の意志の問題とする声がよく聞かれますが、だからといってそれを試すべく誹謗中傷をしてもよいと考えるならばそれは表現の自由を都合よく解釈しているだけに過ぎません。ただ、その心なき者の存在が未だ少なくないものの数自体は減ったという実感は抱いており、これもまた先に言ったような潮目の変化と捉えています。かつて漫才の王者を決定する大会で薬物問題をその依存については何ら考えようとせず自らのウケのためだけに用いて誹謗中傷を当然とする芸人のような考えをもつ方が、今回の件でもある程度見受けられたのは残念ですが。
事件については推移を見守り、仮に有罪ならばきちんと罪を償い、薬物問題であれば依存という病気として治療に当たって欲しいと思います。そして周囲の方々は自身が引き金になり得るという想像力を身に着け、ストレスのはけ口を誹謗中傷ではなく他所に見つけてほしいですし(その誹謗中傷でしかストレスを発散出来ないことだって、他者非難依存と捉えることが出来ますよね)、メディアは薬物報道ガイドラインをきちんと守らないといけません。エンタテインメント業界は業界全体でルールづくりに取り組むべきです。市井の行動もメディアの薬物報道ガイドラインの遵守もエンタテインメント業界のルール策定もすべて義務ではありませんが、義務と言わないとやろうとせず周囲が異を唱えるまで動かないのは自らに省みる力がないという自浄作用のなさを露呈しているのとイコールではないでしょうか。ならば外堀から埋められる前に自らを律する必要があります。