毎週木曜は、前日発表されたビルボードジャパン各種チャートの注目点をソングスチャート中心に紹介します。
今週のソングスチャートを制したのはKis-My-Ft2「Edge of Days」でした。
【ビルボード】Kis-My-Ft2「Edge of Days」が総合首位獲得 紅白出場アーティストが軒並みランクアップ https://t.co/0hF3zcBt16 pic.twitter.com/empTHRuZFj
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) November 20, 2019
シングルCDセールス、ルックアップおよびTwitterの3指標で首位。ただしチャート構成比に占めるシングルCDセールスは8割以上であり、これまでの例をなぞるならば次週の急落は免れないでしょう(下記の表にてその傾向を示しています)。
さてTwitter指標について、強い私見と前置きして苦言を呈させていただくならば。木村拓哉さん主演のドラマ『グランメゾン東京』(TBS 日曜21時)にKis-My-Ft2のメンバー、玉森裕太さんが出演しているのですが、玉森さんの登場シーンになるとドラマとは関係のないKis-My-Ft2「Edge of Days」をドラマのハッシュタグと共に記載したツイートが散見されます。ファンによるCDの自発的宣伝、もしくはビルボードジャパンソングスチャートのTwitter指標を押し上げるための策かもしれませんが、ドラマの反応を楽しみにしてツイートするまたは見る者にとってはノイズでしかなくむしろ逆効果ではないかと思うのです。その意味でも、Twitter指標のウェイトダウンは必要な措置だと考えています。
前週首位を獲得したNMB48「初恋至上主義」は20位へ急落しました。
#ビルボードジャパン最新チャート速報
— Kei / ブレストコナカ (@Kei_radio) November 20, 2019
ソングスチャートで前週首位から20位に後退した #NMB48「#初恋至上主義」のポイントは前週比11.5%の1948。アイドル楽曲のシングルCDセールス加算2週目におけるポイント前週比は10%台前後という事態が今週も発生したことになります
今年度1位を獲得した曲の大半はシングルCDセールス指標初加算週でありCDセールスの効果が大きかったわけですが、それら楽曲は翌週大きくポイントを落としています。
アイドル楽曲はシングルCDセールス加算2週目のポイント前週比が10~25%で収まってしまっています(AKB48は極端に低く5%未満)。その中で50%以上をキープ出来た作品は極端に少なく、またそれらの作品はシングルCDセールスに頼っていないことが解ります。つまり他指標をどれだけ稼ぐかが鍵であり、そのような楽曲ほど社会的ヒットとなっているものと考えます。
では、今回初のデジタルシングルとなった嵐「Turning Up」はどうでしょう。
#ビルボードジャパン最新チャート速報
— Kei / ブレストコナカ (@Kei_radio) November 20, 2019
一方で、ソングスチャート2→8位の #嵐「#TurningUp」は今週3908ポイントとなり、前週比29.4%。これはアイドルの中でも飛び抜けて高い水準となっています
11月3日19時に解禁された「Turning Up」は集計わずか5時間で11月11日付ソングスチャート10位に初登場し、翌週は2位(前週比363.0%)、そして今週が29.4%。ダウンロードという所有指標も稼ぎながら、やはりサブスクリプションサービスという接触指標が強かったことがポイント前週比が高い要因と言えます。ただ、高い水準なのは『アイドルの中でも』であり、広く世間に「Turning Up」が浸透しているのかはまた別の話かもしれません。11月17日までの「Turning Up」のダウンロード数は110921であり、たとえばシングルCDとして直近でリリースされた「BRAVE」が9月23日付ソングスチャートで獲得したシングルCD初週セールス708595枚とは大きな差が生じています。無論CDとダウンロードの単純比較は出来ませんし、嵐ファンの全てがデジタルに明るいわけではないでしょうが、ここからはユニークユーザー数もある程度見えてきます。今後ロングヒットにつなげるためにはダウンロード購入者の増加もさることながら、やはり所有から接触への移行が鍵と言えるでしょう。
今週は『NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか)の出場者が発表されたことが如実に反映されています。上記ビルボードジャパンの記事でも触れられていますが、ソングスチャートトップ10入りを果たした楽曲におけるポイント前週比をみると。
<NHK紅白歌合戦出場組>
・1位 Kis-My-Ft2「Edge of Days」 ポイント前週比1053.7%
・2位 Official髭男dism「Pretender」 ポイント前週比110.8%
・3位 Official髭男dism「宿命」 ポイント前週比100.1%
・4位 Official髭男dism「イエスタデイ」 ポイント前週比100.0%
・5位 King Gnu「白日」 ポイント前週比110.0%
・8位 嵐「Turning Up」 ポイント前週比29.4%
・9位 Foorin「パプリカ」 ポイント前週比114.4%
・10位 LiSA「紅蓮華」 ポイント前週比147.2%
<NHK紅白歌合戦不出場組>(※今後出演の可能性は否定出来ず)
・6位 米津玄師「馬と鹿」 ポイント前週比78.7%
シングルCDセールス初加算週のKis-My-Ft2、先述した嵐は極端な推移ゆえ置いておくとして、しかし他の作品は出場組が100%超え(もしくはキープ)、不出場組は100%割れとなっています。これは今年初出場を果たす菅田将暉「まちがいさがし」(11位)がポイント前週比113.0%であったことからも、『NHK紅白歌合戦』効果が非常に大きいことが解ります。その意味では不出場は機会損失と言えるかもしれません。
さて、『NHK紅白歌合戦』初出場組ではLiSA「紅蓮華」が今後化けることが予想されます。
過去2回のトップ10入りのタイミングはダウンロード初加算週、シングルCDセールス初加算週であり所有指標初加算の勢いに因るものでしたが、今回は『NHK紅白歌合戦』初出場効果はあれども何かしらの初加算週ではないタイミングでトップ10入りしたため、今後は所有および接触の両指標群をバランスよく獲得して上昇気流に乗るものと予想します。ただ、気になるのは動画再生指標の高くなさでありこれは間違いなくショートバージョンが影響しているものと考えます(ショートバージョンがチャートに寄与しにくいことは以前から指摘しています。それでも急上昇したのは流石ですが)。レコード会社や所属事務所等が英断を下せば、さらなる上昇も見込めるかもしれません。
そして今週目立つのはヒップホップの好調っぷり。
#ビルボードジャパン最新チャート速報
— Kei / ブレストコナカ (@Kei_radio) November 20, 2019
アルバムチャートトップ10で唯一、フィジカルなしで登場したのが #BADHOP『#LiftOff』。海外の著名プロデューサーを迎えたEPがダウンロード3位に入り、総合で6位に登場しています
BAD HOP
— BAD HOP (@badhop_official) November 14, 2019
NEW EP「Lift Off」のトラックリスト公開🔥
JET(Prod. Murda Beatz)
Double Up(Prod. Metro Boomin)
ICHIMANYEN(Prod. Mike WiLL Made-It)
Poppin(Prod. Mustard)
Dead Coaster(Prod. Wheezy)
Foreign(Prod. Wheezy&Turbo)
※iTunes, Apple Musicのみの配信となります#BADHOPWORLD pic.twitter.com/zaKkwFleDz
プロデューサーが如何に凄いかについては下記が分かりやすいと思います。
デジタル、それもiTunes StoreおよびApple Music限定で配信した作品がこれだけの成績を収めるインパクトは大きいですね。日本に少しずつでも着実にヒップホップが浸透していることが解ります。その要因のひとつはヒプノシスマイクの存在ではないでしょうか。
ヒプノシスマイクのオオサカ・ディビジョンによるどついたれ本舗が躍進。『あゝオオサカdreamin'night』はアルバムチャートで3週連続トップ10入り。初登場週には総合2位、ダウンロード1位となっています。制作したCreepy Nutsの人気も勿論のこと、ヒプノシスマイクが新しいブランドを確立した確たる証拠と言えるでしょう。先週末からレンタルも解禁され、次週はルックアップの伸びも期待出来ます。
ソングスチャートでも2週前に最高7位を記録したのですが、アルバムより落下のスピードが速いですね。CDがアルバムとしてカウントされること(それによりルックアップは含まれず)もさることながら、所有指標における動画再生が急落しているのも大きく、これはやはりショートバージョンの問題だと捉えています(未だ日本で根強いショートバージョン文化には強い疑問を呈したいと思います)。
『NHK紅白歌合戦』では昨年刀剣男士が特別企画枠で出演しましたが、今年はヒプノシスマイクがその役割を担ってもよいのではないでしょうか。