イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

ビルボードジャパンソングスチャートがDISH//「猫」のCD関連指標を削除する修正を実施…そこから考える、ビルボードジャパンのチェック体制強化案

先週のエントリーの中で挙げたビルボードジャパンへの疑問、うちひとつが解決しました。昨日21時頃、チャートに訂正が入っています。この時刻にチャートがアクセス不可の状態となり、回復後ポイント等が修正されていました。

「猫」は「僕たちがやりました」のカップリングであり、ダブルAサイド扱いではないためシングルCDセールスおよびルックアップは加算対象外。それが7月27日付からCD関連指標が「猫」に対して加算され、9月30日発表の10月5日付でも含まれていました。今回、自分が指摘したことが影響したかは判りかねますが、ビルボードジャパン側のCD関連指標加算が誤りであったことが判明したわけです。最新10月5日付では5281→5150ポイントに訂正されたほか、7月27日付まで遡って修正されています。

チャート推移(CHART insight)をみると、修正前では黄色の折れ線グラフで表示されるシングルCDセールス、およびオレンジのルックアップが表示。

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そして修正後は黄色とオレンジの折れ線グラフが消えています。

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そして前週のエントリーで掲載した表を修正すると。

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「猫」オリジナルバージョンの総合順位に変動はない一方、仮に「猫 ~ THE FIRST TAKE ver.~」のポイントを合算すると7月27日付ではトップ10落ちとなる等若干の変更がみられます。しかしながらその合算では最新10月5日付で4位となり、前回述べたように『NHK紅白歌合戦』の出場資格は得られたのではと考えます。

 

 

以前のエントリーでは「猫 ~ THE FIRST TAKE ver.~」における動画再生指標未加算化についても記していますがこちらはどうなったのか解りかねます。ビルボードジャパンには今一度ご確認いただきたいと願いつつ、より気になったことを今回記したいと思います。それはこの修正完了の旨が現在までにアナウンスされていないということ。順位変動がないためアナウンスは不要と考えるのであれば、その姿勢は信頼を削ぐものと考えます。たとえば今週のアナウンス不十分問題は他にもあり、チャート分析や予想を行うあささんが強く指摘されています。

きちんと発表する姿勢を徹底させないと、チャートへの信頼は勿論のこと、そのチャート自体の持つ好さすら自ずと消してしまうことになると思います。これらは決して細かい指摘ではありません。たとえば小売店にてPOPが誤って安く表示されておりレジで実際多く支払ってしまった際の違和感と似ていると思うのです。その違和感が解決されなければ、いや解決したとしても店員の態度が悪ければ不信感に増幅し、最悪その店に行かなくなったという経験はあるのではないでしょうか。その店がたとえ唯一無二のものであり行かざるを得ないとしても、好感を抱きにくいですよね。

 

「猫」の訂正やあささんの指摘された内容について、きちんとしたアナウンスは必要と考えます。またビルボードジャパンのポッドキャストではTwitterにて質問を募集していますが、「猫」や米ビルボードが先月新設したグローバルチャートについての質問が2週連続で取り上げられないのは非常に残念です。

 

 

ビルボードジャパンが行うべきは誤りを起こしにくい体制づくりではないでしょうか。これについて、以前にも掲載した解決策を2020年秋版にアップロードして掲載するならば、まずはチャート発表前のチェック体制強化は必須と言えます。

通常ビルボードジャパン各種チャートはCHART insightが水曜12時台に更新されるのですが、一昨日の最新10月5日付発表に関しては更新が13時すぎ。しかも12時台後半には。

指標のどれかが遅延したことでトラブルがあったか、アップロード前に異変に気付き一度取りやめようとして問題が起きたのかもしれません。ただこれらは大前提として、慌てて発表する必要はないのではと思うのです(出た瞬間に速報を打つ自分のような者がいるから慌てるのだとしたら大変申し訳ないのですが)。

ビルボードジャパンのスケジュールはCHART insightの更新後、各種チャートのトップ10を画像つきでツイートしまた各種チャートを最新週に更新(14時前)→各種チャートの解説(15~16時台)という流れとなっていますが、これらをほぼ全て夕方、決まった時間でのアップロードに変更すれば、解説記事等も含めアップロード前のチェックに余裕が出るはずです。複数名でのチェック体制ができれば、「猫」のCD関連指標加算問題等は起きにくかったものと考えます。

 

加えて、チャートのホームページやSNSへの掲載前に、ビルボードジャパンがチャート速報を配信するのは如何でしょう。この配信については昨日、ビルボードジャパンがTikTokアカウントにて新番組の用意をアナウンスしています。

来年度にソングスチャートの動画再生指標から除外されるUGC(ユーザー生成コンテンツ、日本では歌ってみた動画等が該当)について、しかしチャートに大きく影響を与えることから別途チャートを用意するとアナウンスしていましたが、上記記事ではそのチャート名が”Heatseekers Songs”となることが判明。そしてこのチャートを踏まえた番組が現段階で今月2回、いずれも金曜に配信されることになりました。

たとえばこのTikTok内アカウントを用いて、水曜17時に新チャートを速報にて紹介する番組を生配信するのは如何でしょう。新番組『NEXT FIRE』には人気のTikTokクリエイターである修一朗さんがMCに起用されますが、おそらくは収録用のスタジオが用意されているはず。そこで水曜、たとえばポッドキャストのスタッフの方々に出ていただき、チャンネル先行でチャート紹介を行うのです(ちなみに、必ずしも顔出しする必要はありません)。番組を30分と決めて終了時刻である17時半には一斉にチャートを刷新、さらにその番組の音声を素早くポッドキャストにて配信すれば、(現在リモートワークゆえやむなしではあるのですが)ポッドキャストの音声も劇的に向上するはずです。

 

 

チャート紹介のスケジュール策定は、受け手にとってチェックの時間を決めやすいというメリットがあります。また夕刻での発表は、仕事や学校帰りの移動時間にデジタルプラットフォームで、もしくはCD取扱店舗に行ってチェックしやすい環境を築く一助になるでしょう。そしてチャート速報紹介番組はビルボードジャパンへの注目度を高めるのみならず、配信中のQ&Aがよりダイレクトに且つ即時できるようになる点でも、ポッドキャストの音声向上の意味でもより好い案だと考えます。何より夕刻まで時間に余裕をもたせることで、ビルボードジャパン側がチャート確認する時間も労力も増えます。

 

これらが全て叶うとは限りませんし、ひとつも叶わないかもしれません。出しゃばりの指摘だと言われるのは覚悟の上で、しかし提言は必要なことだと考えるゆえこの場を借りて述べさせていただきました。参考になるならば幸いです。

10月5日付ビルボードジャパンソングスチャートでポイント前週割れを起こした嵐「Whenever You Call」について思うことを記す

毎週木曜は、前日発表されたビルボードジャパン各種チャートの注目点を紹介します。

9月21~27日を集計期間とする10月5日付ビルボードジャパンソングスチャート(Hot 100)、V6「It's my life」の猛追を振り切りYOASOBI「夜に駆ける」が2週ぶり、通算6週目の首位を獲得しました。

V6は今作の初週シングルCDセールスが前作「ある日願いが叶ったんだ」の111.9%をマーク。昨日弊ブログにて記載した内容はここでも立証されています。

 

さて、今回取り上げるのは嵐のデジタルシングル「Whenever You Call」について。

弊ブログにてこの曲のリリース直後、嵐が行った数々の施策を紹介し、ビルボードジャパンや米ビルボードが先月新設した2つのグローバルチャートで結果を残すものと記載しました。

今週発表された10月3日付グローバルチャート(集計期間:9月18~24日)ではGlobal 200で51位、Global200からアメリカの分を除くGlobal Excl U.S.では17位に初登場を果たしています。

おそらくは、主要デジタルプラットフォームの集計に基づくグローバルチャートの集計期間が全世界的に(日本も含めて)金曜開始であるだろうことから(ただしこの点については米ビルボードでもビルボードジャパンでも言及されていないため確認中ですが)、初週はダウンロードの高さで上位に躍り出たと考えることができます。両チャートを制したBTS「Dynamite」のダウンロード数がGlobal 200で58000、Global Excl U.S.で27000であり、他方嵐「Whenever You Call」は日本での9月18~20日のセールスが5万を突破。ビルボードジャパンの集計対象となるデジタルプラットフォームがすべてグローバルチャートの集計対象かは不明ですが、しかしダウンロードの高さが上位進出の要因と言えそうです。

他方、そのグローバルチャートでは次週の急落が予想されます。そのことは、ビルボードジャパンソングスチャートの2週目の動向から予想できるのですが、今作の急落には驚かされます。

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「Whenever You Call」は登場2週目にしてポイント前週比が100%を大きく割り込む結果に。これはRebornシリーズを除くオリジナル曲のデジタルシングルでは初の前週割れとなっています。指標の面で特に大きなブレーキとなったのはダウンロードと言え、これを踏まえれば次週のグローバルチャートでの急落は避けられないと考えるのは自然なことです。

(なお、「Turning Up」は日曜夜リリースにつき、初週はわずか数時間の数値で総合10位に登場。また同曲のストリーミング指標は記事未掲載となっています。)

 

 

さて今回は、個人的な見方が強めになると前置きして書かせていただきます。

嵐「Whenever You Call」はブルーノ・マーズとDマイルが手掛けたことで本格的なR&B曲となっており、ボーカルプロダクションの良さに驚いた次第。実は音楽関係者でボーカルプロダクションについて指摘されていた方がいらっしゃったのですが時限での公開だったため、どなたかに書いていただきたいと思っていたのですが。

しかしながら、「Whenever You Call」における一部インターネットの記事にはいわゆる”コレジャナイ感”が複数見られました。このようなネガティブな見方に基づく記事は全体において多いとは言えず、またこのような記事はアクセス数増大に伴う様々な利益化を目指す目的が垣間見えることから、個人的には今回の件も含めこれらタイプの記事についてはアクセスはしないものの、記事の存在については知らせる必要があり敢えて掲載させていただきます。

これら記事のテイストからみえてくるもの、それは今回の嵐「Whenever You Call」に逆風が吹いた理由が全編英語であることやジャンル違いであること等へ違和感を抱き、そのネガティブな思いが大きく膨らんだことにあるのではということです。

 

 

「Turning Up」も「IN THE SUMMER」も英語は用いられながら、そしてクリエイターが海外の方ながら日本語も含まれていました。しかし「Whenever You Call」は全編英語となっています。日本人には英語や韓国語等、外国語へのアレルギーとも言える拒否反応は実は少なくないと思われます。サウンド面における洋楽的なものへの拒否反応については、前週のラジオオンエアチャート(ビルボードジャパンのラジオエアプレイ指標に提供するデータとは別に、実際のオンエア回数に基づくもの)の解説記事で指摘されていましたが、歌詞においても同様と考えます。

また、今週7位には韓国のガールズグループ“MAMAMOO”のメンバー、Hwa Sa(ファサ)の「Maria」が初登場した。

(中略)

BTS同様、こちらもグローバルないわゆる“洋モノ最新サウンド”であり、昨今、日本の一般リスナーから支持を得るのは難しいタイプの音楽だ。これらが突破口になるか、K-POPを機に洋楽に興味を持つリスナーが増え、シーンが活性されることを期待したい。

「Whenever You Call」の様々な施策を紹介した際、全編英語にしたのは『ファンの自発的な翻訳や解釈を促したかったのでは』『嵐からファンの方々へのメッセージでありラブソングと捉えており、だからこそその思いを知ったときの喜びがより大きくなる』と推測しましたが、仮にその狙いが嵐側にあったとしてもファンにとってはダイレクトに届く日本語でという不満があったのかもしれません。

 

ジャンルにおける違和感も耳にします。つまりは嵐が歌うタイプの曲じゃないという声。これで思い出したのはビリー・アイリッシュが今夏リリースした「My Future」でした。

「Bad Guy」に代表される彼女の、これまでになかったR&Bアプローチが光る曲としてR&Bの音楽評論家からの称賛もみられ、自分も先月の私的ベスト2位に挙げたこの曲ですが、実は米ビルボードソングスチャートにおける滞在期間はわずか6週と短く、9月26日付で既に圏外となっています。

推測の域を出ませんが、これまでの彼女のイメージではない音楽ジャンルであったことが「My Future」早期脱落の要因と言えるでしょう。そして、社会を良くしたいという彼女の真っ直ぐな思いへの反発もありそうです。ビリー・アイリッシュ民主党支持を呼びかけているのですが、米の市井はどの政党を支持するかではっきり分かれています。これは分断とすら呼べるものです。

日本時間で昨日午前に行われた米大統領選のテレビ討論会はその内容の酷さながら、『CBSでは、事前の世論調査とほぼ同じ数字で、バイデン陣営が期待していた浮動票の上積みとはいかなかった』(“非難合戦”結果は5分5分?トランプvsバイデン(テレビ朝日系(ANN)) - Yahoo!ニュース(9月30日付け)より)とのこと。民主党バイデン候補にも問題があれど、共和党トランプ候補の人としての酷さが浮き彫りになった討論会にも関わらず、それでもトランプ候補は4割強の支持を集めているのです(『荻上チキ・Session』(TBSラジオ)9月30日放送分より)。となると、共和党もしくはトランプ候補への支持者が、民主党候補者を支持しパフォーマンスも行ったビリー・アイリッシュに裏切られた感を抱きかねず、それが曲の不支持につながったのではと考える自分がいます。アメリカのエンターテイナーはその多くが民主党支持ですが、党大会でパフォーマンスを行ったとなると反発がより強まったと考えるのは自然なことかもしれません。

 

もうひとつ思い出した曲が三浦大知「片隅」。ひとつ前にシングルCDとしてリリースした「Blizzard」がビルボードジャパンソングスチャートで最高2位となる大ヒットとなり、その原動力のひとつにファンによるTwitter活動、いわゆる”ブリ活”があると紹介しました。その後多くの歌手のファンによるつぶやき活動が徹底され、個人的にTwitter指標への見方は変わっていきましたが(アイドル等による上位占有率が高まるビルボードジャパンソングスチャートのTwitter指標動向を踏まえ、チャートポリシー変更についての私見を記す(9月28日付)参照)、「Blizzard」はTwitter指標を中心に特筆すべき動きをしていました。

それが次作「片隅」では状況が一変します。シングルCDの初週セールスは5→14位、Twitter指標は3→16位となり、総合でも2→22位と急落。シングルCDセールス加算2週目には「片隅」は総合100位圏外となってしまいました。

その他にも「Blizzard」→「片隅」におけるダウンの原因を上記エントリーにて指摘しましたが、一部ファンの方から「片隅」の作曲を手掛けたのがKōkiさんであることを理由に反発する動きがあったことを、今回の「Whenever You Call」から思い出した次第。知名度で選んでいるだったり、本人もしくは両親(特に母親である工藤静香さん)が嫌いだからとして作品に触れることを意図的に行わないという言葉を目にしていました。また「片隅」において、「Whenever You Call」同様一部ネット記事にて反発の声があがっているのも事実です(たとえばこちらこちらなど、Kōkiさんへのバッシングをメインとするもの)。

 

この嫌いだから触れないという思考が、「Whenever You Call」においてもみられたのではと感じています。個人的には先述した記事群や「片隅」への非難は、発し手の”コレジャナイ”というあくまで個人的感情を社会的に正しいと是認するかもしくは都合よくすり替える行為と考えていますが、「Whenever You Call」において全編英語だったりイメージにそぐわないと違和感を抱いたファンにとっては先述した記事が、”自分が抱いていた思いは間違っていなかった”という確証となるわけです。所有指標であるダウンロードの急落はコアなファンの反発と思われてもおかしくないでしょうし、それら声の存在はコアなファン以外のいわゆるライト層にも伝播することが想像でき、それが接触指標にも影響を及ぼしたと考えられます。ビルボードジャパンでは最新週の解説記事において「Whenever You Call」が『それぞれもうひと伸びが足らず』と記載していましたが、もうひと伸びどころかあまりに大きな差が生じていることから、意図的な敬遠があったのではという考えを抱いています。

 

 

無論、このネガティブな分析は、書き手の私自身がR&Bを好み、「Whenever You Call」に対し好印象を抱いたゆえに人一倍感じていることなのかもしれません。しかしダウンロード数の大きな減少はかなり気になります(尤もダウンロード数においてはチャート分析に長けたあささんによるこちらの指摘もあり、この点においてはビルボードジャパンへ確認する必要があるかもしれません)。また、最新集の集計期間内におけるメディア露出の差が影響を及ぼしたこともあるでしょう。

 

「My Future」や「片隅」、そして今回の「Whenever You Call」においても、その曲をシングル化することには歌手側の意志が多分に含まれているはずです。曲に対してNOとしたい方々の思いは理解できたとして、歌手の意志に対してまでNOと言っていないかを冷静に考えた上で態度を決めるほうが好いのではと感じています。そして冷静客観的に提言し、それでもダメだと思えばファンから退くのもひとつの手段ではないか…以前BTS「Dynamite」について楽曲の先鋭性が薄れたと指摘された方に対してこう提言したことがあるのですが、同種の考えを今回の件においても抱いた次第です。

ジャニーズ事務所所属歌手とジャニーズ以外のアイドルにおけるシングルCDセールス、コロナ禍で差がついていた件

ビルボードジャパンソングスチャート(Hot 100)において今月気になったのが、9月14日付でチャートを制したSTU48「思い出せる恋をしよう」、9月21日付で9位に登場したBOYS AND MEN「Oh Yeah」の動向。共にシングルCDセールス初加算に伴う上昇ですが、どちらも初週セールスが前作の半分に満たなかったのです。それを踏まえ、このように記載しました。

6月以降にCDリリースを再開したジャニーズ事務所所属歌手が新型コロナウイルスに伴う緊急事態宣言の発令以前と変わらないかもしくは売上を伸ばしている一方、ジャニーズ事務所所属歌手以外のアイドルにおける急落が気になるのです。

であればその売上枚数について比較する必要があると考え、コロナ禍における緊急事態宣言発令以降、すなわち実店舗の営業ならびにイベント開催の自粛が強化された4月以降、今日に至るまでに上位に登場した曲でその動向をまとめてみました。前々作までを対象とした(そして最新作の前々作との比較を掲載した)のは、この直近3作品でイベント開催数が異なったり、複数種すべてを購入しないと全曲揃えられないか否かに差が生じると考えたためです。

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色付けは、先日紹介したTwitter指標における順位表に合わせています。

一覧化してみると、先述したSTU48やBOYS AND MENのような状況が必ずしも起きているわけではないと言えます。NMB48「だってだってだって」はむしろ上昇していますが、これは同日発売の関ジャニ∞「Re:LIVE」とのセールス対決のためファンが発奮したと捉えることも可能でしょう。しかしながら、全体的には下がっているという印象があります。

 

ただこれは色付けしていない歌手および青色表示したジャニーズ事務所所属歌手を除いた、ジャニーズ以外の男性アイドルや女性アイドル、K-Popアクト、LDH所属歌手そしてアニメ等のジャンルでの話。ジャニーズ事務所所属歌手においては前作と比較可能な10曲のうち前作割れは4曲にとどまり、最も低くて84.0%というのは驚異的とすら言えます。山下智久「Nights Cold」は前作「CHANGE」が自身主演となる地上波放送のドラマタイアップだったこと、SixTONES「NAVIGATOR」は前作がデビュー曲だったことの反動と言え、嵐「カイト」はファンクラブ限定盤がビルボードジャパンのチャートポリシーに基づきカウントされないことや前作「BRAVE」にライブイベントの抽選参加権が同梱されていたことの反動で低くなったと想定されることから、大幅に落としていないというのが私見。色付けした歌手の推定売上枚数を合計して比較すると、ジャニーズ事務所所属歌手が前作比105.4%に対しジャニーズ以外が77.2%であり、その差は歴然なのです。

(なお色付けしていない歌手がある理由は、アイドル等カテゴライズにしにくいと考えたためであり、またタイアップの有無により売上枚数が大きく異なるためです。)

 

先に取り上げたブログエントリーでは、推測の域を出ないと前置きした上でこのようなことを書きました。

メディア露出の多いアイドル(それこそジャニーズ事務所所属歌手はその代表格)以外においては、握手会やイベント等ファンとの密接な接触ができる機会をCDの特典として提供することをセールスの起爆剤としていたと思われます。それがコロナ禍により自粛せざるを得なくなったことで、接触ができなくなったことを嘆くファンがCD購入を止めたのではないかと。

先述したように、イベント開催数が異なったり複数種すべてを購入しないと全曲揃えられないか否かによっても変わりますが、しかしイベントが基本的に未開催でも売上が安定しているジャニーズ事務所所属歌手と、ジャニーズ以外のアイドル等とではっきりとした差が生じたことが確定したと感じます。ジャニーズ以外の男性アイドルグループはメディア露出が未だ難しい状況であり、どうやってCDセールスの逆風をカバーするかは急務です。

 

また9月17日付ブログエントリーでは、緊急事態宣言発令以降『乃木坂46欅坂46が最新曲をデジタルでのみリリースしたことも、このことが背景にある気が』とも書きました。CDセールスの落ち込み度合いが予想できにくいこと、そしてCDセールスが落ちれば彼女たちのキャリアに傷がつくと考えたことがCD回避の理由なのかもしれません。

BTS「Dynamite」が首位に返り咲いた原動力は? そして新設グローバルチャートも制覇…10月3日付米ビルボードソングスチャートをチェック

ビルボードのソングスチャートをチェック。現地時間の9月28日月曜に発表された10月3日付最新ソングスチャート(Hot 100)はBTS「Dynamite」が首位に返り咲き、合わせて米ビルボードが今月新設した2つのグローバルチャートを共に制覇しました。

通算3週目の首位を獲得したBTS「Dynamite」は、ストリーミングが前週比11%アップの1400万(同指標12位)、ダウンロードが同96%アップの153000(同指標1位)、ラジオエアプレイが同8%アップの2080万(同指標42位)を獲得。とりわけダウンロードが倍増に至ったのは、デジタル2指標の集計期間開始日となる9月18日に新たな4つのリミックスをリリースしたため。

オリジナルバージョンおよびそのインストゥルメンタルと合わせて”NightTime Version”としてもリリースされているこの4つのリミックスが、これまでリリースされた4つのリミックスと同様にダウンロード指標主体に押し上げる効果をもたらし、新規4リミックスの「Dynamite」ダウンロードセールスに占める割合は52%に。またオリジナルバージョンを含むこれら10バージョンが全て、発売当初からずっと安価販売されていること(99セントもしくは1ドル29セントが一般的なところ、69セントで販売を継続)もまた、ダウンロード指標の高水準での維持の要因と言えるでしょう。「Dynamite」はリゾ「Truth Hurts」(2019)以来となるダウンロード指標通算5週首位を獲得、また総合チャートにおいて、デュオもしくはグループで3週以上首位を獲得したのはマルーン5 feat. カーディ・B「Girls Like You」(2018 7週)以来となります。

 

(ただし私見を述べるならば、ダウンロードに対するストリーミングの盛り上がりの低さ、ダウンロードと他指標の乖離を踏まえるに、BTS「Dynamite」の大量リミックス投入策に対し米ビルボードが今後メスをいれる可能性があると考えます。今年多く発生しチャートの健全化を阻害したと言えるフィジカル施策同様、このリミックス大量投入もまたチャートハックの一環と捉えられてもおかしくないでしょう。BTS「Dynamite」の大量リミックス投入策、およびチャートハックという考えについては今月の弊ブログエントリーをご参照ください。)

 

そのカーディ・Bが前週まで通算4週首位を獲得し、メーガン・ザ・スタリオン(ミーガン・ジ・スタリオンと表記するところも)を招いた「WAP」は2位に後退。ストリーミングは前週比14%ダウンの3580万(同指標1位)、ダウンロードは同23%ダウンの9000(同指標5位)、ラジオエアプレイが同1%アップの3300万(同指標20位)となっており、最もピーク到達が遅いラジオエアプレイでも上昇幅が小さくなっていることから、曲としての勢いはほぼ止まったと言えます。

 

3位にはジャスティン・ビーバー feat. チャンス・ザ・ラッパー「Holy」が初登場。ジャスティン・ビーバーにとってはシカゴ、シュープリームス(スプリームスと表記するところも)に並ぶ記念すべき20曲目、チャンス・ザ・ラッパーにとっては3曲目となるトップ10入りとなりました。ストリーミングは2600万、ダウンロードは27000で2指標共に2位、ラジオエアプレイは1860万で47位発進。総合チャート初登場時におけるラジオエアプレイでの50位以内エントリーは珍しく、ジャスティン・ビーバーの人気の高さが解ります。

 

10位にはギャビー・バレット「I Hope」が、8月29日付以来1ヶ月以上の時を経て再びトップ10入り。そして今回の名義はギャビー・バレット feat. チャーリー・プースとなっています。これはチャーリー・プースをフィーチャーしたバージョンが総合的にオリジナルバージョンを上回ったため。

チャーリー・プースにとっては、ウィズ・カリファに客演参加した「See You Again」(2015 12週1位)、セレーナ・ゴメスを迎えた「We Don't Talk Anymore」(2016 9位)、客演なしの「Attention」(2017 5位)に続く4曲目のトップ10入りとなります。

 

最新のトップ10はこちら。

(※上記クレジット、10位にはチャーリー・プースの名前がありませんが記事では客演名義で記載されています。)

[今週 (前週) 歌手名・曲名]

1位 (2位) BTS「Dynamite」

2位 (1位) カーディ・B feat. メーガン・ザ・スタリオン「WAP」

3位 (初登場) ジャスティン・ビーバー feat. チャンス・ザ・ラッパー「Holy」

4位 (3位) ドレイク feat. リル・ダーク「Laugh Now Cry Later」

5位 (6位) 24Kゴールデン feat. イアン・ディオール「Mood」

6位 (4位) ダベイビー feat. ロディ・リッチ「Rockstar」

7位 (5位) ザ・ウィークエンド「Blinding Lights」

8位 (7位) ハリー・スタイルズ「Watermelon Sugar」

9位 (8位) ジョーシュ・シックスエイトファイヴ × ジェイソン・デルーロ「Savage Love (Laxed - Siren Beat)」

10位 (11位) ギャビー・バレット feat. チャーリー・プース「I Hope」

 

そして今月米ビルボードが新設した、主要デジタルプラットフォームによるストリーミングおよびダウンロードの2指標で構成される世界全体でのヒットチャート(Global 200)、およびGlobal 200からアメリカの分を除いたGlobal Excl U.S.の2チャートにおいても、BTS「Dynamite」はトップに立ちました。Global Excl U.S.は2連覇を達成し、Global 200では初制覇。これにより「Dynamite」は米ソングスチャート(Hot 100)およびグローバル2チャートの3つ全てを制した初の楽曲となりました。

Global 200からGlobal Excl U.S.を引けば、米におけるダウンロードセールスが31000と判明します。Hot 100の同指標における153000との乖離はおそらく、「Dynamite」の米における売上の大半がiTunes Store等(Global 200等で換算対象となる)デジタルプラットフォームではなく、歌手のホームページにて購入されているためと推測されます。

アイドル等による上位占有率が高まるビルボードジャパンソングスチャートのTwitter指標動向を踏まえ、チャートポリシー変更についての私見を記す

先週金曜に記載したDISH//「猫」に関するエントリーにおいて、そのエントリーでも引用させていただいたあささんと、合算した場合のチャートハックの可能性とその是正方法について、短いながらも有意義なやり取りを行うことができました。下記ツイートからたどることができます。

チャートハックという言葉は一昨日のエントリーにて初めて用いましたが、米においてはダウンロード指標を押し上げるフィジカル施策が今年は多く行われており、米ビルボードは来月から実質無効化する措置を採りました。

一方で、BTS「Dynamite」が現在までに8つのリミックスをリリースしダウンロード指標押し上げに至っている(うち4つのリミックスについては今週発表の10月3日付米ビルボードソングスチャート以降大きく反映)ことについて、個人的に今後議論すべきことと感じています。

一昨日紹介したアルバムの新装盤についてもそうですが、これら追加投入の目的がチャートハックをメインにしたものならば、米ビルボードがその都度チャートポリシー変更を実施する必要があると感じています。特にダウンロード指標の押し上げは一過性のものであり、翌週急落に至るならばチャートが健全な状態ではないと言えるわけで尚の事です。

 

 

さて、では日本ではチャートハックはないかというと断言はできません。以前から気になっているのがTwitter指標の動向、そしてその存在について。

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上記の表は、以前のエントリーで作成したものを今年9月まで継続したものとなります。

アイドルやK-Pop、アニメやネットの歌手等を除く歌手(色が付いていない箇所)が少ないことが解ります。ただしこの分類は緩やかに作成しており、LiSA「紅蓮華」「炎」や『刀剣乱舞-ONLINE-』主題歌の松任谷由実「あなたと 私と」、ボカロPとして活動する方が所属するYOASOBI等を仮に黄色で表示するならば、Twitter指標におけるアイドルやK-Pop、アニメやネット以外の歌手の登場率は限りなく低くなります。

 

Twitter指標について自分が意識しはじめたのは、三浦大知「Blizzard」(2018)のヒットの要因にファンによる「Blizzard」盛り上げ活動、いわゆる”ブリ活”があったため。当時はファン活動の成果だと賞賛していましたが、そこから半年で考えを改めるに至っています。そしてその「Blizzard」リリースから2年近くが経過し、Twitter指標における見方は自分の中でさらに厳しいものとなっています。

月末のチャートを定点観測すると日本の男性アイドル曲のランクイン率が高くなっていったことが解りますが、直近10週間のTwitter指標上位20曲について、歌手名および曲名をまとめてみるとそのランクイン曲に傾向が見られます。

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たとえば8月3日付の総合ソングスチャートで首位に立ったSixTONES「NAVIGATOR」、9月7日付首位のJO1「OH-EH-OH」については共にTwitterでトップに立つと共に、カップリング曲(CDを複数種リリースしカップリング曲が異なる場合はその全て)が20位以内に登場、さらには前シングル曲もランクインという状況となっています。シングルCDの表題曲以外で特にタイアップが付いているわけでもない曲は、コアなファンでなければ注目度が高いとは言えないと思うのですが、これはコアなファンによる歌手名と曲名(カップリング曲全て含む)を併記したツイートが目立つため。下記リンク先にその一例が記載されています。

個人的にはビルボードジャパンソングスチャートにおけるTwitter指標の重要性をファンが認識し、ランクインするために歌手名と曲名(カップリング曲を含む)を自発的につぶやいているものと考えます。そうでなければ以前このブログで紹介したような”ビルボード対策”や”ビルボ活”等という言葉は生まれないのではないでしょうか。

 

 

個人的にはその活動の全てを否定するつもりはありません。また施策自体は重要なものであり、たとえば先日紹介した嵐「Whenever You Call」については様々な施策がチャートに表れるものと書きました。ただ、「Whenever You Call」のそれはコアなファンのみならずライト層にも訴求し得る内容である一方、Twitterでのカップリング曲併記による対策はコアなファン主体であり、似て非なるものと言えるでしょう。

そうなると、Twitter指標についてはコアなファンの”チャートハック”と捉えられても仕方がない気がするのです。その獲得ポイント数はカップリング曲だけで1000を超え、デジタル未解禁曲ながらTwitter指標だけで総合50位以内に入ることも。これではチャートは健全だと言えるかと指摘されてもおかしくないと思うのです。その他にも、新曲のタイトルが発表された日を集計期間に含む週で、その新曲の音が何ひとつ解禁されていない状態にも関わらずその話題性や期待値だけでチャートインすることについても疑問を持ち合わせています。

 

 

このTwitterの偏りの状況については、この春にも指摘させていただいています。

仮にTwitter指標がなくなると、今年のいわゆるコロナ禍においてヒットした星野源「うちで踊ろう」のようなヒットの形が可視化されなくなるのでは、と当時記載しました。

一方でビルボードジャパンでは、新年度からのチャートポリシー変更を予告していますいわゆる”歌ってみた”動画に代表されるUGC(ユーザー生成コンテンツ)を動画再生指標のカウントから除外し、『YouTube各サービスのUGC聴取および視聴回数を合算した新チャート』をスタート予定としています(『』内は下記リンク先に記載)。そうなるとUGCが量産される曲は今後、新設されるチャートでヒットが可視化されることになるわけです。Twitter指標の代替というわけではありませんが、Twitter指標を総合ソングスチャートから仮に除外したとして、「うちで踊ろう」のようなネットで実際バズを起こしている曲は新設チャートでフォロー可能となります。

ビルボードソングスチャートではTwitter指標は含まれておらず、別途Social 50というチャートを用意して歌手名のみのチャートを用意。日本では歌手名と曲名の双方でのカウントを継続するとしても、4月のエントリーで指摘したように一定数を上回った場合係数をかける、音源がどこにも解禁されていない場合はチャートに登場させない等の措置を採り、もしくはTwitter指標を除外することも検討して好いのでは…これが厳しいながらも現段階における私見です。

 

 

最後に。例示した歌手を含む特定の歌手やジャンルを貶すつもりは一切ありません。チャートが健全といえないだろう状況が発生したならば常に健全な状況に戻さないといけないため、Twitter指標にメスをいれるべきでは…これが今回のエントリー記載に至った理由です。

Big Hit Entertainmentの日本でのプロデューサー募集から考える、日本オリジナル曲の”ドメスティック”問題

今朝Twitterのタイムラインに飛び込んできたこちらのツイート、非常に考えさせられます。

たいなかさんが引用したニュースで紹介しているオーディションは下記に。

この中のデモガイドを読むと、明らかにグローバルなサウンドを求める一方で『メロディが鮮明でダイナミックな流れの、起承転結がはっきりとした定型化された曲の構造(A:Verse-B:Pre-Chorus-C:Chorus)の音楽デモはご遠慮ください』とあり、いわゆるJ-Popライクな歌謡曲的メロディの落とし込みを敬遠するという姿勢が見て取れます。これを読み、J-Pop的な作品がダメというものではなく、J-Pop的なものがドメスティックで留まってしまうことを、Big Hit Entertainment側がはっきりと認識しているとのではないか…個人的には強く感じた次第です。

 

 

BTSは「Dynamite」で、アメリカでの本格的な成功の足がかりを築いています。いや、以前も米ビルボードソングスチャートでトップ10ヒットを出してはいたものの、最新9月26日付チャートで「Dynamite」が4週目のトップ10入りを果たしたことで、その認知度は急激に上昇したと捉えています。

アメリカにおいて、「Dynamite」は未だ所有指標であるダウンロードが他の曲より圧倒的に多い一方で接触指標群が弱いという特徴があるのですが、グローバルチャートに目を向けると「Dynamite」は所有より接触指標が強く、すでに世界中では高い人気を誇っていると理解できます。最新チャートにおいてGlobal USで2位、Global Excl U.S.で1位に至れたのはまさに世界規模での人気の表れです。

「Dynamite」はリミックスを合計8種類投入する等、ダウンロード指標上昇策を押し出しておりこのチャートハック的手法に否定的見方が出るかもしれませんが、しかしこの「Dynamite」がロングヒットとなれば今後はダウンロード指標に頼らずもBTSがヒットに至ることが自然になっていくのではと考えます。リミックスの大量投入はある意味、アメリカでの礎を築く策なのかもしれません。

そうなると、BTSは最大の音楽市場であるアメリカでの活動に軸足を置くだろうことが考えられます。 実は「Lights」や「Stay Gold」等日本オリジナル曲も世界中のサブスクサービスで聴くことができるのですが、米Spotifyデイリーチャートでは「Stay Gold」の最高位がグローバル25位・米75位「Lights」 は双方とも200位未満であり、市場の面においても日本オリジナル曲はドメスティック、もしくはガラパゴスと言われてもおかしくない状態と考えれば、日本オリジナル曲を今後用意するとしても世界中でヒットするものを…そう考えるのは自然なことではないでしょうか。

 

 

BTSに限らずK-Popアクトが日本で活動する際、世界展開する曲を日本語化する以外に日本オリジナル曲を用意することが多く行われています。BTSにおいては昨年「Lights」をシングルCDとしてリリースし、日本語化曲が多く収録された日本向けアルバムから「Stay Gold」を配信先行で今夏リリースしました。

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ミュージックビデオの下のグラフは、ビルボードジャパンが提供するチャート推移(CHART insight)。比較的安定したヒットとなってはいますが、現在ヒット中の「Dynamite」と比べると明らかな差が見えてきます。

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黒の折れ線グラフで示された総合チャートにおいて、長くトップ10内にとどまっているかが違いのひとつ。そして。

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紫の折れ線グラフで表示されたダウンロード、青のサブスク再生回数に基づくストリーミング、そして赤の動画再生のみを抽出すると、「Dynamite」に比べて日本オリジナルの2曲のダウンが、特に動画再生において高いことが判ります。無論「Dynamite」の今後の動向をみないと断言はしかねるのですが、しかし日本オリジナル曲は接触指標が強くないことが読み取れるのです。

 

これについて、日本オリジナル曲はシングル曲をCDとしてリリースすることが多くそちらで利益を得るから問題ないという考えがあるのかもしれませんが、その所有指標が瞬間風速こそ強くとも急落すること、同時に接触指標が伴わないことが特徴であり、一方で世界展開する曲は接触指標群が強いために長い目でみればむしろ日本語化の有無に関係なく世界展開する曲のほうがチャートで勝る傾向にあるのです。これについてはIZ*ONEやTWICE等を例に、幾度となく指摘しています。

TWICEを取り上げた際、合わせてNiziU「Make you happy」の動向を紹介し、同曲が脱J-Popな作品ゆえ接触指標群を中心にヒットを続けていることから、『K-PopアクトはJ-Pop要素の強い日本オリジナル曲を出す必要性が低いのではないかと思うのです』と結論付けました。Big Hit Entertainmentの今回のプロデューサー募集におけるデモガイドは、まさにこの点をなぞっていると思うのです。 

 

 

さすがにBig Hit Entertainment側がJ-Popを馬鹿にしているなどとは思いませんが、チャートの面からは日本オリジナル曲が明らかに、世界と日本とのヒットの規模の違いにおいても、そして日本自体での世界展開曲と比べてみても、ドメスティックな動きとなっていることが客観的に証明されていると感じます。これは複合指標に基づくビルボードジャパンソングスチャートにおけるデジタル指標群のみならず、近年洋楽を取り上げることが減ったように感じるラジオにおいてもその傾向が生まれています。

先週2位まで浮上したBTS「Dynamite」が、今週オンエア数こそ減り5位へとダウンしたものの確実な広がりをみせた。再びAM局でのオンエアも獲得しつつ、さらにリクエスト数は先週の2.6倍に膨れ上がり、音源解禁されて以降最多数を集めた。8月17日~8月23日チャートに初登場してからリクエスト数は増加傾向にあり、確実に一般リスナーへの普及が進んでいると言える。

また、今週7位には韓国のガールズグループ“MAMAMOO”のメンバー、Hwa Sa(ファサ)の「Maria」が初登場した。6月30日リリースの配信限定アルバム収録曲で、これまで数は少ないながらオンエアはあったものの、先週から増加。今週いっきに急伸し、リクエストも寄せられた。公式TikTokで同曲のダンスチャレンジが実施され大量再生されるなど、世界的なブームがジワジワと日本へも浸透し始めたのだろう。

BTS同様、こちらもグローバルないわゆる“洋モノ最新サウンド”であり、昨今、日本の一般リスナーから支持を得るのは難しいタイプの音楽だ。これらが突破口になるか、K-POPを機に洋楽に興味を持つリスナーが増え、シーンが活性されることを期待したい。

Perfume首位、バンプ僅差で2位、ミスチル3位初登場、レキシ善戦、K-POP遂に一般層へ普及か【エアモニ】 | Musicman(9月23日付)より

この動きは、ラジオ曲や番組が今の流行をきちんと捉え始めたと言えるかもしれません。

 

最初に紹介したたいなかさんのツイートに対して違和感や不快感を抱く方は、たとえばK-Popを好んで聴く層に、”K-Popアクトの日本オリジナル曲をどう思う?” や ”日本のヒット曲と海外のヒット曲にはどんな違いがあると思う?”と尋ねてみたら如何でしょう。彼らの声から得られるものがきっとあるはずです。また、昨日SKY-HIさんが会社を設立しボーイズグループを募集するとアナウンスしましたが、その経緯や思いから今の日本の問題点がはっきりと見えてくると思います(そして、だからこそSKY-HIさんが現状を前向きに変えようとしているのだと思うのです)。アイドルグループの一員として特に日本のメディアや芸能界という仕組みの中で辛酸を嘗め、そしてラッパーとして成功を収め、海外の歌手と積極的にコラボしている彼の言葉には強い説得力が宿っています。

 

サブスク興隆が数年前のアルバムの新装盤リリースを招いている? 個人的に疑問視する理由とは

アルバムの新装盤といえば、十数年から数十年前に登場した作品を高音質化した上でボーナストラックや映像盤を追加したものというイメージがあります。たとえば最近リリースがアナウンスされた渡辺美里『tokyo』30周年盤(11月25日発売)はその詳細が未定ながらも、オリジナルアルバムが1990年のオリコンアルバムランキングで年間4位に入ったことから当時触れた方を中心に注目を集めるかもしれません。

そんなアルバムの新装盤ですが、昨日リリースされた作品には十数年ではなく十年以内、いや5年以内の作品が複数みられています。

 

リル・ウェイン『Tha Carter V』(2018→2020)

iTunes Storeこちら。追加音源はトラック1~7。この作品の元々のリリースには紆余曲折があったとのこと(下記記事参照)。今回は2014年にリリースする予定だった形で発表するとのことゆえ、追加音源はその当時録音されたものかもしれません。

 

・ブライソン・ティラー『T R A P S O U L』(2015→2020)

iTunes Storeこちら。ファーストアルバムが5年の時を経て新装盤化。追加音源はトラック15以降となり、インタールードとアウトロを除けば注目はなんといってもザ・ウィークエンドをフィーチャーした「Rambo (Last Blood)」。米ビルボードソングスチャートで自己最高位を記録した「Don't」の13位をさすがに上回ることはないかもしれませんが、注目を集めることは間違いないでしょう。

 

 

ブライソン・ティラーの新装盤に客演したザ・ウィークエンドですが、今年リリースのアルバム『After Hours』をリリースから2週間の間に数回出し直しています。この動きはザ・ウィークエンドに限ったものではなく、リリースの数日から1ヶ月以内に新装盤をリリースすることが最早定番化し、チャートのカンフル剤として一定の成果を上げていると感じています。ただ、この動きはチャートへのハッキング的側面(以降”チャートハック”と呼びます)が強いこと、サブスク時代にあって追加料金を払わず楽しめる一方でオリジナルバージョンを所有(購入)した方にとっては不信感を抱きかねないという点において、個人的には歓迎できないと思っています。

今回取り上げた『T R A P S O U L』『Tha Carter V』においても同様の効果を狙っただろうことは想像できるものの、しかしそれぞれのオリジナルバージョンがリリースから数年経過しチャート下位にいる状況では、さすがにチャートハックだろうとは言いづらい気がします。そうなると、数年前の作品が今後どんどん新装盤化される気がするのです。米ビルボードにはまず、リリースの数日から1ヶ月以内に新装盤をリリースすることによるチャートハックの是非を議論した上で、そこにメスを入れるならば今回紹介したようなリリースから数年後の新装盤化についても議題に上げてほしいと願います。