イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

アイドル等による上位占有率が高まるビルボードジャパンソングスチャートのTwitter指標動向を踏まえ、チャートポリシー変更についての私見を記す

先週金曜に記載したDISH//「猫」に関するエントリーにおいて、そのエントリーでも引用させていただいたあささんと、合算した場合のチャートハックの可能性とその是正方法について、短いながらも有意義なやり取りを行うことができました。下記ツイートからたどることができます。

チャートハックという言葉は一昨日のエントリーにて初めて用いましたが、米においてはダウンロード指標を押し上げるフィジカル施策が今年は多く行われており、米ビルボードは来月から実質無効化する措置を採りました。

一方で、BTS「Dynamite」が現在までに8つのリミックスをリリースしダウンロード指標押し上げに至っている(うち4つのリミックスについては今週発表の10月3日付米ビルボードソングスチャート以降大きく反映)ことについて、個人的に今後議論すべきことと感じています。

一昨日紹介したアルバムの新装盤についてもそうですが、これら追加投入の目的がチャートハックをメインにしたものならば、米ビルボードがその都度チャートポリシー変更を実施する必要があると感じています。特にダウンロード指標の押し上げは一過性のものであり、翌週急落に至るならばチャートが健全な状態ではないと言えるわけで尚の事です。

 

 

さて、では日本ではチャートハックはないかというと断言はできません。以前から気になっているのがTwitter指標の動向、そしてその存在について。

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上記の表は、以前のエントリーで作成したものを今年9月まで継続したものとなります。

アイドルやK-Pop、アニメやネットの歌手等を除く歌手(色が付いていない箇所)が少ないことが解ります。ただしこの分類は緩やかに作成しており、LiSA「紅蓮華」「炎」や『刀剣乱舞-ONLINE-』主題歌の松任谷由実「あなたと 私と」、ボカロPとして活動する方が所属するYOASOBI等を仮に黄色で表示するならば、Twitter指標におけるアイドルやK-Pop、アニメやネット以外の歌手の登場率は限りなく低くなります。

 

Twitter指標について自分が意識しはじめたのは、三浦大知「Blizzard」(2018)のヒットの要因にファンによる「Blizzard」盛り上げ活動、いわゆる”ブリ活”があったため。当時はファン活動の成果だと賞賛していましたが、そこから半年で考えを改めるに至っています。そしてその「Blizzard」リリースから2年近くが経過し、Twitter指標における見方は自分の中でさらに厳しいものとなっています。

月末のチャートを定点観測すると日本の男性アイドル曲のランクイン率が高くなっていったことが解りますが、直近10週間のTwitter指標上位20曲について、歌手名および曲名をまとめてみるとそのランクイン曲に傾向が見られます。

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たとえば8月3日付の総合ソングスチャートで首位に立ったSixTONES「NAVIGATOR」、9月7日付首位のJO1「OH-EH-OH」については共にTwitterでトップに立つと共に、カップリング曲(CDを複数種リリースしカップリング曲が異なる場合はその全て)が20位以内に登場、さらには前シングル曲もランクインという状況となっています。シングルCDの表題曲以外で特にタイアップが付いているわけでもない曲は、コアなファンでなければ注目度が高いとは言えないと思うのですが、これはコアなファンによる歌手名と曲名(カップリング曲全て含む)を併記したツイートが目立つため。下記リンク先にその一例が記載されています。

個人的にはビルボードジャパンソングスチャートにおけるTwitter指標の重要性をファンが認識し、ランクインするために歌手名と曲名(カップリング曲を含む)を自発的につぶやいているものと考えます。そうでなければ以前このブログで紹介したような”ビルボード対策”や”ビルボ活”等という言葉は生まれないのではないでしょうか。

 

 

個人的にはその活動の全てを否定するつもりはありません。また施策自体は重要なものであり、たとえば先日紹介した嵐「Whenever You Call」については様々な施策がチャートに表れるものと書きました。ただ、「Whenever You Call」のそれはコアなファンのみならずライト層にも訴求し得る内容である一方、Twitterでのカップリング曲併記による対策はコアなファン主体であり、似て非なるものと言えるでしょう。

そうなると、Twitter指標についてはコアなファンの”チャートハック”と捉えられても仕方がない気がするのです。その獲得ポイント数はカップリング曲だけで1000を超え、デジタル未解禁曲ながらTwitter指標だけで総合50位以内に入ることも。これではチャートは健全だと言えるかと指摘されてもおかしくないと思うのです。その他にも、新曲のタイトルが発表された日を集計期間に含む週で、その新曲の音が何ひとつ解禁されていない状態にも関わらずその話題性や期待値だけでチャートインすることについても疑問を持ち合わせています。

 

 

このTwitterの偏りの状況については、この春にも指摘させていただいています。

仮にTwitter指標がなくなると、今年のいわゆるコロナ禍においてヒットした星野源「うちで踊ろう」のようなヒットの形が可視化されなくなるのでは、と当時記載しました。

一方でビルボードジャパンでは、新年度からのチャートポリシー変更を予告していますいわゆる”歌ってみた”動画に代表されるUGC(ユーザー生成コンテンツ)を動画再生指標のカウントから除外し、『YouTube各サービスのUGC聴取および視聴回数を合算した新チャート』をスタート予定としています(『』内は下記リンク先に記載)。そうなるとUGCが量産される曲は今後、新設されるチャートでヒットが可視化されることになるわけです。Twitter指標の代替というわけではありませんが、Twitter指標を総合ソングスチャートから仮に除外したとして、「うちで踊ろう」のようなネットで実際バズを起こしている曲は新設チャートでフォロー可能となります。

ビルボードソングスチャートではTwitter指標は含まれておらず、別途Social 50というチャートを用意して歌手名のみのチャートを用意。日本では歌手名と曲名の双方でのカウントを継続するとしても、4月のエントリーで指摘したように一定数を上回った場合係数をかける、音源がどこにも解禁されていない場合はチャートに登場させない等の措置を採り、もしくはTwitter指標を除外することも検討して好いのでは…これが厳しいながらも現段階における私見です。

 

 

最後に。例示した歌手を含む特定の歌手やジャンルを貶すつもりは一切ありません。チャートが健全といえないだろう状況が発生したならば常に健全な状況に戻さないといけないため、Twitter指標にメスをいれるべきでは…これが今回のエントリー記載に至った理由です。