イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

サブスク興隆が数年前のアルバムの新装盤リリースを招いている? 個人的に疑問視する理由とは

アルバムの新装盤といえば、十数年から数十年前に登場した作品を高音質化した上でボーナストラックや映像盤を追加したものというイメージがあります。たとえば最近リリースがアナウンスされた渡辺美里『tokyo』30周年盤(11月25日発売)はその詳細が未定ながらも、オリジナルアルバムが1990年のオリコンアルバムランキングで年間4位に入ったことから当時触れた方を中心に注目を集めるかもしれません。

そんなアルバムの新装盤ですが、昨日リリースされた作品には十数年ではなく十年以内、いや5年以内の作品が複数みられています。

 

リル・ウェイン『Tha Carter V』(2018→2020)

iTunes Storeこちら。追加音源はトラック1~7。この作品の元々のリリースには紆余曲折があったとのこと(下記記事参照)。今回は2014年にリリースする予定だった形で発表するとのことゆえ、追加音源はその当時録音されたものかもしれません。

 

・ブライソン・ティラー『T R A P S O U L』(2015→2020)

iTunes Storeこちら。ファーストアルバムが5年の時を経て新装盤化。追加音源はトラック15以降となり、インタールードとアウトロを除けば注目はなんといってもザ・ウィークエンドをフィーチャーした「Rambo (Last Blood)」。米ビルボードソングスチャートで自己最高位を記録した「Don't」の13位をさすがに上回ることはないかもしれませんが、注目を集めることは間違いないでしょう。

 

 

ブライソン・ティラーの新装盤に客演したザ・ウィークエンドですが、今年リリースのアルバム『After Hours』をリリースから2週間の間に数回出し直しています。この動きはザ・ウィークエンドに限ったものではなく、リリースの数日から1ヶ月以内に新装盤をリリースすることが最早定番化し、チャートのカンフル剤として一定の成果を上げていると感じています。ただ、この動きはチャートへのハッキング的側面(以降”チャートハック”と呼びます)が強いこと、サブスク時代にあって追加料金を払わず楽しめる一方でオリジナルバージョンを所有(購入)した方にとっては不信感を抱きかねないという点において、個人的には歓迎できないと思っています。

今回取り上げた『T R A P S O U L』『Tha Carter V』においても同様の効果を狙っただろうことは想像できるものの、しかしそれぞれのオリジナルバージョンがリリースから数年経過しチャート下位にいる状況では、さすがにチャートハックだろうとは言いづらい気がします。そうなると、数年前の作品が今後どんどん新装盤化される気がするのです。米ビルボードにはまず、リリースの数日から1ヶ月以内に新装盤をリリースすることによるチャートハックの是非を議論した上で、そこにメスを入れるならば今回紹介したようなリリースから数年後の新装盤化についても議題に上げてほしいと願います。