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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

MUSIC AWARDS JAPAN 2026主要部門ノミネートについて、音楽チャート分析者の立場から考える

昨年初開催された音楽賞、MUSIC AWARDS JAPANの第2回が来月開催。そのノミネーションが昨日発表されました。

ノミネート作品発表会は動画にてアーカイブが公開。そのうち主要6部門については上記の1時間04分20秒以降で確認できます。今回は主要部門のうち4部門について、音楽チャート分析者としての見方を記します。

 

<MUSIC AWARDS JAPAN 2026 主要部門ノミネートに対する私見>

 

 

はじめに:主要部門のノミネート一覧

 

それでは、Best Global Hit from Japanおよび最優秀アジア楽曲賞を除く主要4部門について、自分の見解を記載します。

 

主要部門のノミネート傾向①:音楽チャートの結果に沿ったノミネート

MUSIC AWARDS JAPAN 2026にノミネートされるには、前段階となるエントリーに含まれることが必要となり、その対象は以下の通り。なお、初回開催時に旧譜の選出が多くなったことを踏まえ、ロングヒット作品については切り分ける形が採られています。

ABOUT VOTING | MUSIC AWARDS JAPANより

今回の主要部門のうちBest Global Hit from Japanおよび最優秀アジア楽曲賞を除く4部門について、ビルボードジャパン各種チャートにより沿った形に成ったと捉えています。

 

ビルボードジャパンにはCHART insightというサービスがあり、有料会員(月額330円)となれば100位までの動向を確認できるほか、複数週の表示期間にてデータを出すことができます(CHART insightはこちら)。そこで、MUSIC AWARDS JAPAN 2026の集計期間(2025年1月27日~2026年2月22日)と期間を同一とする各種チャートのCHART insightを表示すると、それらチャートにおける上位陣がノミネートされていることが解ります。

(なお今回は5位以内、10位以内、20位以内および40位以内等、順位を曖昧にした形で紹介します。気になる方にはCHART insight有料会員になることをお勧めします。)

 

最優秀楽曲賞は米津玄師「IRIS OUT」およびサカナクション「怪獣」(共に5位以内)、HANA「Blue Jeans」およびアイナ・ジ・エンド「革命道中」(共に10位以内)、M!LK「好きすぎて滅!」(40位以内)の5曲。今回の部門で最も大きくメディアで採り上げられていると思しき、いわば顔役といえる賞となります。

順番は前後しますが、最優秀アルバム賞はMrs. GREEN APPLE『10』(5位以内)、藤井風『Prema』(10位以内)、Various Artists『Dear Jubilee -RADWIMPS TRIBUTE-』(20位以内)、星野源『Gen』およびサザンオールスターズ『THANK YOU SO MUCH』(共に40位以内)の5作品。なおビルボードジャパンのソング/アルバムチャートは2025年度下半期以降、ロングヒット作品にてストリーミングの減算処理を実施(リカレントルール採用)。集計期間はその前後となり、チャートにはロングヒット作品が多く登場しています。

最優秀アーティスト賞はHANA、Mrs. GREEN APPLEおよび米津玄師さん(いずれも5位以内)、藤井風さん(10位以内)そしてサカナクション(20位以内)がビルボードジャパントップアーティストチャート(ソング/アルバムチャートの合算)に登場。最優秀ニュー・アーティスト賞は先述したHANAのほかCANDY TUNE(60位以内)が100位以内に入り、luv、STARGLOWおよびブランデー戦記はラジオ指標が100位以内に登場しています。

 

先述したリカレントルール適用後もソングチャートやアルバムチャートでは強い旧譜が在籍を続ける傾向にありますが、その旧譜を含むチャートで上位に登場した作品や歌手が今回ノミネートされているという状況からは、今のヒットを世界に知らしめたいという投票メンバー(会員)の意思を感じることができるといえるかもしれません。

 

主要部門のノミネート傾向②:サプライズの少なさ

先程述べたノミネート傾向もあってか、サプライズは少ないというのが率直な印象です。この点は、近年の米グラミー賞を思わせます。

投票者の構成変化は主要4部門におけるサプライズを生みにくしたとも感じています。保守的と揶揄されながら、しかしグラミー賞独特の目線がノラ・ジョーンズやサマラ・ジョイ、ジョン・バティステ等の主要部門受賞につながり、彼らをフックアップしたという側面もあるはずです。音楽チャートと比例傾向が強まった結果ともいえますが、その点においては寂しさを覚えるということを最後に書き添えておきます。

米グラミー賞はこの10年ほど、ジェンダーや人種における構成比率の改善に努めてきました。また2018年開催時までは主要4部門にて5枠だったノミネートが2019~2021年に8枠、2022~2023年には10枠に増えています(2024年以降は8枠に)。投票会員や候補枠の増加が結果的に、クオリティや専門性以上に社会的ヒットの重視につながったというのが自分の見方です。そしてその流れをMUSIC AWARDS JAPAN 2026にも感じています。

 

主要部門のノミネート傾向③:M!LK「好きすぎて滅!」候補入りから想起したオリヴィア・ディーンのグラミー受賞

最優秀楽曲賞候補のうち、集計期間内でのビルボードジャパンソングチャート順位が最も高くなかったM!LK「好きすぎて滅!」ですが、最新4月29日公開分では候補入りした5曲の中で最高位となる5位につけています。またエントリー発表後、一次投票期間を集計期間に含む3月25日~4月22日公開分のソングチャートでも、「好きすぎて滅!」が5曲の中でトップに立っています。

ここから想起したのが、今年のグラミー賞で最優秀新人賞を獲得したオリヴィア・ディーンです。米グラミー賞は2024年8月31日~2025年8月30日が作品や歌手のノミネート対象期間となり、2025年10月3~15日の投票を経て11月7日にノミネートが発表されています。

実はオリヴィア・ディーンによるアルバム『The Art Of Loving』は2025年9月26日のリリースであり、来年のグラミー賞対象作品となります。このアルバムは2025年10月11日付の米ビルボードソングチャートで8位に初登場した後ロングヒットを続け、また収録曲の「Man I Need」は同年11月1日付米ビルボードソングチャートで初のトップ10入りを果たしています。言い換えれば、米主要チャートにおけるオリヴィア・ディーンのトップ10入りは、今年のグラミー賞集計期間内には成されていないことになります。

一方、今年のグラミー賞のノミネートを決める投票期間内に、オリヴィア・ディーン『The Art Of Loving』のトップ10内初登場がアナウンスされています(現地時間の2025年10月5日に速報記事が発表)。およそ1年という対象期間内では大きくヒットしていなくとも、その後の投票期間中にヒットしたならば候補入り、そして受賞もあり得るということが、オリヴィア・ディーンの事例からみえてくるのではないかと捉えています。

 

M!LK「好きすぎて滅!」が最優秀楽曲賞を受賞するかは解りかねますが、しかし投票メンバーの投票行動如何では受賞の可能性はゼロではないだろうというのが私見です。

 

(なおM!LKは、MUSIC AWARDS JAPAN 2026のエントリー作品発表会に参加し、様々なメディアが紹介しています(「MUSIC AWARDS JAPAN」エントリー発表会に乃木坂46とM!LK登壇、塩﨑太智の心境は「うれしすぎて滅!」(イベントレポート / 写真27枚) - 音楽ナタリー(3月19日付)等参照)。この登壇が投票行動に影響したとするならば、音楽賞側は公正を保つべく今後は発表会に歌手を参加させるべきではないと考えます。)

 

おわりに:旧譜の除去、ベストアルバムの候補入り…受賞傾向の見極めが必要

主要部門以外も含めて、MUSIC AWARDS JAPAN 2026の受賞結果は1回目と傾向が少なからず異なるものと考えます。というのも、2回目では多くの部門からエントリー段階にて旧譜が除去されているため。この点は昨年、ブログにて記した上で評価しています。

たとえば前回のMUSIC AWARDS JAPANでは、最優秀アルバム賞にて2022年リリースの藤井風『LOVE ALL SERVE ALL』が受賞していますが、他の候補作品であるMrs. GREEN APPLE『ANTENNA』(2023)およびVaundy『replica』(2023)も集計期間前のリリースとなっています。その他の候補作品には米津玄師『LOST CORNER』(2024)および宇多田ヒカル『SCIENCE FICTION』(2024)がありますが、後者はベストアルバムとなります。

 

MUSIC AWARDS JAPAN 2026ではエントリー段階で旧譜が除かれていますが、一方でMrs. GREEN APPLEによるベストアルバム『10』が含まれていることを注視しています。集計期間内にヒットしたことは間違いありませんが、仮に受賞すればオリジナルアルバムの創造性が重視されない等の疑問も生まれるかもしれません。しかしノミネートは投票メンバーが決めた以上、まずは彼らの行動を分析すべきではというのが私見です。

(なおMUSIC AWARDS JAPAN 2026の集計期間内でMrs. GREEN APPLE『10』を上回り、且つ旧譜扱いではない唯一の作品がSnow Man『THE BEST 2020 - 2025』となります。ベストアルバムのうち『10』がノミネートされた一方で『THE BEST 2020 - 2025』が入っていないという結果についても、(音楽チャートの結果がすべてではないとして、しかしながら)考慮する必要はあるかもしれません。)

 

 

MUSIC AWARDS JAPAN、そして主催するCEIPA(一般社団法人カルチャー アンド エンタテインメント産業振興会)には、今回の一連の流れを必ず顧みる、そして来年以降も開催するならばその振り返りを次回以降の改善につなげるよう、心から願います。

 

 

最後に。手前味噌と言われかねませんが、今回の主要部門候補一覧については、自主的に開催している日本版グラミー賞企画でのノミネーションに近いと感じた次第です。