イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

(追記あり) デジタル解禁により首位に返り咲いたSnow Manベストアルバム、当週および今後の注目点

(※追記(4月23日4時56分):エントリーの後半、『実際、Snow Man『THE BEST 2020 - 2025』収録曲は各サブスクサービスにて順位を下げており、その点は今週火曜のエントリーにて紹介しています』と記しましたが、正しくは”今週水曜”でした。その点を訂正し、続く文章についてもそれに合わせる形で変更しています。心よりお詫び申し上げます。)

 

 

 

2020年からポッドキャストBillboard Top Hits (通称:ポッドチャート)】を発信。今回より、諸事情により毎週木曜13時に最新エピソードを公開する形に変更しています(YouTubeはわずかですが遅れます)。

今回はポッドキャストでも紹介した、最新のビルボードジャパンアルバムチャートについて採り上げます。

 

 

昨日発表されたビルボードジャパンアルバムチャート(4月16日公開分(集計期間:4月7~13日))では前週首位に初登場したJO1『BE CLASSIC』が9位に後退。Snow Man『THE BEST 2020 - 2025』がデジタル解禁に伴い総合100位以内再登場にして首位復帰を果たし、Adoさんのベストアルバム『Adoのベストアドバム』を上回っています。

Snow Manの『THE BEST 2020 - 2025』が総合首位を獲得した。

本作は、デビュー5周年記念日である2025年1月22日にリリースされたベスト・アルバムで、4月7日よりストリーミングとダウンロードの配信がスタートした。ダウンロード数7,340DLで1位、ストリーミングも1位と、2冠を達成。CDセールス数も2,007枚で15位と、好成績を収めた。

2位には、Adoのデビュー5周年を記念した『Adoのベストアドバム』が登場。CDセールス数108,767枚で1位、ダウンロード数5,810DLで2位、ストリーミング11位を記録した。なお、『ウタの歌 ONE PIECE FILM RED』は3指標の順位を伸ばして、前週51位から当週45位に上昇している。

 

最新4月16日公開分ビルボードジャパンアルバムチャートにおける、Snow Man『THE BEST 2020 - 2025』およびAdo『Adoのベストアドバム』のCHART insightは以下の通り。フィジカルセールスは黄色、ダウンロードは紫、ストリーミングは青で表示されます。ソングチャートとは異なり、アルバムチャートではフィジカルセールス指標の減算処理(一定数を上回った週間売上枚数に対して行われるもの)はありません。

Ado『Adoのベストアドバム』は10万枚を超えるフィジカルセールスをマークした一方でダウンロード2位、ストリーミング11位となっています。他方、Snow Man『THE BEST 2020 - 2025』はデジタル解禁初週にデジタル2指標を制しています。

注目はその『THE BEST 2020 - 2025』にて、累計ポイントに占めるストリーミングの割合が加算1週分のみで4分の1近くに達していること。ストリーミング数は明示されていませんが、ビルボードジャパンのチャートポリシー(集計方法)においてストリーミング指標を重視することがここからみえてきます。他方、オリコンの合算アルバムランキングでは1位と2位が逆転しており、フィジカルセールス重視の姿勢が読み取れます。

 

 

さて、ビルボードジャパンアルバムチャートの記事ではAdo『ウタの歌 ONE PIECE FILM RED』が順位を伸ばしたとあり、実際にストリーミング指標は49→44位に上昇しています。またAdoさんはソングとアルバムチャートを合算したトップアーティストチャートにて15→3位、ストリーミング指標では19→9位に上昇しています。これらから、ベストアルバム発売を機にAdoさんの聴取回数が全体的に上昇したと捉えていいでしょう。

(Ado『ウタの歌 ONE PIECE FILM RED』におけるストリーミング指標の動向は、CHART insight有料会員のみが確認できるものです。ビルボードジャパンでは有料会員のみが確認できる情報について、その出典元を明記することで紹介を可能としています。)

ビルボードジャパンアルバムチャートのストリーミング指標では、聴かれた曲がどのアルバムに収録されているかが重要となります。Adoさんの注目度自体は上昇してもベストアルバム収録曲が同作品以外から聴かれた可能性が高く(『ウタの歌 ONE PIECE FILM RED』の動向からも推測可能)、聴取先が分散したことにより『Adoのベストアドバム』のストリーミング指標が思うほど伸びなかったといえるかもしれません。

 

他方、昨秋「One」1曲のみ解禁したSnow Manにとっては今回が本格的なデジタル解禁となりながらも、解禁作品はベストアルバム1作品のみとなります。この解禁作品が限られるという状況は(新曲と共に)デジタルコンピレーションアルバムのみを公開したtimeleszを想起させ、実際に『Hello! We're timelesz』は現在でもロングヒットを続けています。この想起については、Snow Manのデジタル解禁判明時に紹介しています。

Snow Manにおいては、今後デジタルを本格解禁するかを注視する必要があります。過去作品の完全なアーカイブ化もさることながら、今後リリースされる曲がフィジカルリリース日までにデジタルでもきちんと解禁するかを見極めなければなりません。強い表現ではありますが、これはデジタルで一定の成果を上げたtimeleszがニューアルバム『FAM』でデジタル解禁を行わない姿勢であることを踏まえての指摘です。

timeleszの件は上記エントリーの後半で記していますが、Snow Manそしてtimeleszが今後きちんとデジタルを解禁しないならば、ベストアルバムやデジタルコンピレーションアルバムに絞った形でのデジタル解禁は音楽チャート施策の側面が強いと捉えられかねないのではと考えます。

 

もうひとつの注目点は、ベストアルバムにおけるストリーミング指標の推移となります。実際、Snow Man『THE BEST 2020 - 2025』収録曲は各サブスクサービスにて順位を下げており、その点は今週水曜のエントリーにて紹介しています。

エントリー記載の前日に日本のSpotifyで初となる公式リスニングパーティーを開催したSnow Manは、同日付デイリーチャートで200位以内に4曲がランクイン(うち3曲は200位以内再登場)を果たしましたが、翌日付ではいずれも200位圏外に後退しています。『THE BEST 2020 - 2025』収録曲はSpotifyでの順位が特に低い状況ですが、他サービスでも漸減傾向は変わりません。Spotifyでの動向は、徒然研究室さんがグラフ化されています。

徒然研究室さんのポストへの反応の形でも述べたのですが(→こちらから始まるスレッド参照)、社会的ヒットに至るには、そして常時安定するには曲が気になるが歌手のファンというわけではないライト層を増やすことが重要です。コアファンの熱量は重要ながらも安定しにくく、仮に安定しても他のサブスクサービスと順位が乖離することもあり尚の事、広く音楽ファンからの支持を集めることがより大切です。

その点において、リスニングパーティー(そのほとんどはStationheadを用いて実施しています)はコアファンにリーチしてもライト層を集めにくいということが、今回のSnow Manによる動向から見えたと考えます。

 

今後Snow Manがどのような施策を行いライト層にデジタル解禁を訴求していくか、そしてその結果として音楽チャートで安定していくかどうかが気になります。そして施策立案においては自分が取材協力にて参加させていただいた、つやちゃんによるコラムが参考になるはずです。