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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

ビルボードジャパンソングチャートで「breakfast」が初制覇、「Chameleon」を上回った背景を探る

最新6月25日公開分(集計期間:6月16~22日)のビルボードジャパンソングチャートでは前週首位に返り咲いた米津玄師「Plazma」が10位に後退し、Mrs. GREEN APPLE「breakfast」が登場3週目にして初の首位を獲得。2位のAぇ! group「Chameleon」に600ポイント近い差をつけています。

さて、上記記事にて掲載されたCHART insightでは総合11位までの指標構成が、各指標100位まで公開されています。

(上記は総合ソングチャートの記事より。)

Mrs. GREEN APPLE「breakfast」がフィジカルセールス48万枚以上を売り上げたAぇ! group「Chameleon」に総合ポイントで上回った要因について、記事やCHART insightから察することができます。

 

 

Mrs. GREEN APPLE「breakfast」は当週、『ダウンロード、ストリーミング、動画が微減しているが、ラジオが前週比468%と大きく飛躍』(冒頭の記事より)。ストリーミング再生回数は前週から1割以上減少した一方でラジオ指標が18→7→1位と伸び続けたことにより、総合ソングチャートにおけるポイント前週比は112.3%となっています。

このラジオ指標増加の背景を、同指標の基となるプランテックのOAチャートから確認できます。

テレビ情報番組「サン!シャイン」テーマソングとして書き下ろされ、6月4日に配信リリースされた同曲。リリースと同時に解禁されると、FM/AM問わず様々な番組でオンエアを獲得していき前々週6月2日~6月8日チャートにて14位に初登場。その後も順調にオンエアを伸ばし前週8位へと浮上しつつ、3週目を迎えた今週、大きく318%のオンエア増となり首位へと上り詰めた。

帯放送の番組/コーナーなど定期オンエア枠を主体としつつ、調査対象の83.9%となるステーションでのオンエア獲得だ。リクエストオンエアも多数確認されており、大森元貴のソロ「絵画」(48位→59位)や「ライラック」(70位→104位)、「青と夏」(-位→104位)といった既存ヒット曲に混じりながら、3週かけて波及していったかっこうだろう。Mrs.GREEN APPLEの勢いが反映されたチャートアクションだ。

(※ビルボードジャパンソングチャートのラジオ指標は、プランテックのOAチャートを基に調査対象局の聴取可能人口等を加味した上で算出されます。

「breakfast」の登場2週目におけるラジオOAチャートでの上昇は、その前の週が集計期間5日分だったことが影響していると考えられますが、当週(登場3週目)における上昇には施策、そしてラジオ業界の環境が影響しているのではと感じています。

 

「breakfast」での『帯放送の番組/コーナーなど定期オンエア枠を主体』するOA獲得は、男性アイドルやダンスボーカルグループ中心に目立ちます。5月28日公開分ではNumber_i「GOD_i」、翌週にはBE:FIRST「GRIT」がOAチャート(およびビルボードジャパンソングチャートのラジオ指標)を制する等、2025年度は男性アイドル/ダンスボーカルグループの同指標制覇が9週あり、制覇の主な原動力が定期オンエア枠の存在でした。

上位安定が難しいラジオ指標にて男性アイドルやダンスボーカルグループの曲が定期オンエア枠を主体にOAを獲得するのは、リリース週にポイントのさらなる増幅を図ることが背景にあるものとみられます。当週Mrs. GREEN APPLE「breakfast」が総合ソングチャートを制したのは、リリース週ではないものの定期オンエア枠を確保することで、新曲における複数週でのリリース施策を組んだことが背景にあるのではないでしょうか。

ラジオ指標の上昇は、集計期間中にKアリーナ横浜で開催されたライブイベント、"Mrs. GREEN APPLE presents 『CEREMONY』"の影響も考えられます。話題性の大きさや多さもまた、ラジオ指標にてMrs. GREEN APPLEが強さを発揮し続ける理由といえそうです。

 

Mrs. GREEN APPLE「breakfast」がラジオ指標を伸ばしたもうひとつの要因として、当週が聴取率調査週間明けであることが挙げられます。聴取率調査は首都圏ラジオ局にて偶数月に1週間実施されるほか、6月は関西圏および中京圏でも行われ、調査期間中には多くのラジオ局で"スペシャルウイーク"と題してゲストやプレゼントを豪華にする傾向がみられます。今回のスペシャルウイークについては下記リンクをご参照ください。

スペシャルウイーク開催時には新曲以上にこの数ヶ月以内にヒットした曲がOAされやすい傾向があることを、以前ブログにてお伝えしました。前週のラジオ指標を見る限りその傾向は薄れたといえるかもしれませんが、しかし聴取率調査週に特徴的なOA傾向があったのならば調査週間明けの当週には新曲が伸びやすくなり、Mrs. GREEN APPLE「breakfast」のさらなる増幅につながったのかもしれません。

 

 

他方、Aぇ! group「Chameleon」は当週ラジオ指標が65位に。前週は同指標100位未満であり上昇していることは間違いないものの、男性アイドルやダンスボーカルグループに目立つ帯放送の番組/コーナーなど定期オンエア枠を主体するOA獲得がこの曲であまりみられなかったことが、さらなる加点につながらなかったものと考えます。結果的に同曲は総合チャートにて、Mrs. GREEN APPLE「breakfast」の後塵を拝した形です。

しかしながら、ラジオ指標の増強がないとしてもデジタル未解禁であるためにダウンロードやストリーミングが加点されなかったことがより大きく影響しているというのが厳しくも私見。デジタル解禁はチャート対策(施策)もあるとして、しかしライト層(歌手のファンではないが曲は気になる方)へのアプローチのためには欠かせないものです。デジタル未解禁につき次週の急落も考えられ、その動向も注視する必要があります。