ビルボードジャパンは6月6日午前4時に2025年度上半期各種チャートを発表します。このブログでは上半期のトピックについて同日午前7時に公開予定ですが、それに先立ち昨日は第2四半期の各種データを公開しています(第1四半期をまとめたエントリーのリンクも掲載)。
今回はビルボードジャパンソングチャートに大きな影響を与えるストリーミング指標のうち、再生回数全体のおよそ2割を占めるSpotifyの動向を紹介。ビルボードジャパンの2025年度上半期チャートと同じ集計期間(2024年11月25日付~2025年5月25日付)における1位、50位および200位のデイリー再生回数推移をまとめています。なお2024年度上半期においては下記リンク先にて、その動向を紹介しています。
Spotifyはデイリー200位までの再生回数を可視化。それに伴い1位、50位および200位の再生回数を定点観測し、グラフを作成しています。
首位曲の推移は以下の通り。昨年度末からロゼ & ブルーノ・マーズ「APT.」が首位をキープした後、クリスマスイブにマライア・キャリー「All I Want For Christmas Is You」、クリスマス当日にback number「クリスマスソング」がその座に就いています。なおこの2日間については2023年においても同様です。
クリスマスの後、昨年12月26日付からはMrs. GREEN APPLE「ライラック」が首位に就くと、2月19日付までほぼその座をキープ。途中1月29日付および1月31日付にて同じくMrs. GREEN APPLEによる「ダーリン」に首位を譲っています。2月20日付以降はサカナクション「怪獣」が3月10日付まで首位を獲得するも、途中「ライラック」が3月2日付および3月7~9日付でその座に立ち、3月11日付以降は1ヶ月近く首位の座に就きます。
その「ライラック」からバトンを受け継いだのが、またもMrs. GREEN APPLEによる「クスシキ」であり、5月20日付までほぼその座に。一方でゴールデンウイーク期間中は5月2~4日付までMrs. GREEN APPLE「天国」「クスシキ」「ライラック」と首位が入れ替わり、5月5日付以降は「クスシキ」が再度安定。5月21日付以降はJIN「Don't Say You Love Me」が、エントリー執筆時の最新チャート(5月31日付)まで首位を続けています。
期間中にて首位曲の再生回数が50万を突破したのは1月5~19日付でのMrs. GREEN APPLE「ライラック」(1月16~17日付を除く)、および2月20~22日付におけるサカナクション「怪獣」となります。そのうち「怪獣」が2月20日付で記録した575,713回再生が、この期間におけるデイリー最高再生回数となります。
さて、日本のSpotifyにおける再生回数は平日では金曜が最も少ない一方、土日祝日は上昇する傾向にあります。金曜が飲み会等の影響で聴取機会が減り、また帰省等の大きな移動が発生する際は再生回数が大きく減ります。一方で土日祝日は行楽や運動会、店舗でのBGM利用等が再生回数の上昇に寄与していると考えられます。
50位および200位の再生回数推移をみると、年末年始が谷になっていることが解ります。加えて、50位の再生回数は伸びているわけではないと読み取れます。2024年度の上半期では50位の再生回数を『徐々に上がってきている』と紹介しましたが(2024年度ビルボードジャパン上半期チャートと同期間における、Spotify再生回数動向を読む(6月2日付)参照)、今年度は少し状況が異なります。
というのも、昨年度は『強力なストリーミングヒットの存在は全体の再生回数増加にも波及』していました(『』内は昨年度上半期の動向を紹介したエントリーより)。昨年度はCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」が通算7日間に渡りデイリー70万回再生を突破していますが、今年度は60万回再生超えがないという状況です。
Spotifyではデイリー50位までをまとめたトップ50プレイリストの影響力が小さくありません((追記あり) 新曲が初登場しやすい曜日は、”50位の壁”とは...日本におけるSpotifyデイリーチャートの特性をまとめる(2024年3月13日付)参照)。特大ヒット曲が存在することでトップ50プレイリストの利用者が増え、50位の再生回数上昇につながるのではと感じた次第です。
他方、200位の再生回数は5月18日付で初めて5万5千回台に突入し、翌日付では平日での最高再生回数を記録しています。これは5月19日にフィジカルがリリースされたNumber_i「GOD_i」の、フィジカルカップリング曲が初登場を果たしたことが大きいと捉えています。なおSpotifyのデイリーチャートにおける区切りは午前0時以降につき、5月18日付ではフライング的に初登場を果たした形です。
最後に。日本のSpotifyにおいては最近、他のサブスクサービスと順位が大きく乖離する曲が少なくありません。その点についてはこのブログにて紹介した上で、真の社会的ヒット曲を見出す方法を記載しています。
このエントリー掲載後にリリースされたJIN「Don't Say You Love Me」がSpotifyのデイリーチャートで現在首位をキープしていますが、一方で同曲の初登場時直前まで7日連続でトップ10入りしていたJINによる「Running Wild」は5月16日付で51位、翌日には64位と推移し、5月18日付以降現在に至るまで200位以内に入っていません。
#JIN「#RunningWild」の動向からはファンダムによる以下の心理が想起可能です。
— Kei (ブログ【イマオト】/ポッドキャスト/ラジオ経験者) (@Kei_radio) 2025年5月20日
・次のアルバムが出るまで推す
・再生回数が可視化されるゆえSpotifyで頑張れる
・その可視化ゆえ順位が下がればより頑張らなければと思う
・1億以上の再生回数を目指したい
・しかしアルバムが出たら再生先を移行する
JIN「Running Wild」等から想起できるファンダム(音楽チャート面を重視するコアファン)の心理については上記ポストを含むスレッドで記した上で、日本のSpotifyにおけるデイリー200位再生回数の記録更新と、一方で注視すべきことについて(5月21日付)にてまとめています。Stationheadのみならず、最近ではSpotify自身も公式リスニングパーティーを行うようになったため、今後はファンダムの熱量がより反映されると考えます。
昨年度上半期のSpotify動向をまとめたエントリーにて、『Apple Music等、他のサブスクサービスにおいても再生回数の推移は似ている (中略) Spotifyの動向は音楽チャート全体を知る意味でも重要』と記しました。しかしながら最近はファンダムの熱量が高い曲がSpotifyで強いながらも他のサブスクサービスと乖離する状況が目立っています。Spotifyと他サービスの比較、および客観的な分析が必要だというのが現時点での私見です。