イマオト - 今の音楽を追うブログ -

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MUSIC AWARDS JAPAN、演歌・歌謡曲部門の結果ならびに授賞式から感じたこと

明日および明後日にMUSIC AWARDS JAPANの授賞式が行われますが、それに先立ち昨日は最優秀演歌・歌謡曲楽曲賞授賞式(『MUSIC AWARDS JAPAN 2025 演歌・歌謡曲LIVE』)が行われました。

最優秀演歌・歌謡曲楽曲賞の初代受賞作品は山内惠介「紅の蝶」に。一方で山内さんはコンサートツアーのため授賞式には出席していません。

ただ、この不在を”異例”と捉える向きには違和感を抱きます。たしかに新設音楽賞が事前にこの日を空けておくよう歌手側に通知徹底することは必要だったでしょう。しかしながら”不在でも受賞できる”ということは、この賞が出席の有無と関わりのないものであるという透明性や公平性を示す、一種の証明と捉えていいはずです。

 

 

一方で、今回の最優秀演歌・歌謡曲楽曲賞授賞式についてはいくつかの違和感を抱いています。その点は、こちらのポストから浮かび上がってきます。

 

MUSIC AWARDS JAPAN最優秀演歌・歌謡曲楽曲賞にノミネートされたのは山内惠介「紅の蝶」のほか、MATSURI「アヴァンチュール中目黒」、SHOW-WA「君の王子様」、新浜レオン「全てあげよう」および純烈「夢みた果実」の5作品ですが、MUSIC AWARDS JAPANが発信した授賞式の写真では欠席した山内さん以外の4組はすべて2列目以下に配置されています。

この写真にて最前列に立っているのは細川たかしさんや水森かおりさん等、中堅からベテランと形容可能な歌手の方々。尤もこれはMUSIC AWARDS JAPANを主催するCEIPA(一般社団法人カルチャー アンド エンタテインメント産業振興会)の授賞式開催案内における出演者一覧とほぼ同じ並びといえるでしょう(案内はこちら)。それでも授賞式という名目ならば、ノミネート作品を輩出した歌手を前面に配置すべきではないでしょうか。

ベテラン等を優遇する問題は、『NHK紅白歌合戦』でも散見されることです。それもあってか、MUSIC AWARDS JAPANではノミネート段階前となるエントリー作品や歌手の基準を基本的に音楽チャートでのヒットに準じたのかもしれません。ただ演歌・歌謡曲部門以外のノミネートをみると、かなり前のリリース作品も目立つことは気になっています。

(かなり前のリリース作品がノミネートされている状況については、MUSIC AWARDS JAPAN、発表されたノミネート内容や経緯を踏まえて改善策を提案する(4月21日付)等にて紹介しています。)

 

また、このような問題も。

この直後にMUSIC AWARDS JAPANによる演歌・歌謡曲部門関連の発信が増えるのですが、発信の少なさに加えてそもそもこの部門を分けること(ならびに放送がNHK発ではないこと)が気になります。

MUSIC AWARDS JAPANはアジア版グラミー賞を目指すと言われていますが、本家グラミー賞ではパフォーマンスする歌手のジャンルが幅広く、単にヒットしている作品や歌手のみをフィーチャーするわけではない姿勢が見て取れます。他方MUSIC AWARDS JAPANのテレビ中継(5月22日の”Grand Ceremony”)は放送時間が2時間のみゆえ、パフォーマンスする歌手の数も限られるのはやむを得ないことかもしれません。

それでも演歌・歌謡曲は日本の音楽におけるいちジャンルである以上、Grand Ceremonyの中で紹介することは必要だと考えます。他にもテレビ中継で紹介されないだろうジャンルもあるかもしれませんが、特に演歌・歌謡曲はデジタルが強くなく、また”フィジカル複数種販売×複数回リリース”という手法が今も目立ち音楽チャートでの存在感がさらに小さくなっていることを踏まえれば、尚の事周知は必要だったでしょう。

『MUSIC AWARDS JAPAN 2025 演歌・歌謡曲LIVE』がNHK総合ではなくテレビ東京で放送されるのは、同局が大晦日にこのジャンルの恒例特番を用意しているという関係ゆえかもしれません。しかしながら長い目でみればGrand Ceremonyに組み込むこと、それができなくとも前日の授賞式に組み込むほうがより好かったのではと考えます。尤もGrand Ceremonyについては3時間以上の枠を用意することも重要ではないでしょうか。

 

最後に、気になったことを挙げます。

何よりまず、歌手側もまた尋ねるメディアも、MUSIC AWARDS JAPANが初開催となる国際音楽賞であり、受賞内容のみならず授賞式やレッドカーペット等で発信される内容が世界に伝えられるということを念頭に置くべきです。

演歌・歌謡曲界のコンサートに赴いたことのある身としては、このジャンルの歌手が自虐ネタに走ることが多いと感じています。純烈において”前立腺肥大”という話題が出たのはその性質ゆえかもしれませんが、そのネタ(のチョイス)自体もさることながら、直前には米バイデン前大統領が前立腺がんと診断されたとの報道が出たばかりであり、不謹慎だと捉えられてもおかしくないでしょう。

 

 

演歌・歌謡曲界はメディアへのアプローチのみならず、ベテランの重用や自虐ネタが面白いと捉えることについての価値観をブラッシュアップする必要があるということを、MUSIC AWARDS JAPAN最優秀演歌・歌謡曲楽曲賞授賞式から痛感した次第です。この価値観のブラッシュアップは、自虐ネタを純粋に面白いと感じるメディアや演歌・歌謡曲ファンの方々においても同様に必要なことではないかと、厳しくも強く感じています。