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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

サカナクション「怪獣」は大ヒットに至るか、それとも早々に後退か…Spotify等の動向から考える

本日午後、ビルボードジャパンによる最新ソングチャートが発表されます。533,149枚のフィジカルセールスを記録した櫻坂46「UDAGAWA GENERATION」が総合首位に近いといえますが、2月20日にデジタルリリースされたサカナクション「怪獣」がその座に就くかもしれません。

この点については、「怪獣」配信日に日本のSpotifyデイリーチャートで驚異的な数値を記録したことを受け、上記エントリーにて紹介しました。ただその後、「怪獣」の再生回数は減少に転じています。

 

 

最新2月24日(月曜祝日)付までの57日分を期間とする日本のSpotifyデイリーチャートで、期間最終日に再生回数19万以上を記録した20曲の再生回数推移をグラフ化。サカナクション「怪獣」は突出している一方、57万回超えを記録した翌日から2月23日付まで減少を続けています。

日本のSpotifyでは、50位以内に入った際はトップ50プレイリストへのリストインに伴いその後数日に渡り上昇すること("50位の壁"と形容しています)、また平日の中では金曜が最も低い一方で土日祝日に伸びること等の傾向を、上記エントリーにて紹介しています。なお3連休の場合は中日が若干減少傾向にあり、またコアファンの再生回数割合が高い曲は曜日特性をなぞるとは限りません。

 

サカナクション「怪獣」における推移は後述する表でも掲載しますが、同曲は3連休に突入しても初日および2日目においては再生回数が伸びませんでした。特に2月23日付では再生回数前日比が2割近く下がっています。

日本におけるSpotifyデイリーチャートでのサカナクション「怪獣」の動向を、他の大ヒット曲と比べてみます。

(※Mrs. GREEN APPLEライラック」の最高再生回数は2025年1月6日付における562,498回となります。)

サカナクション「怪獣」は最新2月24日付で前日より再生回数が(他の曲に比べても)大きく上昇したことから今後は伸びる可能性も考えられますが、現時点では【初動型】となります。また日本のSpotifyは一日の切り替えが午前0時以降ゆえにフラゲ的な形で初登場する傾向もあるのですが、「怪獣」ではその【フラゲ日の再生回数が極度に高い】状態です。加えて【リリース初週の強さは米津玄師(「KICK BACK」)的】といえます。

 

【初動型】そして【フラゲ日の再生回数が極度に高い】という2点についてですが、サカナクション「怪獣」がオープニングテーマを務めるテレビアニメ『チ。-地球の運動について-』が昨年10月より放送を開始しており、音源リリースまで数ヶ月あったことでリリースへの待望度が高まっていたことが背景にあると考えます。アニメを放送するNHK総合では以下の番組も用意され、尚の事期待が高まったといえるでしょう。

サカナクション、特に山口一郎さんが作品を完璧に仕上げんとする姿勢をファンは知っているからこそ、待ち望みながらも急がなかった…このことが、リリース直後の爆発的ヒットにつながったと考えるのは自然なことでしょう。

その待望度をさらに高めたのが、リリース前後に数回に渡り行われたStationheadでの配信です。StationheadはApple MusicおよびSpotify(有料会員)と連動しており、Stationheadの番組ホスト側が音源を再生すれば聴き手がチェックした分が再生回数として反映されます。

「怪獣」のリリース日は2月20日ですが、サカナクション側は最初のStationhead番組を2月17日に用意しています。「怪獣」の音源はリリースされていなかったとしても前週にリリース日がアナウンスされたこともあり、Stationheadの配信は「怪獣」リリース日の認知向上、そして待望度を高めることにつながったと捉えています。

 

もうひとつ。【リリース初週の強さは米津玄師(「KICK BACK」)的】と記したのは、リリース週におけるSpotifyの動向の他にも当てはまるゆえです。

上記は毎週土曜に掲載しているCHART insightからヒットを読むカテゴリーのエントリーにて紹介しているストリーミング表の一部ですが、米津玄師さんにおいては今年リリースしたふたつのアニメタイアップ曲が、LINE MUSICでは他のサブスクサービスより順位が高くありません。Apple Musicは月曜、Spotifyは金曜、LINE MUSICは水曜が集計期間初日とばらつきはありますが、LINE MUSICではそこまで強くはないといえます。

最新週におけるストリーミング表は2月26日公開分のビルボードジャパンソングチャートが発表された後に掲載しますが、サカナクション「怪獣」は各サブスクサービスの週間チャートにおいてSpotifyが51位(集計期間は2月14日以降)、Apple Musicが2位(2月17日以降)、そしてLINE MUSICが13位(2月19日以降)。Stationheadの影響もさることながら、紐付いていないLINE MUSICは他のサービスより高くない可能性が考えられます。

実際、LINE MUSICにおける最新2月25日付デイリーチャートでは「怪獣」が15位となり、緩やかに後退しています。LINE MUSICは他のサブスクサービスよりも若年層が多く用いる傾向があり、中堅以上の歌手の作品は順位が伸びにくいという側面も考えられます。

 

 

まずは最新2月26日公開分のビルボードジャパンソングチャートに注目ですが、サカナクション「怪獣」は仮に総合首位を獲得したとしても、近年の大ヒット曲よりピークアウトが早い可能性が考えられます。

コアファンやアニメ作品ファンの高い期待値に応えている「怪獣」は、言い換えればそれら以外のライト層やグレーゾーン、また若年層へのリーチが生まれることで再生回数が安定する可能性は十分あるものと考えます。データ分析や可視化に長けた徒然研究室さんも、ファン層やファンコミュニティの外側へのリーチの重要性を説いています。

たとえば音楽チャートでの上位進出アナウンスやその結果の発信は、ライト層やグレーゾーンへのサカナクション「怪獣」のアプローチにつながるはずです。所属レコード会社側もこのような発信を行っていますが、コアファン側が積極的に届けることもまた重要だと考えます。