3月まで記載していたこちらのエントリーを、内容を少しリニューアルした上で夏以降再開しています。先週の内容はこちら。
ビルボードジャパンソングチャートの動向を分析する者として、真の社会的ヒット曲とはロングヒットする、年間チャートで上位に進出する作品と位置付けています。週間単位で上位に入ることも素晴らしいですが、他方で所有指標が強い曲は加算2週目、また所有指標的な接触指標をなぞる曲(主にLINE MUSIC再生キャンペーン採用曲)はキャンペーン終了後に指標が急落し、総合でも大きくダウンすることが少なくありません。
この急落は毎週のようにみられます。ソングチャートのトップ10は5曲近くが毎週入れ替わり、ロングヒットするかそうでないかが極端に分かれる状況です。ロングヒット曲は主にライト層の支持が反映されるストリーミング指標が強い一方、急落する曲はコアファンとライト層との乖離が大きいのですが、これらを1週分のチャートから判断することは現状では難しいといえます。
ゆえにこのブログエントリーではチャートポリシー(集計方法)の改善提案をビルボードジャパンに対し行っているのですが、すぐに叶うことはないかもしれません。ならば、あくまで自分なりであると前置きしつつ、チャートの見方を提示したいと考えたのがエントリー復活の理由です。
<2024年12月18日公開分 ビルボードジャパンソングチャート
前週初めてトップ10入りした作品の、前週および当週におけるCHART insight>
※CHART insightの説明
[色について]
黄:フィジカルセールス
紫:ダウンロード
青:ストリーミング
黄緑:ラジオ
赤:動画再生
緑:カラオケ
濃いオレンジ:UGC (ユーザー生成コンテンツ)
(Top User Generated Songsチャートにおける獲得ポイントであり、ソングチャートには含まれません。)
ピンク:ハイブリッド指標
(BUZZ、CONTACTおよびSALESから選択可能です。)
[表示範囲について]
総合順位、および構成指標等において20位まで表示
[チャート構成比について]
累計における指標毎のポイント構成
・Number_i「HIRAKEGOMA」
12月11日公開分 3位→12月18日公開分 36位
・BALLISTIK BOYZ from EXILE TRIBE「SAY IT」
12月11日公開分 5位→12月18日公開分 100位未満
・TWS「Last Festival」
12月11日公開分 7位→12月18日公開分 100位未満
・DXTEEN「Level Up」
12月11日公開分 8位→12月18日公開分 100位未満
当週におけるストリーミング等動向表はこちら。
Number_i「HIRAKEGOMA」以外の3曲は総合100位圏外に脱落しています。加えて、2週前にフィジカルセールス指標が初加算され総合2位に浮上したSEVENTEEN「消費期限」は、前週そのフィジカルセールスが好調を維持し総合9位にとどまったものの当週は100位圏外に急落しています。
もうひとつ注目したいのが、THE RAMPAGE from EXILE TRIBE「Endless Happy-Ending」。この曲はフィジカルセールス以上にラジオ指標が牽引していたといえる作品ですが、当週はそのラジオが300位未満となり加点対象から外れています。
THE RAMPAGE from EXILE TRIBE「Endless Happy-Ending」はデジタル先行解禁時からラジオが好調であり、10月16日公開分ビルボードジャパンソングチャートで同指標6位に初登場。総合60位登場の原動力となっています。その3週後にフィジカルセールスが初加算され総合4位に再浮上していますが、ラジオは初登場から5週連続で10位以内をキープ。しかしその後、総合チャートの後を追う形で急落しています。
(上記CHART insightは無料会員が確認可能な20位までの動向ですが、ラジオ指標は5週連続でトップ10入りした後2週に渡り30位前後にとどまり、その後急落。当週は初めて300位圏外となり、加点対象から外れています。)
THE RAMPAGE from EXILE TRIBEは前フィジカルシングル「24karats GOLD GENESIS」でもラジオが安定しており、歌手側の施策に伴う一部放送局の大量OAに因るものと分析しています。実はラジオ指標において、THE RAMPAGEに限らず男性アイドルやダンスボーカルグループが主にフィジカルセールス初加算週に強くなる傾向ですが、THE RAMPAGEはその状況をさらに強固にさせているという印象です。
一方、ラジオで強い男性アイドルやダンスボーカルグループの曲がライト層の支持を獲得しているとは言い難いでしょう。ラジオは聴き手に選曲権がない代わりに、偶然触れた方がコアファンに成る可能性を持ち合わせています。支持者の増加はライト層の聴取行動が反映されやすいストリーミング指標の上昇につながる可能性があるものの、THE RAMPAGE from EXILE TRIBE「Endless Happy-Ending」では前週以降未加算の状況です。
今回紹介した曲を"ヒットの7段階"表に照合すると、THE RAMPAGE from EXILE TRIBE「Endless Happy-Ending」は第2段階、SEVENTEEN「消費期限」は第1段階といえそうです。一方でBALLISTIK BOYZ from EXILE TRIBE「SAY IT」、TWS「Last Festival」およびDXTEEN「LEVEL UP」は第1段階に達しているとは言い難いでしょう。そして5曲すべて、当週ストリーミング指標を獲得できていません。
社会的ヒット曲はストリーミング指標が牽引していることについて、先日発表された年間ソングチャートから解るでしょう(こちらで分析しています)。アイドルやダンスボーカルグループは所有指標や所有指標的な動きをなぞる接触指標(LINE MUSIC再生キャンペーンに伴うストリーミング、施策に伴うラジオ等)を加点するタイミングでライト層を如何に掴むかが、歌手の中長期な活動に大きく影響していくものと考えます。