2020年からポッドキャスト【Billboard Top Hits (通称:ポッドチャート)】を発信。毎週木曜19時に最新エピソードを公開しています(YouTubeはわずかですが遅れます)。
今回はポッドキャストでも紹介した、最新のビルボードジャパンアルバムチャートについて採り上げます。
昨日発表されたビルボードジャパンアルバムチャート(4月9日公開分(集計期間:3月31日~4月6日))では前週首位に返り咲いたMrs. GREEN APPLE『ANTENNA』が2位に後退。JO1のベストアルバム『BE CLASSIC』が首位初登場を果たしています。
【ビルボード】JO1『BE CLASSIC』CDセールス/DLの2冠で総合アルバム首位 https://t.co/Wmgu0ql7Vn
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) 2025年4月10日
JO1『BE CLASSIC』はフィジカルセールス334,084枚、ダウンロード2,276DLとなり所有2指標を制覇。またストリーミング8位を記録し、『2位とポイントを大きく離して』総合チャートを制しています(『』内は上記記事より)。次週は所有指標の後退が予想されることから、ストリーミングが安定し総合チャートで上位をキープできるかに注目です。
さて当週はふたつの再浮上作品に注目します。
なお、総合アルバムチャートの構成指標(特にストリーミング)における20位未満の順位はCHART insight有料会員のみが知り得る情報となります。ビルボードジャパンでは有料会員のみ知り得る情報の掲載を可能としており、今回はCHART insight有料会員が確認できる情報を掲載します。
まずはLANA『20』について。ストリーミングが強く、同指標を組み入れて以降のビルボードジャパンアルバムチャートで総合100位以内エントリーを続けていた同作品が当週49→11位に再浮上しています。これは『2024年末にリリースされたアルバムに、新たに7曲が追加収録されたデラックス版『20 +』がリリースされたこと』が背景にあります(『』内はビルボードジャパンアルバムチャートの記事より)。
『20 +』の収録曲数は『20』より2曲増加ながらも初お目見えが7曲あることから、『20 +』は『20』と比較的大きく異なる作品といえるかもしれません。しかしながら今回のチャートアクション、そしてチャート記事により、デラックスエディションはオリジナルバージョンの合算対象となるということが示された形です。
尤もフィジカルにおいても収録曲の異なる複数種が合算されますが、今回のLANA『20 +』がオリジナルバージョンの後発であることに注目しています。歌手側が音楽チャート動向をどこまで意識しているかは解りかねますが、しかしながら音楽チャートでは有効に作用したと捉えてよく、今後このような手法は増えるかもしれません。
他方、オリジナルバージョンの後発デラックスエディションリリースという点では共通しながら、フィジカルのみでそれを用意した竹内まりや『Precious Days』については、当週フィジカルセールス指標が100未満から11位に上昇(フィジカルセールスは6,415枚を記録)しながら、しかし総合アルバムチャートでは100位以内に再浮上していません。
竹内まりや『Precious Days』デラックスエディションについては、その発売日に上記エントリーにて自分の考えを発信しています。オリジナルバージョンとはディスク1が重複すること、デジタルを用意すれば重複分の経済的負担が抑えられることもあり尚の事その必要性を説いていますが、『Precious Days』はブログエントリー執筆段階でもデジタル未解禁のままです。
そして上記CHART insightから解るように、『Precious Days』はビルボードジャパンがストリーミング指標を組み入れた昨年12月25日公開分以降、総合100位以内に入っていません。昨年末以降、”より聴かれ続ける”作品がチャート上で強くなっていますが、その状況下でデジタルを解禁せずフィジカルにこだわることが機会損失を招いているという事態を、CHART insightから受け止めることができるのではないでしょうか。
ちなみに、こちらも大ベテランであるサザンオールスターズの『THANK YOU SO MUCH』は、ビルボードジャパンアルバムチャート登場3週目でトップ5内をキープ。ストリーミングは8→5→7位と推移したのみならず、フィジカルセールスは245,176→28,270→16,308枚と安定しています。デジタルの解禁がフィジカルセールスを毀損するわけではないということが、この作品から見て取れるはずです。
デラックスエディションやデジタル解禁に関する自分の見方はともすれば否定的過ぎるかもしれません。しかし、聴取可能な環境をきちんと用意すればライト層を獲得でき、そのライト層が所有行動に移行することでコアファンに成る可能性もあると捉えています。デジタル未解禁を貫くことはそのライト層に対して、またコアファンの経済的負担を回避しにくいという点においても、正しいやり方といえないのではと感じています。