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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

Number_i、ミセス、サザン…日本のSpotifyデイリーチャート新記録樹立の要因を探る

日本のSpotifyデイリーチャート、最新9月23日付では新記録が生まれています。

ビルボードジャパンにおける2022年度初日となる2021年11月29日付以降、日本のSpotifyデイリー200位の再生回数を定点観測したグラフがこちら。9月23日付における再生回数は52,273回となり、6月30日付で記録した51,805回を超え史上最高を更新すると共に、初の5万2千回台に到達しています。

またSpotifyの動向を紹介しているSpotify Statsは、9月23日付における200位までの再生回数合計において日本が最高を更新したと紹介しています。というわけで今回はこの要因について分析します。

 

なお、自分は日本のSpotifyデイリーチャートについてXにて日々発信しています。その際は首位曲、200位以内の初登場曲、100位以内で特筆すべき再生回数推移を示した曲を掲載しており、今回引用するポストもそれに基づき発信した内容となります。

 

 

日本におけるSpotifyデイリーチャートの特性については、3月のエントリーにてまとめています。

ひとつの特性が土日祝日が伸びるというものですが、9月23日は月曜振替休日であること、そして3連休最終日で中日よりも伸びることが今回の記録更新に影響しています。加えて、強力な作品等のリリースが大きく影響を及ぼした形です。

 

まずはNumber_i。今年元日に「GOAT」でデビューして以降存在感を放つ3名による初のアルバム『No.Ⅰ』が9月23日にリリースされています。Spotifyでは9月22日付にて、フラゲ的な形で収録曲が大量に初登場を果たしました。

この流れを受け、既発曲でアルバムに収録された作品も大きく上昇しています。

日本のSpotifyデイリーチャートは午前0時以降が1日の区切りとなる模様であり、それがいわゆるフラゲの発生理由。そして初の24時間フル加算となる9月23日付では、アルバム収録曲が大きく伸びています。

さらには「INZM」の別バージョンも初登場を果たしました。

一方では、Number_iによるアルバム未収録曲の200位以内ランクインは9月21日付以降5→4→0と推移。おそらくは以下のキャンペーン(Stationhead等)がコアファン、さらにはコアファンの中でも音楽チャートを強く意識するファンダムのアルバムへの熱量集中につながっているのかもしれません。

 

Number_i『No.Ⅰ』で初お目見えとなった曲のうち最も順位が高いのは平野紫耀さんによるソロ曲「透明になりたい」であり、この曲はVaundyさんがプロデュースしています。

そのVaundyさんによる作品も、最高再生回数を大きく伸ばしています。

Number_iのコアファンが「透明になりたい」を経てVaundyさんの作品に触れた可能性が考えられるほか、Vaundyさん自身が今週末のテレビ番組に登場することがアナウンスされており、その期待値も影響しているといえるでしょう。

 

最新9月23日付日本のSpotifyデイリーでは、Number_i「INZM - Hyper Band ver.」に加えて、Mrs. GREEN APPLE「The White Lounge - Live」が初登場を果たしています。

昨年末から今年春にかけてのライブツアーをまとめた映画『Mrs. GREEN APPLE // The White Lounge in CINEMA』は既に興行収入11億円を突破しています。

音楽ライブ作品としては異例のヒットとなったこの映画のサウンドトラックが9月23日にリリースされ、タイトルトラック(といえる)曲が初登場を果たしたという次第。なおVaundyさん同様に過去曲も上昇し、9月22日付で50位以内再エントリーを果たした「僕のこと」は翌日42位に急伸しています。

ビルボードジャパンは本日最新チャートを発表しますが、ソングチャートでストリーミング指標の基となるStreaming Songチャートの速報値ではトップ10のうちMrs. GREEN APPLEが半数を占めています。最終的な結果に注目です。

 

 

9月23日付日本のSpotifyデイリーチャートではNumber_i、VaundyさんおよびMrs. GREEN APPLEの活躍が目立ちますが、彼らだけではありません。

SNSで人気のコレサワ「元彼女のみなさまへ」の上昇も特筆すべき点ですが、back numberの過去曲がこのタイミングで再生回数新記録を打ち立てています。

これはback numberの最新曲「新しい恋人達に」が主題歌に起用されたドラマ『海のはじまり』(フジテレビ)が最終回を迎えたことの影響とみられます。ヒット曲の存在が過去曲をフックアップするという事例は、YOASOBI(「アイドル」)やCreepy Nuts(「Bling-Bang-Bang-Born」)等でもみられていました。

 

さらには最後の夏フェスと宣言し『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2024 in ひたちなか』で大トリを務めたサザンオールスターズについては、映画館でのライブビューイング効果もあってか200位以内の2曲が上昇。「TSUNAMI」は今回のライブで披露していないものの、おそらくはライブの熱狂がライト層にも伝わり、サザンオールスターズのプレイリストや代表曲を聴くという行動が生まれたものと考えます。

 

 

9月23日付日本のSpotifyデイリーチャートは200位の再生回数が新記録を樹立したのみならず、上位50曲中36曲が前週同曜日より再生回数を伸ばす結果となりました。前週(9月16日月曜)も祝日であり再生回数が高い中でこの記録が生まれたのは、Number_iのニューアルバム、Mrs. GREEN APPLEの映画等に伴う熱量がコアファンのみならずライト層にも拡がり、サブスク全体に波及したものと考えていいでしょう。