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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

(追記あり) ビルボードジャパンによる2024年度上半期チャートが本日発表…7つの注目ポイントとは

(※追記(6月12日20時13分):『おわりに』の項目で紹介した超ときめき♡宣伝部「最上級にかわいいの!」のCHART insightに誤りがあったことが判明しました。つきましては訂正された分(6月12日公開分)のCHART insightを貼付し、補足しています。)

 

 

 

ビルボードジャパンは本日午前4時、2024年度上半期各種チャートを公開しました。集計期間は2023年12月6日公開分~2024年5月29日公開分(2023年11月27日~2024年5月26日)となります。

ビルボードジャパンによる各記事のリンク、および詳細なデータについては別エントリーにて掲載しています。またこのブログエントリーでも一部記事についてポストを貼付しています。

 

今回のエントリーにて貼付しているソングチャート、アルバムチャートおよび双方を合算したトップアーティストチャートのCHART insightはいずれも2024年5月29日公開分(上半期最終週)までの最大30週分となり、CHART insightにおける順位は同日公開分のそれを指します(ただし20位未満の場合は順位が表示されません)。

CHART insightにおける色の内訳は総合が黒、ソング/アルバムチャート共通指標ではフィジカルリリースが黄色、ダウンロードが紫で、ソングチャートのみの指標ではストリーミングが青、ラジオが黄緑、動画再生が赤、カラオケが緑で表示されます。

 

それでは、ソングチャートを主体に上半期を振り返ります。

 

ビルボードジャパン2024年度上半期チャート 注目すべき項目>

 

Creepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」、動画および活用人気で圧勝

今年度上半期のソングチャートはCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」が首位に。ビルボードジャパンは毎週50位までの週間ポイントを可視化していますが、それによると「Bling-Bang-Bang-Born」は2位のtuki.「晩餐歌」に10万ポイント以上の差をつけ圧勝しています。

「Bling-Bang-Bang-Born」は1月31日公開分以降13連覇を果たすなど、現在までに通算16週首位を達成。週間1万5千ポイント超え8週を誇ります。

チャートポリシー(集計方法)が大きく変わっていない2023年度以降において、「Bling-Bang-Bang-Born」はYOASOBI「アイドル」(通算22週首位、週間1万5千ポイント超え14週を記録)とほぼ同規模の大ヒットといえます。双方に共通するのはいわゆる”活用”でのヒット。カラオケで人気のほか、”踊ってみた”に代表されるUGC(ユーザー生成コンテンツ)やTikTokのチャートでも「Bling-Bang-Bang-Born」は上半期1位を獲得しています。

その「Bling-Bang-Bang-Born」は3月20日公開分でポイントがピークに。これは同曲をオープニングテーマに起用したテレビアニメ『マッシュル-MASHLE- 神覚者候補選抜試験編』とのコラボ動画やTHE FIRST TAKEのパフォーマンス動画が3月上旬に相次いで公開されたため(下記エントリー参照)。同曲は今年度のソングチャートで唯一となる週間2万ポイント超えを、3週連続で達成しています。

「Bling-Bang-Bang-Born」は5月になってサブスクサービスでの首位の座をMrs. GREEN APPLEライラック」に譲る日も出ていますが、たとえばSpotifyのデイリーチャートでは土日に「ライラック」を逆転。ここからは学校が休みの日に子どもたちが聴く、運動会やドライブのBGMで用いられること等が想起されます。活用や動画でのヒット曲は老若男女に広く親しまれている作品であると断言してもいいでしょう。

シングルとしてフィジカルリリースされた「Bling-Bang-Bang-Born」ですが、フィジカルセールス指標はダブルAサイドのもう1曲である「二度寝」に加算されます(その「二度寝」は上半期ソングチャート43位にランクイン)。つまり「Bling-Bang-Bang-Born」は1指標未加点の状況ながら、圧倒的な強さをみせたことになるのです。

 

Mrs. GREEN APPLE、レコ大や紅白を経てトップアーティストチャート常勝へ

ソングチャートとアルバムチャートを合算したトップアーティストチャートでは、Mrs. GREEN APPLEが首位に立っています。

Mrs. GREEN APPLEの週間チャート初制覇はアルバム『ANTENNA』初登場から2週後の昨年7月26日公開分であり、前年度は通算6週首位に。そして今年度上半期では26週のうち16週を制したのみならず、昨年12月27日公開分以降はストリーミング指標で首位を継続中。上半期ソングチャートでは100位以内に14曲を送り込み、そのうち「ケセラセラ」は5位にランクインしています。

特に『NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか)の出演と前日の日本レコード大賞受賞がステップアップに大きく寄与したのみならず、メディア露出の多さや対バンライブ開催等により、Mrs. GREEN APPLEが常にライト層を拡げている(対バン相手の歌手のコアファンも魅了している)ことが読み取れます。そして新曲リリース時に関連施策をまとめたコンテンツカレンダーの用意等、話題作りに長けているのが特徴です(下記エントリー参照)。

Mrs. GREEN APPLEは1月31日公開分のトップアーティストチャートでフィジカルセールス以外の5指標を制しました(上記エントリー参照)。新曲のリリースが過去曲も刺激し、また新曲訴求時の施策の徹底によりコアファンとの間で高いエンゲージメントを維持していることも、トップアーティストチャート首位獲得の一因であることは間違いありません。

 

③ 「晩餐歌」「幾億光年」「Magnetic」…ブレイク曲の様々な上昇要因

ストリーミング時代のチャートはロングヒット曲が増えることに加えて、米ビルボードのようなリカレントルール(一定週以上ランクインした曲が一定順位を下回った場合にチャートから外れるという新陳代謝を目的としたもの)が存在しないビルボードジャパンソングチャートにおいては、昨年度以前のヒット曲が上位に進出する傾向にあります。

その状況下では集計期間中に上昇し始めた曲が不利になりかねない中、上半期ソングチャートではtuki.「晩餐歌」が2位、Omoinotake「幾億光年」が7位にランクイン。またILLIT「Magnetic」は26位に入っています。3曲はいずれもストリーミングの強さがヒットの主な要因ですが、3曲のヒットにはそれぞれ特徴があります。

動画から火が付いたtuki.「晩餐歌」は音源の公式リリース前にTikTokにてティザー(ティーザー)的な形で公開、また弾き語りバージョンをYouTubeでアップしたことで(下記エントリー参照)、作品が徐々に浸透。同曲はUGCチャートでも上半期7位にランクインしています。曲の一部を(ともすればその曲自体最終的にリリースしないとしても)公開し、好評ならば一曲に仕上げていくという手法は日本でも最近目立ち始めています。

 

Omoinotake「幾億光年」はヒット輩出率の高いTBS火曜22時枠のドラマ主題歌に起用。そのドラマ『Eye Love You』が最終回を迎えた週にテレビパフォーマンスや新たな動画公開を実施したこともあり、(下記エントリーでの予想が的中する形で)4月3日公開分では週間最高ポイント獲得且つ最高位にも到達しています。

 

ILLIT「Magnetic」はK-POPにおいてLE SSERAFIM「Perfect Night」(上半期ソングチャート19位)に次ぐヒットとなりましたが、わずか9週でこの位置に到達。TikTokチャートでは上半期6位に入ったのみならず、4月には日本のバラエティ番組に初出演したこともあり総合ソングチャートで同月ポイントがピークに。「Magnetic」は先述した2曲双方のブレイク要因(動画とテレビ)を持ち合わせているといえるのです。

今年に入りユニバーサルミュージックグループ所属歌手による音源がTikTokから一時引き上げられましたが、ILLITが所属するHYBEがユニバーサル側との契約更新時にTikTokについては使用可能な形にしていたことも「Magnetic」のヒットの一因といえます(上記エントリー参照)。後にユニバーサル側は音源提供を再開していますが、再開前の解禁は例えばテイラー・スウィフトも行っています。

 

ティザーでの使用や先行公開も含む動画を介した形、ドラマ主題歌という旧来からの形、そして動画とテレビ双方が波及した形によるヒット…3曲のアプローチは異なりながらストリーミングが獲得ポイントの過半数を占め、上半期ソングチャートで上位に至っています。

 

宇多田ヒカル、ベストアルバムのヒットで高まる存在感

アルバムチャートでは宇多田ヒカルさんによるベストアルバム『SCIENCE FICTION』が3位に入りました。

2023年度以降、ソング/アルバムチャートからルックアップ指標が廃止。ルックアップはパソコン等にCDを取り込んだ際にインターネットデータベースのGracenoteにアクセスする数を指し、CD売上枚数に対する実際の購入者数(ユニークユーザー数)やレンタル枚数の推測を可能としたもので、後者に接触的な側面もあると捉えれば2023年度以降のアルバムチャートは所有指標のみで構成される形に成ったといえます。

現在のアルバムチャートはフィジカルの売上がデジタルを大きく上回ることから主に男性アイドルやダンスボーカルグループの作品が週間チャートを制することが多く、一方で2週以上首位を獲得する作品は少ないのですが、『SCIENCE FICTION』はダウンロード指標で5連覇を達成し、総合では通算2週首位に立ちました。

(上記表はこちらのエントリーにて掲載したものをアレンジしたものです。)

宇多田ヒカル『SCIENCE FICTION』はダウンロード指標で初週1万DL超えを果たし、その後もヒットを続けています。上半期ダウンロード指標を制した『SCIENCE FICTION』がフィジカルセールスでは5位ながら総合3位に入ったことは注目すべきことであり、上半期トップアーティストチャートでの17位ランクインにもこの影響が見て取れます。

 

⑤ Number_i、アイドルやダンスボーカルグループのゲームチェンジャーに

ソングチャート週間1~5位のリストを別エントリーで掲載していますが、上位進出の翌週に高位置をキープするか急落するか、そしてロングヒットするか否かという点において、アイドルやダンスボーカルグループの作品ではその多くが後者に。その中にあって、Number_iのチャートアクションは特筆すべきと感じています。

元日デジタルリリースの「GOAT」は1月10日公開分ソングチャートで首位に初登場し、1万5千ポイント超えを達成。その後ダウンするもトップ50入りを続け、フィジカルセールス初加算となる3月13日公開分では2位に再浮上。1万5千ポイント近くまでに達した後、現在まで100位以内に在籍を続けています。またフィジカルセールス初加算週には、カップリング曲がすべて総合100位以内に登場しています(下記エントリー参照)。

TOBE発のNumber_iは、King & Prince時代にデジタルリリースした経験はありません(チャリティユニットとしてデジタルリリースはあったものの期間限定での解禁)。またTOBEにおいては他の歌手もデジタルリリースを行っていますが、そのリリース時における施策の用意等は手探り状態だったと考えられます。

作品の内容やインパクト等もヒットの要因ながら、音楽チャート等を学びヒットを目指すファンダムの熱量が他の歌手よりも圧倒的に大きいことが、たとえばStationheadリリースパーティー開催時のインパクトからも判ります(上記エントリー参照)。旧ジャニーズ事務所に所属していた歌手が事務所を離れた後にメディアに出にくくなるのではという懸念を、チャートのインパクトは打破するに十分だったといえるでしょう。

上半期では「GOAT」がソングチャートで11位に、Number_iはトップアーティストチャートで21位にランクインしたほか、下半期初週には「BON」がソングチャート2位、『No.O -ring-』がアルバムチャート首位を獲得(後者は構成2指標共に首位)。コアファンの支えも大きい上、チャートでの躍進がライト層にも伝わっていけば、アイドルやダンスボーカルグループの中でもさらに強力なチャート動向を示していくでしょう。

 

⑥ わずかながらも見えてきた、STARTO ENTERTAINMENTのデジタル解禁効果

STARTO ENTERTAINMENTとして歩み出した旧ジャニーズ事務所が前向きに変化したと示すには、”勝てるところでだけ勝てればいい”という考えからの脱却が必要だとこのブログでは述べてきました。音楽チャートにおいてはフィジカルセールス単体のランキングではなくデジタルも含めた複合指標のチャートに意欲的となること、つまりデジタルを解禁することが必要です。未だその動きは鈍いながら、しかし実績は生まれています。

STARTO ENTERTAINMENTに変わる前にデビューしたTravis Japanはアルバム『Road to A』で初めて音源のフィジカルリリースを実施。上半期アルバムチャートではそのフィジカルセールスが12位の一方でダウンロード4位、総合では8位に入ったことで、フィジカルで上回るHey! Say! JUMPKinKi Kidsに総合チャートで勝ったのみならず、フィジカル/デジタル同時制覇を果たした上半期4作品のひとつとなりました。

STARTO ENTERTAINMENT所属歌手によるデジタル解禁は、特にフィジカルシングルの初週セールスが20万以上を見込める歌手の大半で未だ行われていませんが、King & Princeはフィジカルリリースと同週にデジタル解禁した「halfmoon」にて上半期最終週のソングチャートを制しています。その彼らによるビルボードジャパンでの首位獲得を目指すという発言は、旧事務所時代ならば考えられなかったことです(下記エントリー参照)。

上半期ソングチャートにてSTARTO ENTERTAINMENT所属歌手作品の100位以内エントリーがゼロ(昨年度上半期は2曲登場)、フィジカルセールス上位20曲のうち総合ソングチャートに入ったのがデジタルでも実績を残すNumber_i「GOAT」とME:I「Click」のみという状況を踏まえれば、デジタルの規模が大きくなりフィジカルのみのヒット曲がさらに目立ちにくくなったことは明白でしょう。日本のエンタテインメント業界全体の未来を占う意味でも、事務所がデジタルに明るくなるかを注視する必要があります。

 

⑦ アイドルやダンスボーカルグループにおけるチャートアクションの二極化

デジタルに強い歌手でもすべての曲がヒットするわけではない一方でフィジカルセールスのみのランキングはある程度勝てる可能性がみえていること、またオリコンビルボードジャパンより長い歴史(ゆえの認知度)があることを踏まえ、フィジカルセールスという”勝てるところでだけ勝てればいい”という考えがSTARTO ENTERTAINMENTに限らずアイドルやダンスボーカルグループに通底していると感じることは少なくありません。

その中にあって、BE:FIRST「Masterplan」(上記エントリー参照)やKing & Prince「halfmoon」はフィジカルセールス初加算週のポイント最大化施策を採ったことも功を奏し、週間チャートを制しました。歌手側の高い意欲、そしてそれに応えるコアファンの思いが結実した形です。無論、デジタル解禁はライト層にも波及し、ライト層のコアファンへの昇華にもつながったといえるでしょう。

他方、フィジカルリリース後にさらなるフィジカルセールス上昇を目指すべく施策を実行するアイドルやダンスボーカルグループが増えている印象です。たとえばAKB48のフィジカルシングル表題曲が高セールスを獲得し総合でも上位に返り咲いていますが、他指標が伴わず施策後に急落する傾向にあります。他の歌手もアルバムチャートで同種の施策を行い、他指標との乖離等が生まれている状況です(上記エントリー群参照)。

NHK紅白歌合戦』がビルボードジャパンソングチャートを選出の参考にしていることは上記エントリーにて明白であり、AKB48(グループ)落選の背景もこれに因ると考えていいでしょう。ならば尚の事、広くデジタルでの普及を目指した施策を行うに越したことはないはずです。無論、先述したSTARTO ENTERTAINMENTをはじめサブスク未解禁のハロー!プロジェクト等がそもそもデジタルに前向きにならなければ、紅白出場有無以前にアイドル/ダンスボーカルグループ文化自体が拡がらないのではと感じています。

(なお本日、太陽とシスコムーンM-line Music所属歌手(ハロー!プロジェクトOGが中心)の音源がサブスク解禁されました(太陽とシスコムーン、M-lineアーティストの楽曲がサブスク解禁 - 音楽ナタリー(6月6日付)参照)。ハロー!プロジェクトの歌手がすべてサブスクに明るくなることを願います。)

 

ビルボードジャパンは今回の上半期アルバムチャートの記事にてこのようにまとめています。これが多くのアイドルやダンスボーカルグループにおける現状と考えれば、デジタルに前向きになり、ライト層も惹きつけロングヒットに至ることで、この状況を打破することが重要となるはずです。

また、トップ20内に登場したアーティストのうち、上半期の総合ソング・チャート“JAPAN Hot 100”にも楽曲がチャートインしているのは、宇多田ヒカルKing Gnu、Ado、LE SSERAFIMの4組にとどまった。いずれもCDセールスとダウンロードの両指標において、長期的にチャート上位を走っているアーティストである。これは、2023年の上半期と年間チャートでも見られた傾向だ。逆に、今回“JAPAN Hot 100”に登場しなかったアーティストたちはCDセールスがチャート成績を牽引している作品が多く(中にはSixTONES『THE VIBES』のように、CDでしかリリースされていない作品もある)、ファンによる熱量の高い応援がチャートアクションに繋がっていると考えられる。前述の4組のうち、3組は複数楽曲が上半期“JAPAN Hot 100”に登場している。今後、このように“Hot Albums”での好成績と“JAPAN Hot 100”における長期的なチャートアクションを両立するアーティストが増えていくのか、下半期も引き続きチャートに注目していきたい。

 

 

おわりに

ビルボードジャパンによる上半期各種チャートの発表直前、主に若年層を主体とする上半期のヒット作品やトレンドランキングが複数のメディアから登場しています。そしてここから、ビルボードジャパンソングチャートは若年層の流行を完全に反映しているわけではないのでは、と感じています。

(ミュージック部門の解説はTikTok上半期トレンド大賞2024にて掲載されています。)

たとえば超ときめき♡宣伝部「最上級にかわいいの!」はアルバム『ときめく恋と青春』(1月24日発売)収録曲として人気となり、後日フィジカルシングル化したことで最新チャートで初のトップ10入りを果たしますが、これが初の総合100位以内エントリーに。これまでは動画再生指標で長らく加点されながら、一度も総合100位以内には届きませんでした。

(上記は6月12日公開分における超ときめき♡宣伝部「最上級にかわいいの!」のCHART insight。6月5日公開分は15週目の部分が該当します。)

(※追記(6月12日20時13分):当初掲載した6月5日公開分CHART insightでは、「最上級にかわいいの!」の総合ソングチャート(Hot 100)ランクインが1週目となっていました。CHART insightでは総合100位未満ながら構成指標がひとつでも300位以内に入っていれば表示されることから、同曲は当初6月5日公開分にて初めてカウント対象になったものととして紹介しました。しかし不具合の可能性を指摘したことで6月12日夜までに訂正となり、実際は2月28日公開分以降に動画再生指標が加点されていたことが判明した次第です。それでも6月5日公開分が同曲初の総合100位以内エントリーとなっています。)

また、たとえばUGC人気を示すTop User Generated Songsチャートではニコニコ動画の人気曲が上位に進出する傾向がある一方、ニコニコ動画への投稿から時間を置いて音源がリリースされることは少なくありません。たとえばCMソングにも起用されたゆこぴ「強風オールバック」の音源リリースは昨年11月末であり、これが総合ソングチャートでのヒットに至りにくかった一因といえます(上記エントリー参照)。

この改善のためにはネットでの発信に積極的な音楽関係者、そしてそのファンも含めビルボードジャパンソングチャートをより強く意識することが重要だと感じていますが、一方でビルボードジャパン側がこの乖離を埋めるべく動くこともまた必要でしょう。チャートディレクターの礒崎誠二さんはこのことを意識しているだろうことが下記インタビュー記事から読み取れます。今後のチャートポリシー変更の有無に注目しましょう。

新たな指標という意味では、近年のトレンドである短尺動画をどうするかということは常に考えていますね。TikTokを筆頭に、Instagramのストーリーズ、YouTubeのショートと、短尺動画のサービスは数多くあり、そちらに動画ユーザーも移動しつつありますから。今後は、短尺動画に使われている楽曲のトレンドを把握することも必要だと思っています。

 

さて、一昨日発表された下半期初週のソングチャートからは男性アイドルやダンスボーカルグループの歌手側およびファンダムによるチャート意識(熱量)がさらに高まっていることを感じます。そして「拝啓、俺たちへ」が3位に初登場したコムドットメンバーによるつぶやきから、ネットを介してビルボードジャパンの名が広く知られる、且つネット音楽関係者やそのファンの意識が変化していくという可能性もまた感じています。

この変化が他ジャンルの歌手やコアファンにも生まれるならば、そしてビルボードジャパン側が時代に即して柔軟に変化し続けていくならば、ビルボードジャパンソングチャートはますます面白いものになっていくのではないでしょうか。