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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

ビルボードジャパン上半期アルバムチャート、表やCHART insightからみえてくるものとは

先週金曜にビルボードジャパンが発表した上半期チャートについて、ソングチャートを主体に分析したエントリーを同日掲載しました(下記参照)。ビルボードジャパンによる記事等をまとめた別途エントリーのリンクも貼付していますので、是非ご活用ください。なお、今回の上半期チャートは昨年度と同様、総合ソングチャートおよびトップアーティストチャートが100位まで公開されています。

また翌日にはソングチャート、今週月曜にはソングチャートとアルバムチャートを合算したトップアーティストチャートについて、あらためて分析した内容を公開しています。

今回はアルバムチャートについて、CHART insightも踏まえて分析します。記事は下記ポストのリンク先に掲載されています。

 

アルバムチャートはフィジカルセールスおよびダウンロードの所有2指標で構成されます。上半期アルバムチャートでは総合および各指標の20位までが判明していることから、その結果を表にまとめています。

2024年度上半期アルバムチャートは、総合とフィジカルセールス(表ではPSと表記)とで順位が異なりながらも、20位までの顔ぶれは変わりません。

アルバムチャートではフィジカルセールス1枚よりダウンロード1DLのウエイトが高くなります。宇多田ヒカル『SCIENCE FICTION』やTravis Japan『Road to A』はそのダウンロードに伴い、フィジカルセールス以上に総合順位が高いと以前のエントリーにて紹介しましたが、全体のダウンロード数は多くないためにフィジカルセールスに強い作品で総合20位までが占められたといえます。20作品のCHART insightを以下に掲載します。

 

<2024年度上半期ビルボードジャパンアルバムチャート

 上位20作品のCHART insight>

 ※ 1位から順に掲載。

 ※ 上半期最終週(5月29日公開分)までの最大30週分を表示。

 ※ 順位、チャートイン回数は5月29日公開分を指します(20位未満の際は未記載)。

 ※ 総合順位は黒、フィジカルセールスは黄色、ダウンロードは紫で表示。

 

さて、このエントリーでは以前より、ビルボードジャパンのアルバムチャートにはストリーミング指標の導入が必要ではないかと提案しています。これは2022年度まで構成指標に加わっていたルックアップ(パソコン等へのCD取込時にインターネットデータベースのGracenoteにアクセスする数を指す)がレンタルという接触行動も反映していたといえること、また米ビルボードでこの指標(SEA)が導入されていることが、その理由です。

Spotifyには金曜を集計期間初日とするアルバムチャート(Weekly Top Albumsチャート)が存在します。ビルボードジャパンとほぼ同時期における週間動向をみると、所有から成るチャートと接触によるそれとでは顔ぶれが大きく異なることが解ります。接触指標は所有指標のうちダウンロードにまだ近いかもしれませんが、フィジカルセールスとは大きく異なるといっていいでしょう。

このSpotifyアルバムチャートで色付け表示したMrs. GREEN APPLE『ANTENNA』は昨夏リリースの作品ですが、ビルボードジャパンの2024年度上半期アルバムチャートでは20位以内に入っていません。しかし同作品は週間50位までの推定売上枚数が可視化されるビルボードジャパンのフィジカルセールス指標にて常時50位以内に入り、売上枚数が判明可能。Mrs. GREEN APPLEは上半期のトップアーティストチャートを制しています。

週間フィジカルセールスは千枚を一度も下回らず、また年末のテレビ出演や「ライラック」リリース後に伸びていることも解ります。また上半期の振り返り時に、他歌手によるリリース後のフィジカルセールス施策が他指標との乖離を招いていることを紹介していますが、Mrs. GREEN APPLE『ANTENNA』は2023年度に17,701DL、2024年度上半期には8,649DLを売り上げており、2指標の乖離が発生しているとは言い難いでしょう。

Mrs. GREEN APPLE『ANTENNA』における上半期最終週までの30週分を示したCHART insightからは、ダウンロード指標の安定とフィジカルセールス指標の返り咲きが見て取れます。ビルボードジャパンが米ビルボードに倣い(ただし問題点はあるためそれを解消した上で)ストリーミング指標を導入したならば、『ANTENNA』の上半期トップ20入りは確実だったでしょう。加えて、接触人気が所有行動に波及しているともいえます。

 

 

アルバムチャートは所有指標のみで構成されているという前提はありますが、しかしソングチャートやトップアーティストチャートと納得度が異なるのではというのが私見であり、チャートポリシー(集計方法)の変更の議論は必要ではと考えます。後日、あらためてチャートポリシー変更提案をまとめます。