イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

(追記あり) 2024年度第2四半期、ソングチャートを中心にビルボードジャパンの各種データを掲載する

(※追記(6月3日15時28分):第2四半期までにおけるトップアーティストチャート(ソングチャートとアルバムチャートを合算したもの)の表を掲載し、簡単な解説を記しています。)

 

 

 

2024年度のビルボードジャパン各種チャートは、5月29日公開分(一部は5月30日公開分)にて第2四半期が終了しています。今回は第1四半期(下記参照)に続き、第2四半期のデータを紹介、また簡単な解説を掲載します。

 

 

まずは総合ソングチャート、1~5位の定点観測データを紹介します。

ちなみにビルボードジャパンは3月にCHART insightの仕様を変更したことにより、指標の基となるチャートが公開されているフィジカルセールス、ダウンロードおよびストリーミングを除き、各指標20位未満の順位は記事掲載分を除き可視化されなくなりましました。よってそのような場合、”(20↓)”という表記を用いています。リニューアルについては上記リンク先をご参照ください。

第2四半期においては、13週のうち11週をCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」が制覇。そのうち7週においてはポイントが1万5千を突破している状況です。他方、アイドルやダンスボーカルグループによるフィジカルセールスに強い曲(下記表も参照)も一時的に上位に進出するものの、上位進出の翌週に順位を大きく落とすことが少なくありません。

フィジカルシングルはそのセールス初加算週に総合ソングチャートでピークに到達するものの、その大半においてデジタル(特にストリーミングや動画再生といった接触指標群)が強ければポイントのさらなる増加、且つロングヒットにつながったはずです。デジタル未解禁歌手ならば尚の事です。

このブログでは、週間単位の上位進出も素晴らしいながら、ロングヒットし年間チャートにランクインすることの重要性を伝えています。Creepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」以外にも、Omoinotake「幾億光年」やtuki.「晩餐歌」といった作品も強いことは表から理解できるはずです。

 

では、ソングチャートの指標構成をみてみます。フィジカルセールスについてはその影響度が特に一時的であることを踏まえ、その他5指標(ダウンロード、ストリーミング、ラジオ、動画再生およびカラオケ)のトップ20推移をまとめています。

ラジオおよび動画再生指標における色付けは以前から行っているもので、ラジオではK-POPを除く洋楽をオレンジで、男性アイドル/ダンスボーカルグループではSTARTO ENTERTAINMENT所属歌手(エージェント契約含む)を青、STARTO ENTERTAINMENT以外ではLDHを薄青、LDH以外を緑、K-POP男性アクトを紫で表示しています。また動画再生においてはSTARTO ENTERTAINMENT所属歌手を青で表示しています。

 

ダウンロードについてはフィジカルセールス同様に所有指標ながら、フィジカルセールスよりロングヒットする傾向にあることはCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」の推移からも見て取れます(なお同曲は「二度寝」とダブルAサイドシングルとしてフィジカルリリースされましたが、フィジカルセールス指標は「二度寝」に加算されます)。一方でアイドルやダンスボーカルグループの曲もこの指標で上位進出する傾向にあります。

ソングチャート構成指標の中で影響力が最も大きいストリーミングについては、Creepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」が第2四半期で完勝。2位および3位にはtuki.「晩餐歌」、Omoinotake「幾億光年」、ILLIT「Magnetic」、Mrs. GREEN APPLEライラック」の4曲だけが入るという状況であり、「Bling-Bang-Bang-Born」の影に隠れがちながらこれら4曲が如何に強かったかがよく解ります。

 

ラジオは最もチャート推移が激しくなる指標であり、社会的ヒット曲でも上位にとどまり続けることや連覇も難しいながら、Number_iが通算3週首位を獲得、且つ「GOAT」で2連覇を達成しているのは興味深い点です。一方でK-POPを除く洋楽は、第2四半期後半において上位進出が厳しくなっています。

動画再生はストリーミングと順位が比例する傾向が高く、またデジタル未解禁が未だ多いSTARTO ENTERTAINMENT所属歌手作品も上位で安定する傾向がありますが、しかし第2四半期はフィジカルシングルのリリースが少ないこともあり上位進出は多くありません。他方、バーチャルYouTuberの星街すいせいさんやボカロPのサツキさん等の作品が複数週トップ3入りしていることから、(広義の)ネット音楽の人気も解ります。

カラオケについては3月20日公開分以降、Creepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」が連覇を続けています。この指標は入れ替わりが大きくない、新曲のランクインが多くない、且つヒップホップが強くないという状況の中、「Bling-Bang-Bang-Born」はその慣例を破った形です。一方でこの曲はYOASOBI「アイドル」やAdo「唱」と同様に”活用”でヒットしており、その活用の一環としてカラオケ(での歌唱)人気が考えられます。

ソングチャートの構成指標には含まれないものの主に接触指標群に影響を与えるTikTok、そして"踊ってみた"等に代表されるUGC(ユーザー生成コンテンツ)のチャートでも、Creepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」は強さを発揮しています。「アイドル」共々爆発的なヒットに至るには、これら”活用"でのヒットが大きな鍵となっていることが理解できるはずです。

ニコニコ動画のチャートで最上位に到達した吉田夜世「オーバーライド」やサツキ「メズマライザー」は総合ソングチャートでも100位以内に到達しています。一方でその「メズマライザー」に代表されるように、デジタル解禁がニコニコ動画での公開後となることが総合ソングチャートとの乖離につながっていると感じています。ネット音楽の発し手やファンが総合チャートを意識すれば、状況は変わるものと捉えています。

 

ビルボードジャパンが昨秋開始したGlobal Japan Songs Excl. Japanも紹介。米ビルボードによるグローバルチャートのうちGlobal 200から日本市場分を除いた上で日本の楽曲を抽出したものですが、こちらのチャートの順位変動は乏しい状況。基のGlobal 200では直近の5週において200位以内エントリーがCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」に限られています。これは停滞と呼ばれてもおかしくなく、活性化が待たれます。

 

最後にアルバムチャートについて。総合および構成2指標の最上位を掲載したこの表においては、2指標の合計売上数(ユニット数)およびユニット数におけるダウンロード数の割合を追加しました(このリニューアルについては、King & Princeデジタル解禁やアルバムチャート動向から、STARTO ENTERTAINMENT全体のデジタル解禁を提案する(5月20日付)にて紹介しています)。

フィジカル1枚と1ダウンロードでは後者のウエイトが高いながら、全体の売上はフィジカルがかなり大きく、ゆえにフィジカルに強い作品が総合首位に進出しやすい状況です。加えて最近はリリースから時間が経った作品が施策に伴いフィジカルセールス上昇、総合でも首位に立つ事例が登場していますが、デジタルとの乖離が目立っています。それらを踏まえ、ブログではストリーミング指標の導入検討を提案しています。

ほぼ毎週フィジカルセールスに強い作品が登場するゆえに総合での連覇や2週以上の首位獲得が難しいこのチャートにおいて、宇多田ヒカルさんのベストアルバム『SCIENCE FICTION』が通算2週首位、ダウンロードでは5連覇を達成している状況を興味深く感じています。

 

またトップアーティスト(Artist 100)の週間1~5位リストも掲載。こちらはソングチャートとアルバムチャートを合算したものです。

トップアーティストチャートでは上半期26週のうち16週に渡りMrs. GREEN APPLEが首位に。YOASOBIやVaundyさん、back numberも常時高位置に登場していることに加えて、「Bling-Bang-Bang-Born」のヒットを経てCreepy Nutsも上位に進出しています。他方アイドルやダンスボーカルグループはフィジカルセールス指標初加算時に上位に進出する一方で翌週には急落するという傾向が目立っています。

 

 

以上、簡潔ながら各種データについて紹介しました。他にもデータからみえてくるものが様々あるはずです。是非分析してみてください。

 

最後に。ビルボードジャパンは最新5月29日公開分のソングチャート紹介記事にて、6月7日金曜に2024年度上半期各種チャートを発表することをアナウンスしています。これまで通りの進行スケジュールが組まれるならば、午前4時に発表されるものと思われます。このブログでは午前8時までに分析エントリーを公開し、同日ポッドキャストも配信します。