イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

(追記あり) 2024年度第1四半期、ソングチャートを中心にビルボードジャパンの各種データを掲載する

(※追記(3月5日20時14分):掲載表のうち週間フィジカルセールス10万以上記録曲リストにおいて、Number_i「GOAT」が未記載となっていました。つきましては、同曲を掲載した表に差し替えています。)

(※追記(3月7日5時42分):掲載表のうちソングチャートの動画再生指標上位20曲一覧について、2月28日公開分をビルボードジャパン側が訂正していたことが3月6日までに判明したため、訂正後の表に差し替えています。なお判明した内容等についてはXのスレッドにてまとめています(最初のポストはこちら)。)

 

 

 

2024年度のビルボードジャパン各種チャートは、2月28日公開分(一部は2月29日公開分)にて第1四半期が終了しています。今回は以前のエントリー(ビルボードジャパン年間チャート発表直前、各種データを掲載する(2023年12月6日公開分)に近い形で、ソングチャートを中心に第1四半期のデータを紹介、また簡単な解説を掲載します。

なおビルボードジャパンは今年度を53週とする可能性もありますが、現時点では52週という前提にて掲載を実施します。

 

まずは総合ソングチャート、1~5位の定点観測データを紹介します。

第1四半期においては、フィジカルセールスが強い曲が総合ソングチャートを制することは1週のみにとどまっています。Ado「唱」やCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」の強さが際立っていること、特に年始は強いフィジカルシングルが多くなかったことも影響しているといえるでしょう。後者については下記データもご参照ください。

フィジカルシングルの存在はフィジカルセールス初加算週に総合ソングチャートでのピークを招きますが、その大半においてデジタル(特にストリーミングや動画再生といった接触指標群)が強ければピークはより最大化できたはずであり、デジタル未解禁歌手ならば尚の事。その点は総合ソングチャートのポイント前週比からも解るはずです。

また星野源「光の跡」や宇多田ヒカル「何色でもない花」等のリリース(デジタル/フィジカル問わず)2週目におけるポイント前週比5割未満の状況からは、歌手のコアファンがきちんと初週にチェックしていることの一方で曲自体が長く聴かれているとは言い難いのではということが推測可能です。ロングヒットしている曲は歌手側のコアファンのみならずライト層が支えていることが、構成指標の状況からも見て取れます。

 

では、ソングチャートの指標構成をみてみます。フィジカルセールスについてはその影響度が特に一時的であることを踏まえ、まとめていません。その他5指標(ダウンロード、ストリーミング、ラジオ、動画再生およびカラオケ)のトップ20推移をみてみます。

(動画再生指標の表は3月7日に差替を実施。これは2月28日公開分の訂正が確認できたことに基づきます。内容はXにてスレッド化しています(最初のポストはこちら)。)

ラジオおよび動画再生指標における色付けは以前から行っているもので、ラジオについてはK-POPを除く洋楽をオレンジで、男性アイドルにカテゴライズ可能な歌手については旧ジャニーズ事務所所属歌手を青、旧ジャニーズ事務所以外の所属においてはLDHを薄青、LDH以外を緑、K-POP男性アクトを紫で表示しています。また動画再生においては旧ジャニーズ事務所所属歌手を青で表示しています。

 

ダウンロードについてはフィジカルセールス同様に所有指標ながら、フィジカルセールスよりロングヒットする傾向にあります。特にアニメ関連曲が強いというのは年間チャート振り返りの際にも述べています。またテレビパフォーマンス効果も反映されやすく、特に年明けには『NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか)の影響が散見されます。

ソングチャート構成指標の中で影響力が最も大きいと断言可能なストリーミングについては、順位の変動が大きくはありません。しかしそこで首位を獲得した曲(Ado「唱」→YOASOBI「アイドル」→tuki.「晩餐歌」→Creepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」)はやはり社会的ヒット曲と断言可能です。

 

ラジオは最もチャート推移が激しくなる指標であり、どんな社会的ヒット曲でも上位にとどまり続けることはほぼありません。ゆえに最新2月28日公開分まで6週続けてトップ20入りし続けるCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」が如何に凄いことかがよく解るでしょう。洋楽が復調傾向にあるといえる状況も興味深く、また男性アイドル/ダンスボーカルグループの上位進出も目立ちます。

動画再生はストリーミングと順位が比例する傾向が高く、この指標で強いSnow Manがデジタルを解禁していればチャート全体が活性化するものと考えます。その中で元King & Princeの3名から成るNumber_i「GOAT」が直近まで8週連続で同指標5位以内に入っていることは注目すべきであり、同曲のフィジカルセールス指標加算後のチャートアクションは旧ジャニーズ事務所所属のデジタル未解禁歌手を刺激することでしょう。

 

カラオケについては、ソングチャート構成指標ではないものの主に接触指標群に影響を与えるTikTok、そしてUGC("踊ってみた"等に代表されるユーザー生成コンテンツ)のチャートと共に検討するのが好いと考えます。

総合ソングチャートの構成指標において最も動きが鈍いのがカラオケといえます。第1四半期においてストリーミング指標を制した曲が一度もカラオケ指標を制していないのは興味深いところですが、このカラオケのみならずTikTokUGCで共通して上位に進出する曲(Ado「唱」、YOASOBI「アイドル」およびCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」)については、"活用"に伴い社会的ヒットに至ったと捉えることが可能です。

UGCチャートはニコニコ動画での人気を可視化したチャートに登場する曲のランクインが目立ちますが、ニコニコ動画でのヒット曲が総合チャート100位以内に進出することは極めて難しいといえます。ニコニコ動画ファンに支持される曲はそのニコニコ動画の中で人気を完結しているといえるかもしれませんが、より広くヒットする可能性は十分あるものと捉えています。

 

ビルボードジャパンが昨秋開始したGlobal Japan Songs Excl. Japanも紹介。米ビルボードによるグローバルチャートのうちGlobal 200から日本市場分を除き、日本の楽曲だけを抽出したものですが、こちらのチャートの順位変動は乏しい状況です。活性化することで日本の楽曲全体が上昇すると考えれば、このチャートの世界への認知浸透は必須であり、同時に日本でグローバルチャートを浸透させることも重要といえます。

 

最後にアルバムチャートについて。総合および構成2指標の最上位を掲載しています。

フィジカル1枚と1ダウンロードでは後者のウエイトが高いながら、フィジカルとデジタル(ダウンロード)では売上全体に大差があるためフィジカルリリース作品が基本的に総合首位に進出しやすい状況です。加えて最近は、リリースから時間が経った作品が施策に伴いフィジカルセールス上昇、総合でも首位に立つという事例が登場しています。それらを踏まえ、このブログではストリーミング指標の導入検討を提案しています。

 

以上、簡潔ながら各種データについて紹介しました。他にもデータからみえてくるものが様々あります。是非分析してみてください。