なにわ男子の新しいフィジカルシングルが9月にリリースすることが明らかになりました。それに伴い、BE:FIRSTとリリースが重なることが確定しています。
#なにわ男子 が9月13日にフィジカルシングルをリリースすることがインスタライブでアナウンスされました。同日は #BEFIRST もフィジカルリリースが予定されています。複合指標から成るビルボードジャパンソングチャートの動向、注目しましょう。
— Kei (ブログ【イマオト】/ラジオ/ポッドキャスター) (@Kei_radio) 2023年7月28日
上記ツイートには多くのリアクションが寄せられていますが、今回はフィジカルシングルのセールスや、その指標が用いられる音楽チャートに関しての私見を記します。
以下の表は、ビルボードジャパンにおいて今年度フィジカルシングルが週間10万枚以上売り上げた作品、および前作が10万枚を上回ったことで次回作も超える可能性が高い作品のリストとなります。
なにわ男子の前作「Special Kiss」以降、フィジカルセールスが週間10万枚を上回る作品が出ない週はわずか一度のみとなっています(5月24日公開分ではMAZZEL「Vivid」が43,340枚でフィジカルセールスを制し、総合では4位に)。
またBE:FIRSTはこれまでのフィジカルシングルにおける初週セールスにおいて「Gifted.」が2位(2021年11月10日公開分 210,544枚)、「Bye-Good-Bye」が3位(2022年5月25日公開分 162,492枚)、「Smile Again」が2位(2023年5月3日公開分 156,306枚)となり、いずれも首位に立てていません。ただし総合ではフィジカルセールス指標初加算週に2位以上を記録しており、デジタルとの組み合わせで強いことが解ります。
ビルボードジャパンソングチャートが時代の聴かれ方に応じてチャートポリシー(集計方法)を変更し、デジタルで大ヒットする曲の勢いを中長期のみならず短期(週単位)でも可視化したことで、このチャートは社会的ヒット曲の鑑に成っています。フィジカルセールスが大事ではないというわけではないものの、フィジカルセールスはデジタルの補完的役割、デジタル人気曲の底上げという位置付けと考えていいでしょう。
昨日記した上記エントリーのような、前週および最新ソングチャートでの上位初進出曲の今後の予想は毎週記す予定ですが、フィジカルセールスだけが強い作品は翌週急落し、社会的にヒットしたと断言することはできないと捉えています。ゆえに年間チャートの上位作品等を参考にデジタルヒットのアプローチを様々講じるべきと考えます。フィジカルセールスの多さは、短期的にであれデジタルの大きな後押しになるはずです。
さて、複合指標から成る音楽チャートにはビルボードジャパンのほかにオリコンもありますが、両者はフィジカルセールスについて一定以上の週間売上枚数に係数処理を適用するか否かで大きく異なります。ビルボードジャパンは2017年度の係数処理導入およびその基準枚数を下げていったことで社会的ヒット曲の鑑に成ったといえますが、複合指標チャートの後発であるオリコンは未だ係数処理未適用のままです。
その両者の違いがはっきり示されたのが、デジタルで大ヒットを続けるYOASOBI「アイドル」における差です。ビルボードジャパンでは初登場から最新7月26日公開分まで15週連続で首位を獲得した一方、オリコンでは登場6週目、先述したMAZZEL「Vivid」がフィジカルセールスで首位に立った週のみ合算シングルランキングを制しています。
上記は集計期間を同一とするビルボードジャパンソングチャートおよびオリコン合算シングルランキングの比較表。タイアップ先のテレビアニメ『【推しの子】』共々社会的ヒットと成ったYOASOBI「アイドル」の強さが可視化されているのはビルボードジャパンであり、またフィジカルセールスが強くともデジタルが伴わない曲は翌週急落する傾向にあることも解ります。
ビルボードジャパンとオリコンとの差、オリコンでも上位安定が難しい状況を踏まえれば、フィジカルが強くともデジタルが伴わなければ真の社会的ヒット曲と呼び難いというのが私見であり、デジタル未解禁作品は尚の事それに至りにくいと考えます。ミュージックビデオを含め未だデジタル未解禁を続けるB'z「STARS」の事例を踏まえて記した内容を再掲し、音楽業界がブラッシュアップすることを願います。
ともすればベテラン歌手や大御所芸能事務所がフィジカルを優先するのは、ビルボードジャパンよりオリコンを優先するという姿勢も背景にあるかもしれません。オリコンにも複合指標から成るランキングはありますがフィジカルセールスのウエイトが高いため、首位を狙いやすいと言えます。ただ、フィジカルセールスに強い歌手が自分たちの有利な環境下だけで勝てればいいという考えがあるならば、それは違うと思うのです。
(B'zにおいてはフィジカルシングルがオリコン週間ランキングで首位記録を更新するかどうかが注目されていることも、音源の発信をフィジカルリリースのみにしたことの背景にあると考えます。しかしコアファンはデジタルが出てもフィジカルを買うものと考えられ、売上が下がったとして比較的軽微にとどまるのではないかというのが自分の見方です。)
音楽の聴かれ方が変わり、そして時代に即したビルボードジャパンの音楽チャートが支持を拡げています。ベテラン歌手や大御所芸能事務所、そしてエンタテインメント業界内部には旧態依然の”常識”にとらわれている方が少なくないかもしれませんが、そこを自省し積極的に変えられるかどうかに、音楽業界ひいては日本のエンタテインメント全体における信頼度、またグローバルでの認知度等の上昇がかかっていると考えます。
最後に。ビルボードジャパンソングチャートでロングヒットに欠かせないストリーミング指標ですが、LINE MUSIC再生キャンペーンを採用した曲の大半はキャンペーン終了後にこの指標が急落することから、採用曲についてはキャンペーン終了後の動向を踏まえて真の社会的ヒットと成るかを見極める必要があります。
この点については上記エントリー等にて、LINE MUSIC再生キャンペーンに関する改善提案を記しています。接触指標が所有指標的な急落を辿ることは本来考えにくく、そのような動向を辿る曲の人気はコアファンの域を出ないと言っても過言ではないでしょう。
重要なのは、曲が中長期的にヒットすることです。ソングチャートでの高値安定が、アルバムチャートと合算したトップアーティストチャート(Artist 100)での安定につながります。そしてトップアーティストチャートでの安定した推移は、たとえば『NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか)での出場につながりやすいということは、下記エントリー等から断言可能です。