イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

ジャニーズ事務所側の動画に対する姿勢が変化、そしてさらなる展開へ…今一度デジタルに関する希望を記す

ジャニーズ事務所所属歌手側の動画に対する姿勢が、今月大きく変化したと感じています。

 

CDTVライブ!ライブ!』(TBS)の4月3日放送回がTVerで”ノーカット”にて見逃し配信が行われたことは、注目すべき変化です(当該回は既に見逃し配信が終了しています)。というのも、これまではジャニーズ事務所所属歌手出演場面が割愛されていたため。この問題については番組サイドに取材したメディアの原稿問題も含め、昨年11月にブログにて指摘しています。

それが今月に入り状況が変化したのみならず、見逃し配信が終了した4月17日月曜には次の活用へと移行したことに驚きました。その活用とは番組のパフォーマンス映像を、期間限定ではあるもののYouTubeで公開したこと。それも各歌手の公式YouTubeアカウント、もしくはレコード会社のアカウント経由で発信したのです。

(上記キャプチャは今回配信された13組13曲の一覧を紹介するために用意したもの。期間限定公開ゆえというのも貼付した理由です。問題があれば削除いたします。)

 

今回画期的だったのは、そのパフォーマンス映像が放送局や番組のYouTubeチャンネルではなく、各歌手やレコード会社のアカウント経由での発信だったことにあります。

たとえばNHKYouTubeアカウント発だったFoorin「パプリカ」やTBS発の8LOOM「Melody」等は、ビルボードジャパンソングチャートの動画再生指標に反映されていないと断言可能な状況でした。この指標はISRC(国際標準レコーディングコード)の付番動画が加算対象となり、放送局や番組のアカウントでは付番が徹底されないがために取りこぼしが発生したと考えています。この点はブログにて以前から言及してきました。

 

実際、ジャニーズ事務所所属歌手によるテレビパフォーマンスのYouTube公開は、ビルボードジャパンソングチャートの動画再生指標に効果をもたらしたと捉えています。

最新4月26日公開分はYouTubeにて動画が公開された4月17日月曜からの1週間が集計対象であり、公開タイミングも功を奏したと言えるでしょう。今回、最新チャートにて動画再生指標300位以内にランクインしたパフォーマンス曲のCHART insightを下記に掲載。動画再生指標は赤、総合順位は黒で表示されます。またCHART insightは直近(最大)60週分を表示しています。

(なお、『CDTVライブ!ライブ!』で披露された曲の中にはCHART insightにて検索できなかった曲、もしくは検索できたものの最新チャートで動画再生指標300位未満の作品もあり、それら作品の紹介は割愛しています。)

CHART insightはビルボードジャパンにおける2014年度以降の動向を確認可能なサービスで、ソングチャートやアルバムチャート等の総合順位や構成指標の順位、最終ランクイン週におけるチャート構成比等を確認できます。

 

Snow Man「オレンジkiss」 動画再生指標38→7位

・なにわ男子「初心LOVE」 動画再生指標31→14位

Hey! Say! JUMPウィークエンダー」 動画再生指標100位未満→37位

・King & Prince「シンデレラガール」 動画再生指標76→55位

Sexy Zone「RUN」 動画再生指標300位未満→97位

ジャニーズWEST「証拠」 動画再生指標300位未満→100位未満(300位圏内)

 

今回の『CDTVライブ!ライブ!』のパフォーマンス動画を歌手側のYouTubeアカウントで公開したことは、ビルボードジャパンソングチャートの動画再生指標にも影響を与えることが証明されたと言えるかもしれません(ただしISRCが付番されているか否かについては一般的には判断できないため、純粋に公式動画の再生回数が伸びた可能性も捨てきれないことを記しておきます)。

このようなパフォーマンス動画の活用はK-POPも含む海外の歌手においては行われていましたが、日本の歌手においては動画が放送局や番組側のアカウントから大半が発信され、ISRCを獲得できていない状況が続いていました。今回、番組の見逃し配信に積極的ではなかったと言えるジャニーズ事務所側がその許可のみならず、一段高い展開を実施したことは衝撃的とすら言えるでしょう。

 

なお、なにわ男子「初心LOVE」は3週前の段階で急上昇していましたが、これは今週リリースのライブブルーレイ&DVDに収録された映像を先月公開したことに伴うもの。加えてこの映像盤からは、Instagramライブで最多投票を集めた「NANDE?!」を配信直後にYouTubeでプレミア公開。この手法も斬新であり、ジャニーズ事務所所属歌手のYouTube活用が格段に上昇していることを実感しています。

 

 

ただ一方で気になることも。最新4月26日公開分のビルボードジャパンアルバムチャートはフィジカルがミリオンセールスを記録したKing & Princeのベストアルバム『Mr.5』が制しましたが、収録曲の「シンデレラガール」が動画再生指標において大きくは伸びていません。ベストアルバム同梱の映像盤に同曲のオリジナル版ミュージックビデオは含まれておらず、YouTube視聴が減らないものと考えていたゆえ尚の事です。

最新4月26日公開分のビルボードジャパンソングチャートでは、100位以内にKing & Princeの曲は入っていません。デジタルに強い作品はアルバム初登場時にソングチャートでも存在感を示すのですが、King & Princeにおいては対照的と言えます。また先程CHART insightを紹介した6曲はいずれも総合100位未満となっています。

 

たとえば昨日のエントリーで紹介したYOASOBI「アイドル」(最新ビルボードジャパンソングチャート首位)や、Official髭男dism「Subtitle」(同6位)および米津玄師「KICK BACK」(同11位)等のロングヒット曲は接触指標群でポイント全体の3分の2以上を占めることが少なくありません。動画再生も比較的強いながら、とりわけ強力なのがストリーミング指標(CHART insightでは青で表示)です。

しかし動画再生指標に強いジャニーズ事務所所属歌手の曲はそのほとんどが今もデジタルに明るくなく、最新4月26日公開分ビルボードジャパンソングチャートで同指標20位までに9曲がランクインしながらそのいずれもがデジタル未解禁。仮にサブスクを解禁していればストリーミング指標獲得に伴い総合100位以内にランクイン、中にはロングヒットした曲もあったはずで、King & Princeもエントリーしていたことでしょう。

 

ジャニーズ事務所側が動画に注力したのは最終的にフィジカルセールスに結びつけることを目的としているのではというのが自分の見方ですが、デジタルを解禁しないことで聴き手が気軽にアクセスし接触や所有に至ることや事務所側等がデジタルで利益を獲得することができず、また所属歌手が海外にアプローチしたくともできにくいことを踏まえれば、未解禁の状況は機会損失を招いているのではと感じずにはいられません。

それでもジャニーズ事務所側における『CDTVライブ!ライブ!』の方針転換と動画の活用は、大きな一歩と考えます。デジタル解禁がフィジカルセールスに影響を及ぼしにくいと考えるゆえ、英断を願うばかりです。

今回の前向きな転換の経緯を知りたいところですが、そこに番組や放送局側の尽力があったならばそのアプローチ等について、日本のエンタテインメント業界全体を前向きに変えるという意味でもメディアや音楽業界全体に共有されるべきだと考えます。