一昨日のブログエントリーでは、最新6月12日公開分ビルボードジャパンソングチャートにおける男性アイドルやダンスボーカルグループの所有指標加算初週もしくは2週目の動向を紹介しました。その上で、接触指標、とりわけロングヒット作品において週間獲得ポイントの過半数を占めるストリーミングでの人気獲得が重要であり、すなわちライト層の人気が欠かせないと示しました。
他方、アイドルやダンスボーカルグループにおいて接触指標で人気の曲を保持する歌手は限られているといえます。K-POPでは第4世代以降の女性ダンスボーカルグループ(LE SSERAFIM、NewJeansおよびILLIT)、BTSやジョングクさんソロによる英語詞曲が該当しますが、日本の作品では「CITRUS」がロングヒットに至ったDa-iCEが筆頭でしょう。
そのDa-iCEによる「I wonder」が、最新のビルボードジャパンソングチャートで12位に上昇しています。
「I wonder」はTikTok人気を介し、ストリーミングや動画再生指標に波及。最新6月12日公開分ビルボードジャパンソングチャートのストリーミング指標(その基となるStreaming Songsチャート)では同曲が初のトップ10入りを果たしています。
今後の注目点は、「I wonder」が総合トップ10入りなるか、そして彼らが目標と公言している『NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか 以下”紅白”と表記)の初出場なるかという点にあると捉えています。目標については下記インタビュー記事にて示されています。
さて、現在リリースされている「I wonder」は厳密にはショートバージョンといえます。このことは以下の記事から判ります。
<インタビュー>Da-iCE 工藤大輝&花村想太が語る、「I wonder」に込めた工夫と“Da-iCEだから”できること https://t.co/TeXkhHoxum
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) 2024年5月20日
5月27日掲載の音楽ナタリーによるインタビュー記事(→リンク)でも『リリースする音源とライブバージョンを分けていて、ライブに来てくれた方のみが聴ける部分を作っている (中略) 2番のAメロ、Bメロ、サビがライブでしか聴けない』と明かしています。ビルボードジャパンのインタビューではライブ披露版を『本当のフル尺』と形容していることから、現行リリース版はショートバージョンと形容して差し支えないでしょう。
(ちなみに、rockinon.comのインタビュー記事も5月21日に公開(→リンク)され、ほぼ同時期に発信されています。「I wonder」がヒットしはじめたタイミングを踏まえてレコード会社や所属芸能事務所側が記事を依頼(それに合わせてインタビューを用意)したと捉えていいかもしれません)。実際、rockinon.comのインタビュー記事では”PR”の表記がみられます。)
Da-iCEがライブを大切にすることは理解できる一方、インタビュー記事に違和感を抱いたというのが私見です。距離や時間といった物理的制約もさることながら、コロナ禍が落ち着いてきたとはいえこの数年を経て密度の高いところに出向くことを好まなくなり、ライブに行かないという選択肢を採る方はいらっしゃるはずです。ちなみに自分はその双方に当てはまります。
そしてそもそもの話として、現在配信されているものがフルではないと知ったときは悪い意味で驚きました。当初リリースのバージョンが元々フルサイズでありライブにて長尺化するならば納得できます(実際にライブでの長尺化は昔からよくみられます)。現在出ている音源に”ショートバージョン”や、昔の洋楽でよくみられた”Radio Edit”、またJ-POPでみられた”TVサイズ”等を付ければ、この違和感は解消できたものと考えます。
(付け加えるならば、各メディアのインタビュアーがこの違和感を抱かなかったのか、仮に抱かなかったとしても抱く方がいらっしゃる可能性を踏まえてフルバージョンをいつリリースするのか(もしくはしないのか)等を聞くことはなかったのか等の疑問も浮かんでいます。)
ともすればこの違和感を抱く者は少数派かもしれませんが、まずははっきりとその旨を表明した次第です。そして批判と共に、この違和感を解消する意味でもフルバージョンの早期リリースを提案します。これはチャート施策としても有効に機能します。
ビルボードジャパンは米ビルボードと合算に関するチャートポリシー(集計方法)は異なり、言語のみの違いを除いて基本的には合算されないのですが、ショートバージョンとフルバージョンは合算されることが判明しています。
このチャートポリシーを踏まえ、「I wonder」のフルバージョンを最良のタイミングにてリリースすることで、合算にてトップ10ヒット(リリース前にトップ10入りしていたならばさらなる上位進出)を目指すことが可能となります。これはある意味、アイドルやダンスボーカルグループのフィジカルセールス加算に伴う上位進出と似た手法といえるかもしれません。
リリースしないであろう「I wonder」フルバージョンのリリース提案は余計なお世話でしょう。しかし、先述した違和感の解消のみならず、ビルボードジャパンソングチャートでの上位進出が彼らが目指す紅白出場の近道に成ることを踏まえての提案でもあります。
『第74回NHK紅白歌合戦』初出場組のチャートイン記録をおさらい#NHK紅白 #新しい学校のリーダーズ #Ado #ano #キタニタツヤ #すとぷり #StrayKids #SEVENTEEN #10FEET #MISAMO #MWAM #MrsGREENAPPLE https://t.co/GqwHL65ovB
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) 2023年11月13日
ここ数年はビルボードジャパンソングチャートが社会的ヒット曲の鑑となっており、紅白側もビルボードジャパンを意識していることが解ります。ビルボードジャパンは昨年も、紅白出場歌手第一弾発表直後にその初出場歌手(の大半)のチャート成績をまとめた記事を用意しており(上記ポスト内リンク先参照)、これが両者の連携を基にしたスムーズな発信と考えるのは自然なことです。
Da-iCEは「CITRUS」が2021年の日本レコード大賞受賞を機にビルボードジャパンソングチャートでトップ10入りしますが、男性アイドルやダンスボーカルグループの中で接触人気こそ突出すれど週間単位で上位進出したとは言い難いかもしれません(最高7位、トップ10入り通算3週)。所有指標の追加加算により上位を獲得、且つ接触人気に伴いロングヒットできたならば知名度はさらに上昇し、紅白選出に有利に成るものと考えます。
また、「I wonder」が主題歌に起用されたドラマ『くるり~誰が私と恋をした?~』(TBS)は今週最終回を迎えます。このタイミングで施策を投入することがチャート上でも有効に作用することは、TBS火曜ドラマの前作『Eye Love You』におけるOmoinotake「幾億光年」でも明らかであり、同曲は上半期ソングチャートでトップ10入りを果たしています。
Da-iCEはヒットを目指すべく制作段階から工夫を行っていることは明らかであり、リリース等の施策も徹底されています。であれば、様々な意見をひとまずは吸収するものだと考え、批判内容も解消可能となる提案を記した次第です。