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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

ILLIT「Magnetic」、デビューから最短で米ソングチャート100位以内に登場したことが如何に凄いのか

最新4月20日付米ビルボードソングチャートではHYBE所属のILLITによるデビューシングル、「Magnetic」が91位に初登場を果たしました。下記ポスト内の画像をタップ/クリックし登場する記事によれば、「Magnetic」はストリーミングが前週比1%アップの620万、ラジオが同43%アップの428,000を記録しています(ダウンロードについては記事未掲載)。

今回の記録が如何に凄いかは、Kstyleのニュースから解ります。

これでILLITは、デビュー曲がビルボードのメインソングチャートにランクインした最初のK-POPグループになった。3月25日にデビューした彼女たちは、ビルボード「HOT100」に最も早くランクインしたK-POPアーティストになった。

ILLIT「Magnetic」は前週4月13日付米ビルボードバブリングアンダーホット100(→こちら)で2位に初登場。このチャートはソングチャート100位までに入らなかった作品を測るものであり、「Magnetic」は実質102位となっていました。3月25日月曜にリリースされたミニアルバム『Super Real Me』収録曲は初の1週間フル加算にてこの位置につけ、翌週には総合100位以内へと躍り出ました。

さらに凄いのは、このILLIT「Magnetic」が、ここ数週におけるソングチャート大挙初登場の中で耐え続けてきたことです。

 

 

ビルボードソングチャートはストリーミング(動画再生を含む)、ダウンロード(フィジカルセールスを含む)およびラジオの3指標で構成されています。

ストリーミングおよびダウンロードというデジタル2指標は初動が大きい一方でダウンロードは翌週以降急落する傾向にあります(ただし施策が行われやすいのもこの指標です)。またラジオは徐々に上昇し、ピークに至るのが最も遅くなります。ダウンロードの瞬間風速を活かしつつ、ストリーミングからラジオへとヒットの流れが続き、双方とも高位置につけることが大ヒットに至る大まかな道筋といえます。

ただし、ソングチャートにおいてはダウンロードを用いた施策以外にも瞬間風速が発生します。それはストリーミングに強いアルバムの初登場により、ソングチャートにもストリーミングの初動が活きる形で収録曲が大挙初登場に至るということです。

 

上記は2024年度における米ビルボードアルバムチャート、1位および2位の一覧。米ビルボードビルボードジャパンと異なり、ストリーミングのアルバム換算分であるSEAや単曲ダウンロードのアルバム換算分であるTEAが組み込まれていますが、この直近3週においてはそのSEAが10万を超える作品が初登場および2週連続でランクイン。そしてこの3週こそ、ILLIT「Magnetic」の登場と重なるのです。

 

4月6日付以降の米ビルボードアルバムチャート上位初登場作品および同日付ソングチャートでの初登場曲一覧は以下の通り。

・4月6日付 フューチャー & メトロ・ブーミン『We Don't Trust You』

 アルバムチャート首位→ソングチャート17曲(収録曲すべて)ランクイン

・4月13日付 ビヨンセ『Cowboy Carter』

 アルバムチャート首位→ソングチャート23曲ランクイン

・4月20日付 J. コール『Might Delete Later』

 アルバムチャート2位→ソングチャート12曲(収録曲すべて)ランクイン

さらに最新4月20日付では、フューチャー & メトロ・ブーミン『We Don't Trust You』収録曲が5曲、ビヨンセ『Cowboy Carter』収録曲が9曲、ソングチャートで100位以内に残っています。J. コール『Might Delete Later』収録曲を含めれば4分の1強がこの3週以内にリリースされたアルバムの収録曲で占められたというわけです。

 

この現象は少なくともあと2週続くとみられます。来週4月27日付ではフューチャー & メトロ・ブーミンがまたもリリースした25曲収録のアルバム『We Still Don't Trust You』の初登場が見込まれ、さらに再来週5月4日付ではテイラー・スウィフト『The Tortured Poets Department』が初登場予定。後者は16曲に加えて、4つのバージョン毎に異なる1曲ずつが収められています。

テイラー・スウィフトのオリジナルアルバムにおける前作『Midnights』では、アルバムが初登場した2022年11月5日付の米ビルボードソングチャートにて収録曲がトップ10を独占するという初の記録を達成しています。テイラーほど施策の実施に意欲的な歌手はいないことからも、最新アルバム『The Tortured Poets Department』収録曲のソングチャート上位寡占は十分考えられるのです。

 

(なお、ストリーミング(SEA)に強いアルバムの収録曲がソングチャートに多数初登場を果たしても翌週に急落することが大半であり、短期滞在にとどまる曲はヒットしたとは言い難いというのが私見。またソングチャートランクイン数の多さはストリーミング時代におけるチャートポリシー(集計方法)の変遷が大きく影響していることも考慮する必要があると捉えています。ゆえにチャートの推移や詳細を確認する必要があります。)

 

 

アルバムチャート初登場時におけるアルバム収録曲のソングチャート大量エントリーは、長期に渡りチャートに滞在する曲にとってはおそろしいことです。米ビルボードソングチャートには新陳代謝を目的とするリカレントルール(登場21週目以降に51位以下になった場合、また53週目以降に26位以下になった場合にチャートから外れるというもの)があり、直近3週においても昨年を代表する曲が複数外れています。

無論、リカレントルールに抵触しなくとも4月以降は大量の初登場に押される形でチャートを外れる曲が存在しますが、ソングチャートが大きく変動するこの4月にILLIT「Magnetic」は耐え続け、最新4月20日付にて米ビルボードソングチャート初のエントリーを果たしたわけです。この曲が、そしてILLITが如何に凄いかがよく解るでしょう。

 

 

ILLIT「Magnetic」は次週4月27日付米ビルボードソングチャートで100位以内を割り込むかもしれませんが、5月に入り再浮上する可能性も考えられます。その動向に注目し、世界的なヒットに至るかを注視していきます。