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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

米ビルボードソングチャート、次週以降大きく動く可能性…ロングヒット曲が迎える正念場について

次週以降の米ビルボードソングチャートが大きく動くことになりそうです。それは同時に、中長期的にランクインしている曲にとってはこの1ヶ月程度が正念場であることも示しています。

というのも次週以降、米では大ヒットが見込めるアルバムが毎週のように登場するのです。

上記は日本時間の10月17日火曜早朝に発表予定となる、10月21日付米ビルボードソングチャートを予想した方によるポスト。ドレイクがトップ10内に7曲、41位までに23曲を送り込むとしています。これは集計期間初日にあたる10月6日金曜、ドレイクがニューアルバム『For All The Dogs』をリリースしたことが理由です。

ビルボードアルバムチャートはデジタル/フィジカルのセールスに加えて、ストリーミング(動画再生を含む)のアルバム換算分(SEA)および単曲ダウンロードのアルバム換算分(TEA)を含めたチャートであり、ドレイク『For All The Dogs』は初週40万ユニット超えにて10月21日付チャートでの首位初登場が予想されています。そしてSEAやTEAはソングチャートにも波及し、同日付ソングチャートで大量エントリーが見込まれるのです。

ドレイクについては前作で21サヴェージとのコラボアルバムとなる『Her Loss』においても、昨年11月19日付ソングチャート(→こちら)にて8曲をトップ10内に初登場で送り込んでいます。

 

ソングチャートでの大量エントリーはその後も予想されます。

バッド・バニーは一昨日、22曲入りのニューアルバム『Nadie Sabe Lo Que Va a Pasar Mañana』をリリース。前作『Un Verano Sin Ti』は2022年度の米ビルボードアルバムチャートを制していますが、その次作となることから高い初動が見込まれるものと考えます。前作のアルバムチャート初登場時、昨年5月21日付のソングチャート(→こちら)ではトップ10内に4曲を初登場にて送り込んでいます。

アルバム『Nadie Sabe Lo Que Va a Pasar Mañana』収録の22曲は米のSpotifyデイリーチャートにおいて、最新10月13日付(10月28日付米ビルボードソングチャートの集計期間初日)にて30位までに全曲が登場。グローバルのSpotifyデイリーチャートではアルバム収録曲の全再生回数が、初登場作品では今年最多を更新しています。そしてこの結果を踏まえ、10月28日付米ビルボードソングチャートでは以下の予想が行われています。

 

また2週後の10月27日にはテイラー・スウィフト『1989 (Taylor's Version)』がリリース。初期6作品の原盤権をコントロールできない状況に伴い順不同で”Taylor's Version”をリリースしている彼女の、大ヒット曲「Shake It Off」等を網羅した2014年作品の再録盤となります。前回の再録盤『Speak Now (Taylor's Version)』においては初登場時、7月22日付ソングチャート(→こちら)では1曲がトップ10内に初登場しています。

さらにはジョングクによる初のソロアルバム『Golden』が11月3日にリリース。先行曲でラトーをフィーチャーした「Seven」が首位、そして最新チャートにてジャック・ハーロウを迎えた「3D」が5位に初登場しており、動向に注目です。彼が属するBTSの現時点での最後のオリジナルアルバム『Be』が初登場した2020年12月5日付のソングチャート(→こちら)では、「Life Goes On」がこちらも初登場で制しています。

 

これら作品はアルバムチャート上位初登場のタイミングでソングチャートでも複数曲、特にドレイクにおいては全曲がソングチャート100位以内に入るものと思われます。となると、冒頭で記したように中長期的にランクインしている曲にとってはこの状況下が正念場となるのです。というのも米ビルボードソングチャートには新陳代謝を目的としたリカレントルールがあり、新曲エントリーに伴い適用される可能性があります。

リカレントルールとは登場21週目以降に51位以下になった場合、また53週目以降に26位以下になった場合にチャートから外れるというもの。冒頭のチャート予想ポストにてレマ & セレーナ・ゴメス「Calm Down」の左側に順位ではなく”RC”と書かれているのですが、これはリカレント(Recurrent)を指し、予想が合えば「Calm Down」は外れることになります。4ヶ月以上ランクインしている曲はここから先が正念場となるのです。

(なお、クリスマスシーズンで関連曲が上昇したことにより一定順位を下回った場合はクリスマス関連曲の一掃後に復帰するため、リカレントルールは適用されません。)

ただし、アルバムチャート初登場のタイミングでソングチャートでも上位に初登場する収録曲についてはその多くが翌週以降に急落する可能性が高いことから、登場2週目以降の状況をみて真の社会的ヒットに成る曲はどれかを見極めていく必要があります。

 

先日、チャートが凪の状態なのは面白くない的なつぶやきを拝見しました。それが全く理解できないわけではないとして、重要なのはアルバム収録曲の大挙エントリー後の動向等、音楽チャートの仕組みを理解することです。普段から凪でない状態を望むのならば、米ビルボードに対して説得力を有するチャートポリシー(集計方法)提案を示すことこそ必要でしょう。