イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

(追記あり) Number_iがテレビ出演へ…アイドル/ダンスボーカルグループのライト層獲得について提案する

(※追記(10時04分):Number_i「GOAT」のフィジカル(CD)については発売日当日の到着が可能となる予約販売期間は終了しましたが、通常盤は現在も購入可能となっています。つきましてはその内容を追記しました。当初の記載が不十分だったことについてお詫びするとともに、Xにてご指摘くださった方に対しこの場を借りて感謝申し上げます。)

 

 

 

先日のエントリーに多くの反響をいただきました。この場を借りて感謝申し上げます。

今回はこの続きといえる内容です。

 

 

Number_i「GOAT」は3月6日水曜にフィジカルリリース。TOBEの公式ショップ限定での発売となりますが、ビルボードジャパンソングチャートのフィジカルセールス指標には反映されます。同指標初加算週となる3月13日公開分(集計期間:3月4~10日)のチャートにて「GOAT」がどの位置に登場するかに注目すると共に、その前後の週の動向を注視する必要があります。

 

さて、フィジカルセールスは所有指標の中でも特にコアファン向けのものであり、ロングヒット作品により欠かせないのはストリーミング指標であることは間違いありません。ビルボードジャパンによるCHART insightでは、この指標は青で表示されます。

特に昨年を代表するYOASOBI「アイドル」やAdo「唱」はカラオケ指標(CHART insightでは緑で表示)に加えて、ソングチャートの対象外ながら接触指標群に影響を与えるTop User Generated Songs、TikTok Weekly Top 20チャートで上位ランクインを続けており、”活用”でのヒットがストリーミングにも波及することで特大ヒットにつながっています。この動きはCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」にも表れています。

(なお、Creepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」は現時点で加算対象となる動画がなく、動画再生指標未加算となっています(同指標はCHART insightにて赤で表示)。未加算の理由についてはテレビ局等による音楽関連動画が音楽チャートに反映されない理由、そして改善提案について(2月9日付)をご参照ください。)

 

特大ヒットに至るには活用が近年のトレンドながら、まずはロングヒットに至るべくストリーミングにて上位を維持することが重要です。そのためにはコアファンが聴くことも必要ですが、歌手のファンというわけではないものの曲が気になるという”ライト層”を如何に獲得してくかが重要になることは間違いありません。そのライト層を惹きつけるためにどうすべきか、考えてみます。

 

なお今回の提案はNumber_i「GOAT」に限らず、他の歌手においても当てはまる部分が少なくありません。ただし、Number_iは今週末に初のテレビ出演を果たすことから、そのタイミングでできることもあるものと考えます。

 

 

ライト層を惹き付ける施策、1つ目は主に音楽ファンを対象とする方法です。たとえばリミックスの用意や、プレイリストの作成は重要と考えます。

 

上記コラムにて「GOAT」の音楽性について多角的に分析されています。その中に登場するミッシー・エリオット「Get Ur Freak On」やジャージークラブというポイントを活かし、ダメ元でもNumber_i側がミッシーに客演参加を打診してみるというのも有りかもしれません。メンバーの平野紫耀さんが先月スウェイ・リーと”再会”したこともあり(平野さんのInstagramこちら)、ラッパーとの交流があることも提案の理由です。

Number_i「GOAT」は米ビルボードによるグローバルチャートで1週ながら200位以内に登場した実績があります。ビルボードジャパンソングチャートとは異なりオリジナル版とリミックス等別バージョンが合算されることを踏まえ、ミッシー・エリオット招聘版をリリースすればこのチャートへの復帰もあるかもしれません。世界からの注目度を高めることで音楽性を深掘りする方が増え、オリジナル版への注目度も高まるでしょう。

 

またジャージークラブについては上記コラム等で紹介されているように、たとえばNewJeans「Ditto」も(厳密にはボルチモアクラブを下敷きとしながら)取り入れています。NewJeansは昨年の『NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか)に出場し、その後YOASOBI共々NHKで特集が組まれたたこともあり(下記エントリー参照)、昨年末以降(再度)ヒット。それを機に、ジャージークラブにも注目が集まった可能性があります。

そのタイミングで、たとえばNumber_i側が「GOAT」の影響源となった曲、また「GOAT」を含むジャージークラブ採用曲を集めたプレイリストを、公式として用意したならばよかったかもしれません。今からでも遅くはなく、また公式のみならずコアファンの方が率先して作るのも有効でしょう。プレイリストに光が当たることで音楽ファンの中からNumber_iを意識して聴く方が出現するかもしれません。

なお新曲を軸にしたプレイリスト公開はBE:FIRSTがよく用いているほか、このブログでは彼らの「Mainstream」等を踏まえプレイリストを作成しています。

 

 

ライト層を惹き付ける施策、2つ目はアイドルファンの関心を高めるためのフィジカルを用いた手法です。

実はNumber_i「GOAT」をはじめ、TOBE所属歌手によるこれまでのシングルはいずれもTOBE OFFICIAL STORE(→こちら)の販売に限られています。ファンクラブ限定ではないためビルボードジャパンソングチャートの加算対象となりますが、TOBE OFFICIAL STORE以外のネットショップや実店舗での取扱はありません。そして「GOAT」においても、既にフィジカル(CD)の予約販売は終了しています。

(※追記:Number_i「GOAT」のフィジカル(CD)については発売日当日の到着が可能となる予約販売期間は終了しましたが、通常盤は現在も購入可能となっています(リンク先はこちら)。当初の記載が不十分だったことについて、お詫び申し上げます。)

 

ジャニーズ事務所に所属している歌手の作品はその多くが未だデジタルを解禁していないため、音楽に触れるべくフィジカルの購入を積極的に行うアイドルファンは少なくないでしょう。その方々にとって、旧ジャニーズ事務所から移籍した歌手の作品がフィジカルリリースされていない、リリースされていても購入にハードルがある場合、ともすれば音源が半ば存在しないようにみえるのではないかと感じることがあります。

(これは、ストリーミング時代において”デジタルを解禁していない歌手は存在しないといえる”という、このブログで提示してきたこととは全く逆ながら、似た考え方といえます。デジタルもフィジカルも障壁なく手に入れられる(所有できる/接触できる)ことが最善と考えますが、TOBEの手段は米ビルボードソングチャート的な対応のように感じています。米チャートでは、歌手のホームページでの販売分も加算されるのです。)

フィジカルが手に入りにくいならば音源が存在しないようにみえるという仮定は、ともすれば大袈裟かもしれません。ただその考えがユーザー側に宿っているならば、それを解くことが必要です。

 

そのために、デジタルには障壁がないことをきちんと意識させることが重要です。たとえばTOBE所属タレントが各デジタルプラットフォームにおける聴取/購入方法を動画付で解説することはニーズがあると考えます。この点は先日の演歌歌謡曲の取組を紹介したエントリーにて提案したことに共通します。

たとえば『伊東家の食卓』で活躍した三宅健さんがレクチャーすることも有りかもしれません。実際、三宅さんは自身のYouTubeチャンネルにて番組の流れを受けた企画を開始しており、紹介には最適だと感じています。無論、レクチャー動画はTOBE以外の歌手においても有効であり、デジタル解説動画が様々な歌手のファンに流布されることでTOBE側の印象も高まるはずです。

 

そしてフィジカルについてですが、購入環境先の増加が戦略面で難しいならば、レンタル店舗での特別仕様盤の用意を提案します。実際、レンタル限定盤としてリリースされた作品は少なくなく、三宅健さんが所属していたV6は映像盤の音源をレンタル限定で用意していました(下記リンク先参照)。V6が所属していたavexからは、安室奈美恵さんのライブ音源や三浦大知さんのミックスCDもレンタル限定で登場しています。

(勝手ながらブログエントリーを紹介させていただきました。問題があれば削除いたします。)

レンタル実店舗は減っていますがゼロではなく、ネットレンタルも存在します。そして実店舗では旧ジャニーズ事務所所属歌手による作品の多くが在庫を用意している状況です。ならば彼らの作品が目的で来店したアイドルファンの方に、レンタル限定盤を置くことで訴求することができるのではと考えます。

TOBE所属歌手が一同に介した公演が来月東京ドームで開催されます。Number_i「GOAT」単独でレンタル限定盤を用意するのもひとつの方法ですが、ドーム公演のタイミングで所蔵歌手全組のスプリットシングル的な形で(シングル曲のみまとめたものを)用意することで、公演のメディア報道も相まって話題性を高めることができるでしょう。先述したレクチャー動画を収録した映像盤を同梱するのも一案と考えます。

 

 

ライト層を惹き付ける施策、最後はメディアの活用です。そしてメディア側の改善も必要と考えます。

 

『Venue101』(NHK総合)については放送直後、ほとんどの曲にてパフォーマンス映像がYouTubeに用意されます。期間限定であること(NHKプラスへの誘導を主目的とするゆえと考えます)、短尺版であること、さらにはNHK MUSICというアカウント発の動画は再生回数が多くともビルボードジャパンソングチャートの動画再生指標に反映されないこと等気になる点は多いのですが、SNS上での話題活用に用いることは可能です。

(ただしテレビパフォーマンス映像の最善は、4つの条件が揃うことです。この条件については、下記エントリーにて紹介しています。)

 

また、Number_iの平野紫耀さんにおいてはCM出演が相次ぎ話題となっています。その際、CM自体、そしてメディアの報道においては好いところを評価しながら、違和感にはきちんと冷静に指摘することを勧めます。

平野紫耀さんが出演したCMにおいては、上記サントリーそしてデジタルハリウッド大学双方のYouTubeチャンネルにて公開された動画にNumber_iのクレジットはありません。他方商品等のホームページではNumber_i所属と紹介されていることに違和感を抱きます。

たとえば動画の概要欄に”#Number_i”が用意されることで、そこから(ハッシュタグが貼付された)他の動画への移行が可能です(移行先の結果はこちら)。ゆえに機会損失というのが厳しくも私見です。またCM出演の報道の大半にて、所属グループ名がアナウンスされていなかったとも伺っており、改善は必要と考えます。

報道やYouTube概要欄でのグループ名未記載(後者でのハッシュタグ掲載も含む)はNumber_iに限らず、どの芸能事務所に所属しているどの歌手でも行われているのかもしれませんが、仮に正式なルールがなく以前からの慣例で行われていたならばそれを変えることは重要と考えます。グループ名ハッシュタグの未掲載に伴いNumber_iに限らずどの歌手においても機会損失が生まれていると考えれば、ルール作りは必要でしょう。

 

 

以上3点を提案させていただきます。早急な実現(改善)が難しいものも多いでしょうが、少しずつでも着実に叶っていくならば何よりです。これらが叶えば、日本のエンタテインメント業界全体の改善もまた加速すると捉えています。

 

最新2月21日付のビルボードジャパンソングチャートでは、Number_i「GOAT」が44位にランクイン。登場7週目でのこの位置はK-POPも含め男性アイドル/ダンスボーカルグループでは高位置にいると言えます。他方、ポイント全体の過半数は占めているもののストリーミング指標が緩やかにダウンしていること、動画再生指標との乖離が目立っていることからは、コアファンとライト層の差の拡大も見て取れるというのが私見です。

(ロングヒット曲においては、テレビパフォーマンスのような曲を刺激する材料がない場合はポイント前週比が9割台で推移するというのが自分の見方であり、最新チャートにおけるNumber_i「GOAT」の前週比84.3%という水準から上記の結論に至った次第です。)

今回の提案は、いずれもストリーミング指標の上昇に直接結びつくものではないでしょう(リミックス版はビルボードジャパンソングチャートの合算対象とはなりません)。しかし関心を高め、曲を聴きたいという衝動を高めるための環境整備は重要であり、アイドルならば今も有効なフィジカルを用いて取り込むことも必要ではと考えます。なお、テレビパフォーマンス後に歌手側のポストにてデジタルへ誘導することは必須です。

 

Number_i「GOAT」初のテレビパフォーマンスは3月6日公開分以降の、フィジカルセールスは3月13日公開分のビルボードジャパンソングチャートに反映されます。同曲のチャートアクションに、引き続き注目していきます。