イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

この一週間で見えてきた問題の解決が、日本のエンタテインメント業界の転換点となるだろうことについて

一昨日、Aぇ!groupのデビューがアナウンスされました。

ファーストシングル「《A》BEGINNING」が5月15日にCDでリリースされることがアナウンスされていますが、一方でデジタル(ダウンロード、サブスク)でのリリースについては触れられていません(レコード会社発の記事(→こちら)にも記載はありません)。また記者会見にてその旨が質問されたかは分かりかねますが、本来メディアはその質問を行う必要があったのではと感じています。

 

新会社(STARTO ENTERTAINMENT)体制では初のデビューとなるAぇ!groupですが、彼らの前にデビューを果たしたTravis Japanはデジタル主体の活動を行っています。またSUPER EIGHT(旧名:関ジャニ∞)が今年デジタルでの解禁を行いましたが、フィジカルシングルの初週セールス20万枚超えが見込める歌手においてはデジタルを解禁しても一部にとどめるか、もしくは解禁を一切行っていない状況が未だ目立っています。

上記エントリーにて、STARTO ENTERTAINMENTがホームページ開設当初に掲げた試みに対する私見(ポスト)を掲載していますが、仮にAぇ!groupがフィジカルオンリーの体制となるならば新会社は旧ジャニーズ事務所時代のやり方を踏襲するものと危惧します。フィジカルで、そして合算ランキングがあってもフィジカルに比重を置くオリコンでという、”勝てるところでだけ勝てればいい”やり方にこだわってはいないでしょうか。

 

さて、2024年の日本の音楽業界においては、【日本の楽曲が海外でヒットするか】【日本で海外の楽曲がヒットするか】、そして【旧ジャニーズ事務所(現STARTO ENTERTAINMENT)がきちんと変わり、日本のエンタテインメント業界全体も変われるか】という3点を注視していきます。

元日のブログエントリーにてこのように述べた上で、3つ目については『外部の動きが旧ジャニーズ事務所側に大きく作用する』としてNumber_i「GOAT」を紹介しました。King & Princeのメンバーだった3名による新ユニットがTOBEからリリースしたこの曲はビルボードジャパンソングチャートで初登場首位を獲得、また最新チャートでは再度2位に上昇しています。

Number_i「GOAT」はデジタル初加算週およびフィジカルセールス指標初加算週にチャート上で大きなインパクトを残しています。また前者ではKis-My-Ft2「HEARTBREAKER」、後者ではSexy Zone「puzzle」に勝り、ポイント面では大差を付けていますが、一方で「HEARTBREAKER」ではそれまで行っていたLINE MUSIC限定でのサブスク解禁を行っていないことも気掛かりです。

 

ジャニーズ事務所所属歌手がデジタルで明るくなれば、ビルボードジャパンソングチャートで存在感を高められるでしょう。無論音楽チャートがすべてではないとして、デジタルの充実は曲が見つかりやすくなることやバズの増幅を可能にし、過去曲がいつ(再)ブレイクしてもおかしくない環境を作ります。デジタル未解禁の歌手や曲はデジタルでのみ触れる聴き手には”存在しない”のみならず、海外にも浸透できません。

フィジカルの購入がライト層にとってハードルが高く(フィジカル全体の売上は好調ながら、コアファンの熱量の高さやレコード会社の好調が要因と捉えています)、まずデジタルを用意する歌手が増えた中、そしてそのデジタルできちんと結果を出す歌手が登場する中、STARTO ENTERTAINMENT側がどう動くかは日本のエンタメ業界全体の未来を占う意味で非常に重要です。

(だからこそ、メディアはAぇ!groupの会見時にサブスク解禁の有無を質問すべきだったと考えます。実際、メンバーの草間リチャード敬太さんが参加した屋良朝幸『THE YOUNG LOVE DISCOTHEQUE』は配信されており(屋良朝幸が総合プロデュースを手がける、新感覚ダンス&ライブエンターテインメント『THE YOUNG LOVE DISCOTHEQUE』が待望のCD化! | エイベックス・ポータル - avex portal(2023年11月27日付)参照)、この経緯を踏まえサブスクに関する質問を行うこともできたでしょう。)

 

 

この1週間は他にも、日本のエンタテインメント業界の今後に関わると言っても過言ではない問題が複数発生したと捉えています。

 

たとえば米NPRの人気コンテンツの日本版としてNHKが制作した『tiny desk concert JAPAN』が今現在もYouTubeで公開されていない件は、先述した”勝てるところでだけ勝てればいい”という考えに照らし合わせるならば、使用のハードルが高いNHK独自のサービス(NHKプラスやNHK WORLD JAPANアプリ等)へ囲い込むことがYouTube未公開の主目的ではと捉えてしまいかねません。

藤井風さんが今回のパフォーマンスの最後に世界的にヒットした「死ぬのがいいわ」を披露したこと、またMCがすべて英語だったこともあり尚の事、今回のパフォーマンスが世界中に、最も馴染みのあるYouTubeの形にて拡がらないことは機会損失だと感じます。

またCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」の最新ビルボードジャパンソングチャートにおける動画再生指標の欠測と断言していい状況は、日本のチャートもさることながらグローバルチャートにおいてもGlobal 200での初のトップ10入りおよびGlobal Excl. U.S.(Global 200から米の分を除く)における初の首位獲得を逸することにつながったと捉えています。加点されても順位更新はなかったかもしれませんが、欠測は大きな問題です。

 

 

ジャニーズ事務所側の体制、『tiny desk concert JAPAN』の未YouTube化も含め、【日本の楽曲が海外でヒットするか】という点に大きく関わる問題だと考えます。発し手が自らを省み(その考え方や対応に問題はないか見つめ直し)、そして改善を実行すれば、日本のエンタテインメント業界は開かれたものとなり、海外からの注目度や信頼度は高まるはずです。