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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

前週および当週の上位初進出曲におけるCHART insightから、真のヒット曲に成るかを読む (2024年1月17日公開分)

今回のエントリーでは、ビルボードジャパンソングチャートにおいて前週上位に初めて進出した曲の翌週動向、そして最新週における上位初進出曲の状況をチェックし、真の社会的ヒット曲に成るかを読みます。

前週のエントリーはこちら。

最新のソングチャートに関する記事は、以下をご参照ください。

 

 

まずは前週のエントリーにて紹介した上位初登場曲の、最新チャートにおける動向をCHART insightを用いて紹介します。このCHART insightについては、下記ポストにて簡潔に説明しています。

 

<2024年1月10日公開分 ビルボードジャパンソングチャートにて

 20位までに初めて登場した作品の、翌週におけるCHART insight>

 

・Number_i「GOAT」 1位→3位

Kis-My-Ft2「HEARTBREAKER」 5位→100位未満(300位圏内)

 

デジタル解禁/未解禁、およびデジタルが好調かどうかの差が、2曲のチャートアクションの大きな違いとなっています。

アイドル/ダンスボーカルグループはフィジカルセールスの強さに伴い総合で上位に進出しても、デジタルが伴わない場合は翌週に急落する傾向にあります。デジタル未解禁歌手の場合はさらに顕著となることが、2023年度以降のビルボードジャパン週間ソングチャートで5位以内に登場した曲の翌週動向から明らかになっています。

なお2023年度以降はチャートポリシー(集計方法)の大きな変更がないといえるため、純粋に比較可能といえます。また、たとえばフィジカルセールスが初週10万枚を超える作品については総合でトップ5入りする傾向が強い状況です。それらを踏まえ、2023年度以降のビルボードジャパンソングチャートにおける週間1~5位リストを掲載します。

上記表においては翌週の動向、特にポイント前週比が重要と捉えています。ロングヒット曲はどんなに前週比が低くとも9割を少し下回る程度となる一方で、フィジカルセールスの有無にかかわらず所有指標の強さに伴い上位進出を果たしたアイドル/ダンスボーカルグループの曲は翌週のポイントが前週比5割に届かないことが大半です。翌週50位未満となればポイント前週比は計測できませんが、そのような状況も目立っています。

フィジカルセールス未加算のNumber_i「GOAT」はポイント前週比が5割に届かなかったものの48.0%となり、水準は高いほうといえます。これはロングヒット曲にてポイントの過半数を占めるストリーミングが引き続き強かったことが影響しているためであり、再生回数は4,801,615→4,571,847回再生(前週比95.2%)となっています。

 

アイドル/ダンスボーカルグループにおいて2023年度以降、フィジカルセールス指標未加算にてトップ5入りした作品は限られます。Travis Japanは「Moving Pieces」が3位(2023年5月24日公開分)、「Candy Kiss」が2位(2023年7月12日公開分)に入りながら、翌週には急落しています。一方でBE:FIRST「Boom Boom Back」は2023年2月22日公開分で首位初登場を果たすと翌週は8位(ポイント前週比34.5%)となっています。

CHART insightの状況からは「Boom Boom Back」が他の大ヒット曲に比べるとロングヒットしたとは言い難いかもしれませんが、最新週まで一度も総合300位を割り込んでおらずアイドル/ダンスボーカルグループの中では強いアクションを示しています。前週のエントリー(→こちら)にてNumber_i「GOAT」の初週動向がBE:FIRST「Boom Boom Back」を想起させると記しましたが、中長期的にも似た動きをなぞるかもしれません。

一方で、Number_i「GOAT」においては上記ポスト内で掲載されたキャンペーンが終了し、次回1月24日公開分では反映されません。BE:FIRST「Boom Boom Back」もキャンペーンを実施していましたが(→こちら。ただしキャンペーンを実施する歌手自体は少なくありません)、チャートアクションにおいては高い所有指標を獲得した翌週の動向、そして1ヶ月程度の傾向をみて、真の社会的ヒット曲となるかを捉える必要があります。

ソロ歌手ではありますが、ジョングクがラトーを招いた「Seven」は2023年度以降における最良のチャートアクションといえるでしょう。ストリーミングの安定もさることながら、最もロングヒットしにくいラジオでも強さを発揮し、登場から半年が経過した現在も総合30位以内をキープしています。仮にフィジカルシングルが出ていれば、ポイントの短期的増加につながれど他の指標を下げることは考えにくいというのが私見です。

 

 

続いて、最新ソングチャートにおいて初めてトップ20入りした作品のCHART insightをチェックします。

<2024年1月17日公開分 ビルボードジャパンソングチャート

 20位までに初めて登場した作品のCHART insight>

 

・8位 (前週31位) ヨルシカ「晴る」

 

ヨルシカ「晴る」はテレビアニメ『葬送のフリーレン』(日本テレビ)第2クールのオープニングテーマとして、その第2クール初回放送日となる1月5日金曜にリリース。今回は初の1週間フル加算となりトップ10内に入ってきました。ダウンロードやラジオが安定いに推移、ストリーミングも大きく伸びていますが、動画再生指標が94位に入っていることも大きな特徴です。

テレビアニメにおいてはノンクレジットオープニング/エンディングムービーが公開される傾向にあり、ヨルシカ「晴る」を起用した『葬送のフリーレン』も同様です。一方でこの種の映像は動画再生指標が加算されないことが多いと考えられ、その理由については下記エントリーにて紹介しています。実際、上記動画はTOHO animation チャンネルから発信されているものです。

その状況下で動画再生指標を獲得できたのは、公式オーディオを(YouTubeの無料会員向けにも)公開したゆえと考えます。ミュージックビデオが制作段階であり公開が後日となる、そもそも制作が行われない、もしくは制作されてもYouTubeにアップされていない曲において、公式オーディオやリリックビデオを用意することでチャートアクションに反映した例として、昨秋の藤井風「花」やKAN「愛は勝つ」が挙げられます。

動画再生指標から得られるポイントは多くないかもしれませんが、重要なポイント源であることは間違いありません。そしてチャートアクションにかかわらず、YouTubeを音楽サブスク的に用いる方にとっては公式オーディオの存在がありがたいのではないでしょうか。ヨルシカ「晴る」の動向を踏まえれば、公式オーディオの用意は音楽業界において必須ではと感じています。