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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

ビルボードジャパンによる”Global Japan Songs Excl. Japan”とは何か、ビルボードジャパンへの提案も添えて紹介する

9月14日、ビルボードジャパンがふたつのチャートの新設を発表しました。

Global Japan Songs Excl. Japan(グローバル ジャパン ソングス エクスクルーディング ジャパン)は、日本の楽曲を対象に、米国ビルボードで発表している“Global 200”の元となる、世界200以上の国と地域をカバーする主要デジタル・プラットフォームにおける有償無償のオーディオ、ビデオストリーミング、ダウンロードにそれぞれ比重をつけて算出したデータから、日本市場を除外(excluding)して抽出したチャートで、世界でのヒットやトレンドを把握することができる。

 

そして、Japan Songs(国名)は、米国ビルボードの“Hits of the world”(半世紀以上続く複合チャート“Hot 100”の計算メソッドを生かした各国別チャート)のデータから世界各国でヒットしている日本の楽曲を抽出したもので、9月14日からは韓国・シンガポール・インド・フランス・イギリス、その後米国・ブラジル・台湾・ドイツ・南アフリカなどの国の毎週の順位を順次発表。国ごとに異なる日本のヒット曲やトレンドを可視化するとともに、各国のヒットチャートにランクインするための傾向などを把握することが可能となる。

上記には【Global Japan Songs Excl. Japan】そして【Japan Songs (国名)】についての説明が掲載。これら新設はチャートディレクターを務める礒崎誠二さん等による尽力の賜物であり、こちらでその思いが記されています。

序盤に記された、『私達が“世界”をイメージするとき、日本の市場を含んで考えることはありません。そして、グローバルチャートをみるとき、日本の楽曲がチャートインしているか探します。新チャートは、今までトピックとしてしか分からなかった、世界でヒットしている楽曲やトレンドを、まとめてみることができます』という文言に強く納得した次第。この視点の具現化に、心より感謝申し上げます。

 

では今回、【Global Japan Songs Excl. Japan】について紐解いていきます。【Japan Songs (国名)】共々ひとつの記事にてまとまって公開されていますが(記事を掲載したポスト(ツイート)は後述)、先に紹介されるのがGlobal Japan Songs Excl. Japanであるため、今回はこちらを紹介します。

紹介するといってもまだ一週のみ公開の状況ですが、ここから見えてくることはあります。そしてこのチャートの基となるグローバルチャートについてはブログでトップ10を毎週紹介していることもあり、まずはここから押さえておく必要があるでしょう。

 

なおビルボードジャパンによる新設チャートの記事や解説では、J-POPではなく日本の楽曲(音楽)と記されています。よってここでは基本的にJ-POPという表現は用いないこととします。

 

 

グローバルのソングチャートとは米ビルボードが2020年9月に新設した、Global 200、およびGlobal 200から米の分を除いたGlobal Excl. U.S.という2種のチャートを指します。その概要については下記エントリーにて紹介しています。

Global 200を簡単に説明すると、世界200を超える国や地域の主要デジタルプラットフォーム(SpotifyApple Music、iTunes Store等)におけるストリーミングおよびダウンロードに伴う、複合指標による音楽チャートです。日本時間の火曜早朝にトップ10が、同日夕方以降に200位までが公開されます。なお動画再生はストリーミングに含まれる一方でフィジカルセールスや、歌手のホームページにおけるダウンロードは含みません。

ストリーミングにおいて、有料会員による1回再生と無料会員によるそれとでは前者の比重が高くなります。この比重についてはグローバルチャートのローンチ以降変化したとのアナウンスはないため、こちらのポスト(ツイート)が参考となるでしょう。

グローバルチャートは金曜を集計期間初日としています。またリミックスや共演/客演追加等の別バージョンも合算されます。これらは米ビルボードソングチャートと同様ですが、その米チャートが適用するリカレントルール(一定週数以上ランクインした曲が一定の順位を下回ればチャートから外れるという、新陳代謝を目的とした対応)は、グローバルチャートでは採用されていません。

 

グローバルチャートの新設以降、ラテンやK-POPの人気がはっきりと可視化され、またアフロビートやメキシコ作品の人気も高まっています。その中にあって日本の音楽はK-POPとの差が拡がっているというのが厳しくも現状ですが、今年に入りYOASOBI「アイドル」がGlobal Excl. U.S.で通算3週首位を獲得しています。

(※2023年9月16日付までの分を表示。)

グローバルチャートにおいて上位に進出する日本の楽曲には特徴がありますが、日本は他の国や地域に比べてダウンロードが高いため、それを活かしロケットスタートを切ることは可能です。ただし、より重要なのはストリーミングのロングヒットに伴う上位安定。Global Excl. U.S.よりも上位に登場しにくいGlobal 200にて複数週トップ10入りしている楽曲は現時点でYOASOBI「アイドル」のみとなります。

 

新たに始まるGlobal Japan Songs Excl. Japanは、Global 200から日本市場分(所有および接触)を除き、日本の楽曲のみを抽出しています。日本の分を除くという段階で日本でダウンロードを中心にポイントを獲得した楽曲は上位に進出しにくく、一方でストリーミングでのロングヒット曲が上位に進出しやすいことが、今回の初回チャートから理解できるものと考えます。初回チャート、上位の顔ぶれは以下の通りです。

<2023年9月14日公開分 Global Japan Songs Excl. Japan 上位20曲>

TikTok発ヒットやアニメタイアップが上位を占めるなか、頭角を現してきたのがXG』という記事の一文にて、Global Japan Songs Excl. Japan初回の状況、また傾向は把握可能といえます。その中にあって個人的に注目したのは10位の松原みき「真夜中のドア~stay with me」。”シティ・ポップは終わった”等の言説を耳にする機会が増えたと感じる中、TikTok発のヒットながら実際はシティ・ポップの人気定着が見て取れるようです。

私見と前置きしますが、シティ・ポップの流行がより大きく拡がらなかったのは同ジャンルのデジタルアーカイブが十分ではないために海外の音楽ファンが深掘りに至れなかったが原因と捉えています。言い換えれば、デジタルアーカイブが十分な「真夜中のドア~stay with me」が成果を上げたことが今回証明されたといえるでしょう。同曲はミュージックビデオの新規制作や、ライブ映像のアーカイブ化も実施しています。

今回のGlobal Japan Songs Excl. Japan等のローンチは、未だデジタル未解禁の目立つ日本の音楽業界に大きな刺激を与えるでしょう。今後シティ・ポップ以外の過去曲もTikTok等でヒットする可能性は十分考えられ(それこそ海外ではフリートウッド・マック「Dreams」がリバイバルヒットしたという例もありました→こちら)、機会損失がその都度生じるならば、業界全体での未解禁者への説得とデジタル環境改善は急務です。

 

日本のシェアは非常に低いから海外では勝算が弱く、USに次いで大きい国内市場で勝負する? それとも、目の前に広がるフロンティアと考え、世界へ向けて挑戦する?

今日の社会では、この二者択一をする必要は無くなりました。国内コンテンツ市場はストリーミングが牽引して拡大が続く一方、今までにないほどの速さでコンテンツが共有される世界はフロンティア以外の何物でもありません。日本には、多くの新曲はもちろん、長く蓄積されたカタログ楽曲があり、かつ実力あるアーティストがたくさんいます。ですから、日本の楽曲がシェアを拡大し、各国ランキングを上げていくのは時間の問題と考えるほうが自然ではないでしょうか。私たちに足りなかったのは、世界へ踏み出すための指針です。

ビルボードジャパンは今回のチャート新設を、日本の楽曲が世界に羽ばたくための後押しとして捉えているといえるでしょう(上記の文言からは、その役割を担うという自負も感じられます)。デジタルリリースは海外進出と同等である以上、今回ローンチされたチャート、そして米ビルボードによるグローバルチャートを意識しない手はないはずです。奇しくも、米ビルボードでも興味深いチャートが新設されたゆえ、尚の事です。

 

 

ビルボードジャパンの新設チャートについて、このブログではGlobal Japan Songs Excl. Japanを中心に追いかけ、トピックがあれば紹介することにします。その一方で、ビルボードジャパンにはいくつか提案をさせていただきます。

 

ひとつは、Global Japan Songs Excl. Japanの元となるGlobal 200、およびGlobal 200から米の分を除いたGlobal Excl. U.S.というグローバルチャートについての、日本での認知度上昇に努めること。Global Japan Songs Excl. Japanとの比較の意味でも、速報記事のビルボードジャパンによる翻訳公開を願います。ビルボードジャパンでは米ビルボードのアルバムおよびソングチャート記事は翻訳されているため、できなくはないはずです。

韓国では速報記事翻訳ではないものの、米ビルボード各種チャートにおけるK-POPの動向が毎週紹介されています(最新9月16日付はこちら)。これが歌手側そして歌手のコアファンを中心に世界への意識を高めることに寄与しているはずです。Global Japan Songs Excl. Japanは日本の楽曲の動向を知るには有効でも、日本の音楽が世界で羽ばたくにはGlobal 200等の動向を押さえ世界市場(という現実)を知る必要があるはずです。

(このブログにてグローバルチャートの記事を毎週翻訳しているのは、そのためでもあります。)

次に、ビルボードジャパンソングチャートのチャートポリシー(集計方法)の変更を、今一度提案します。

Global Japan Songs Excl. JapanはGlobal 200のチャートポリシーに準じ、金曜集計開始ならびにリミックス等合算という措置を採っています。一方でビルボードジャパンは集計開始が月曜となり、合算は言語のみの違いを除き基本的には合算されません。しかし後者については合算されないはずのものが行われるという矛盾もみられます(動画再生指標におけるTHE FIRST TAKEやラジオ指標におけるセルフカバー版の取扱等において)。

先述したように日本はダウンロードが高く、初週動向はストリーミングが低くともGlobal 200やGlobal Excl. U.S.にて上位進出が狙いやすい状況です。その場合は日本での獲得ポイントが多くなりGlobal Japan Songs Excl. Japanでの上位ランクインは難しいものの、グローバルチャートや記事にて日本の楽曲の上位登場を知った方が認知すれば、登場2週目以降の勢いは上昇するかもしれません。

グローバルチャートでより高い位置に就くべく、Global Japan Songs Excl. Japanでも集計期間初日となる金曜をリリース日とする傾向が今後強まるかもしれません。日本と世界とで施策を分けることも減りますが、何より金曜リリースはサブスクサービスの新曲プレイリスト入りの可能性を高め、選出されれば日本の楽曲(音楽)全体の存在感を高めることにつながるでしょう。そうすれば業界全体の世界への意識も変わるはずです。

 

ビルボードジャパンには上記2点について議論の場を設けてほしいと願います。また発表するチャートがさらに増えたことから、人員の確保はできているのか等気掛かりな点もあります(水曜の各種チャート発表時間が固定されていないこともあり、尚の事です)。この心配が杞憂に終わることを願います。

 

 

今回のビルボードジャパンによるチャートの新設は、歌手側やコアファンの世界に対する意識を高め、また音楽業界が世界に即した考え方を持ち金曜を標準リリース日とする等動く可能性を持ち合わせています。そしてビルボードジャパンの国内での認知度を国内で高めることにもつながるでしょう。ポジティブな未来が一気に近づいたことを感じています。