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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

日本のチャートでザ・ビートルズ「Now And Then」が上昇、一方でCHART insightから感じることについて

最新11月15日公開分のビルボードジャパンソングチャートではザ・ビートルズ「Now And Then」が前週の41位から30位へ上昇しています。

ビルボードジャパンによる最新のポッドキャストでは「Now And Then」の動向について紹介しています(下記動画で8分19秒以降)。そのポッドキャストでの内容とは異なり、個人的には同曲の動きに違和感を抱いています。

 

 

11月15日公開分のビルボードジャパンソングチャートにおけるザ・ビートルズ「Now And Then」のCHART insightはこちら。ラジオ指標が4→2位に上昇し、一方でダウンロードが5→31位、動画再生は11→34位にダウンしています。その他の指標については加点対象となっていません。

CHART insightの見方については、以下のポストをご参照ください。

 

 

ザ・ビートルズ「Now And Then」はラジオの強さが際立っています。実際、ラジオ指標の強さに伴い総合ソングチャートで上位進出を果たした曲は少なからず存在します。

上記リンク先では原由子さんのみならず桑田佳祐さんや山下達郎さんの例を、CHART insightを貼付した上で取り上げていますが、ラジオ指標の強さに伴う総合ソングチャート上位進出はベテランの特徴といえるでしょう。

 

ラジオ指標は、プランテックによる全国31のラジオ局のOAランキングを基に、各局の聴取可能人口等を加味して算出されますが、その基となるランキングではザ・ビートルズ「Now And Then」が首位を獲得しました。

(指標化時に順位が変動する要因については、たとえばビルボードジャパンソングチャート、ラジオ指標とOAランキングの順位の差から強化方法を探る(10月28日付)にて紹介しています。)

プランテックの記事からも解るように、洋楽の上位進出は難しくなりました。以下の表は2023年度におけるビルボードジャパンソングチャートのラジオ指標上位20曲の推移を示したもの。青が旧ジャニーズ事務所所属歌手、灰色っぽい青はLDH所属の男性歌手、緑が旧ジャニーズ事務所およびLDH所属以外の男性歌手(いずれもグループ)、紫がK-POP男性歌手、そしてオレンジが男女にかかわらずK-POP以外の洋楽を指します。

ラジオ指標、そしてラジオ業界全体で洋楽のOA率が減っていることは以前から指摘していますが、その中でザ・ビートルズ「Now And Then」は今年度の洋楽作品では最高位タイとなる2位に。この指標でトップ5入りした洋楽はベテランが多く、またリゾやマイリー・サイラス、デュア・リパといった若手の作品はディスコティークを踏襲したものであるゆえラジオでかかりやすいといえるでしょう。

ラジオ指標上位進出は素晴らしいことながら、上位陣をみるとベテラン重視、またJ-POPの若手等においてはパワープレイ(ヘビーローテーション)やプロモーション効果も大きいことが見て取れます。ラジオでの人気には偏りがあり、また急落も珍しくないため、上記表にてピンクで表示したYOASOBI「アイドル」並のロングヒットにならない限りは真のヒット曲と断言することは難しいと考えます。

 

 

ビルボードジャパンソングチャート全体に話を戻すと、このチャートは月曜が集計期間初日となります。ザ・ビートルズ「Now And Then」は日本時間の11月2日木曜23時にされており、11月8日公開分のチャートにおいては3日と1時間が集計対象期間に。ゆえに最新チャートが初の1週間フル加算となったことで、ラジオが伸びることはある程度想起できたといえるかもしれません。

他方、ダウンロードや動画再生といったデジタル関連指標が最新チャートにおいてダウンしているということは、この曲がリリース当初こそ注目された一方で持続が乏しいと捉えることも可能です。

ザ・ビートルズ「Now And Then」については芸能ではなく一般的なニュース番組でも取り上げられています(上記ポスト等参照)。ゆえに”最後の新曲”と謳われた同曲の(少なくともリリースされたことについての)認知度は低くないはずであり、初週のダウンロード指標にも反映されたといえるでしょう。

 

一方でその所有指標がダウンすることは自然だとして、接触指標の動画再生が下がることはコアファンでの人気の継続、そして接触指標が反映されやすいライト層(曲は気になるが歌手のファンというわけではない方々)の注目度がそこまで高いわけではないといえるかもしれません。そして、ザ・ビートルズ「Now And Then」は2週続けてストリーミング指標が300位圏外となり加点されていません。この事実は大きいと考えます。

Spotifyはストリーミング指標にデータを提供する主要サブスクサービスのひとつですが、そこでのザ・ビートルズ「Now And Then」のチャート推移は上記リンク先にて確認できます。日本では11月3日付で63位に初登場(200位以内初エントリー)しながらその後124→182→199位と推移し、200位以内エントリーは4日間にとどまっています。グローバルにおいても、200位以内エントリーは11月2日からの9日間にて途絶えています。

このことは、ザ・ビートルズ「Now And Then」が瞬間風速的に人気を得ても持続が乏しいこと、特に若年層の利用率が高いとされるサブスクサービスでの動向からはザ・ビートルズの年代による支持に小さくない乖離が発生していることを意味しているといえるでしょう。

 

 

上位に進出した曲のそれぞれの指標における動向からは今後の推移がある程度予測可能であり、ザ・ビートルズ「Now And Then」については次週以降の急落の可能性が高いとみています。仮にビルボードジャパンが米ビルボードや、米ビルボードによるグローバルチャートと同様のチャートポリシー(特に集計期間の金曜開始)を採用していたならば、「Now And Then」は瞬間的にでもより高い位置に登場していたことでしょう。

 

 

最後に、海外の動向を紹介します。ザ・ビートルズ「Now And Then」は、今週発表された最新11月18日付の米ビルボードソングチャートで7位に初登場、また同日付グローバルチャートにおいてもGlobal 200、そしてGlobal 200から米の分を除いたGlobal Excl. U.S.の双方でトップ10入りを果たしています。注目は、米ビルボードソングチャートにおける動向です。

ザ・ビートルズ「Now And Then」が7位に初登場。ストリーミング1100万、ダウンロード73,000(フィジカルセールス含む)およびラジオ210万を記録しています。リリースは11月2日であり、前週は解禁日1日のみながらストリーミング230万、ダウンロード17,000およびラジオ260万を記録し米ビルボードのバブリングアンダーチャート(ソングチャート100位未満を指す)にて5位に初登場していました。

ビルボードソングチャートにおいてはフィジカルを複数種リリースしたこともあり(上記リンク先参照)、ダウンロード指標が上昇。ストリーミングも11月11日付から伸びている一方で、ラジオ指標はむしろ逆行しています。ラジオはソングチャート構成3指標の中でスタートダッシュやピークも遅いのですが、この指標がダウンすることはラジオでの「Now And Then」における対応や反応がみえてくるのではと感じています。