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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

【ビルボードジャパン最新動向】紅白を機にVaundyが広く世間に"見つかった"…様々なチャートの動向をみる

毎週木曜以降は最新のビルボードジャパン各種チャートについてお伝えします。

1月2~8日を集計期間とする最新1月11日公開分のビルボードジャパンソングチャートではOfficial髭男dism「Subtitle」が6週連続、通算10週目の首位を獲得しました。

Official髭男dism「Subtitle」における通算10週目の首位は、星野源「恋」(11週)に次ぐ単独2位の首位獲得週数に。ポイント前週比は81.0%となりトップ10在籍曲の中では最も下がり幅が大きくなりましたが、次週は新曲「ホワイトノイズ」の初登場に伴い過去曲が伸びることも予想されます。歴代最長首位曲と成るか、注目しましょう。

 

今回は1月2日からが集計期間となり、昨年末の音楽特番の中でも『NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか)の影響力が反映された週となりました。その中でもVaundyさんが、広く世間に"見つかった"と断言しても過言ではないはずです。なにより紅白で披露された「怪獣の花唄」の27→3位という急伸が、それを物語っています。

Vaundy「怪獣の花唄」は2020年5月11日に配信リリースされ、2022年1月5日公開分以降は総合で常時100位以内に登場。主にストリーミング(上記CHART insightにおいて青で表示)およびカラオケ(緑)といった指標が牽引する形でロングヒットとなっていました。

ロングヒット曲にはストリーミングの力が欠かせないことは以前から述べていますが、ストリーミング指標のおよそ6分の1から5分の1のシェアを占めるとみられるSpotifyでは昨年11月、「怪獣の花唄」が遂に50位以内に到達。Spotifyには50位の壁という独自の特性があり(→こちら)、これを経てさらに上昇したことも今回の紅白を機に大きく浮上するための足場固めになったと言えるでしょう。

そして紅白でのパフォーマンスにより、Vaundyさんが遂に広く世間に知られることとなりました。披露曲「怪獣の花唄」はポイント前週比267.1%と驚異的な伸びを示しています。これは当週のトップ10で「怪獣の花唄」および7位に初登場したNewJeans「OMG」を除く8曲の前週比が81.0~108.1%に収まっていることを踏まえれば、如何に圧倒的かがよく解るはずです。そしてVaundyさんの他の作品も大きく伸びています。

Vaundyさん自身の作品では8曲が100位以内にエントリー。そして紅白では4人名義で披露されたmilet、Aimer、幾田りら「おもかげ (produced by Vaundy)」が84→20位へ躍進しています。

ポイントの大多数を占めるストリーミングでも、Vaundyさんの作品が総合ソングチャート同様に(また顔ぶれも変わらず)8曲ランクインし、「おもかげ」も31位に。総合とストリーミングの順位が大きく変わらない点からも、この指標がヒットの基軸となることが解ります。そして「怪獣の花唄」の再生回数前週比228%という数字は、前週のチャートで伸びた曲におけるストリーミング再生回数推移と比較しても驚異的だと解ります。

紅白の影響はVaundyさんのアルバムにも。「怪獣の花唄」も収録されたファーストアルバム『strobo』(2020年5月27日リリース)は当週12位に上昇し、初登場時の4位に次ぐ高位置につけています。同作のCHART insightをみると、フィジカルセールス(黄色)は1週を除いて、そしてダウンロード(紫)は常時300位以内に登場しており、以前からその人気が定着していたことが解ります。

そしてソングチャートとアルバムチャートを合算したトップアーティストチャートにおいて、Vaundyさんは最新1月11日公開分にて2位に上昇。これまでの4位(2022年10月26日公開分)を上回る自己最高位となりました。トップアーティストチャート上位10組の指標構成をみれば、デジタルの接触/所有、そしてカラオケで強いことがよく解ります。

 

トップアーティストチャートの開始以降、Vaundyさんの人気は安定して高い状態をキープしていました。それが今回の紅白出演を機に「怪獣の花唄」でソングチャートトップ3入りを果たし、トップアーティストチャートでも2位に到達。いつ何時バズが発生してもおかしくないという下地はあったわけで、紅白のステージにて多くの方を魅了し、ステップアップに至れたことが今回可視化された形です。

 

 

ちなみに、Vaundyさんは1月7日に大阪FM802のラジオ番組に出演されていましたが、放送を聴く限り紅白についてはVaundyさん側に選曲権があったと受け取っていいかもしれません(紅白について語った部分はradikoにてチェック可能です(→こちら。ただし聴取可能日時は1月13日5時44分まで))。通常は紅白側に選曲権があると聞いていたため意外でしたが、ともすれば紅白側がVaundyさんにステージを託したとも言えそうです。

(個人的には、今回の紅白における各歌手の評判やチャート結果も踏まえれば、シンプルなライブ空間の用意がより好いのではないかと感じた次第です。そしてできる限り全ての歌手がNHKホールにてパフォーマンスすることも望みます。)

 

また興味深い点として、「怪獣の花唄」のミュージックビデオに鈴鹿央士さんが出演していることも挙げておきます。ドラマ『silent』でさらなる注目を集めた俳優の出演という意味でも、「怪獣の花唄」のミュージックビデオに興味を抱く方はいらっしゃるかもしれません。

 

 

Vaundyさんの新曲「まぶた」は今週火曜にリリースされ、来週のソングチャートに初登場予定。ドラマ『女神(テミス)の教室 〜リーガル青春白書〜』(フジテレビ)の主題歌となっています。新曲が過去曲をフックアップするのみならず、紅白がこの新曲にも勢いを与えるであろう、その相互作用によりトップアーティストチャート初の首位も狙えるかもしれません。次週は強力なアルバムが少ないゆえ、十分考えられます。

「まぶた」のミュージックビデオは1月17日0時、ドラマ第2話放送の翌日に解禁。ミュージックビデオ解禁日から6日分の再生回数は1月25日公開分のビルボードジャパンソングチャート、動画再生指標に加算されます。次週、そして再来週の動向に注目しましょう。

紅白出場から「まぶた」のリリース、ミュージックビデオの段階的公開までのスケジュールは、チャート施策としても長けています。そしてあらためて考えれば、「怪獣の花唄」のライブパフォーマンス映像が公開されたのは紅白の歌唱曲が発表された当日であり、動画タイトルにも紅白での歌唱が記されています。これもまたチャート施策として、そしてVaundyさんの名を広く知らしめるに十分な役割を果たしたものと考えます。

紅白を機にブレイクする曲や歌手は以前からいらっしゃいますが、きちんとその前後に施策を組むのは見事です。2023年のVaundyさんの動向、来るべきセカンドアルバムの行方を含めて注目しましょう。