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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

最新ビルボードジャパンソングチャートは初登場曲多数…どの作品が社会的ヒットに成るかを予想する

最新7月12日公開分のビルボードジャパンソングチャートについては一昨日以降に解説を行っていますが、最新週では100位以内において通常より多い15曲が初登場。100位以内返り咲き作品がないことからも、当週は比較的チャートが大きく変わったと捉えていいでしょう。最新ソングチャートの記事はこちら。

では今回の初登場曲の中で、どの作品が今後チャートで存在感を放っていくでしょう。今回は20位までに初登場した5曲を中心にチェックしていきます。CHART insightは下記ツイート内リンク先から確認可能です。

 

<2023年7月12日公開分 ビルボードジャパンソングチャート

 20位までに初登場した作品におけるCHART insight>

 

2位 Travis Japan「Candy Kiss」

3位 SKE48「好きになっちゃった」

4位 OCTPATH「Sweet」

8位 キタニタツヤ「青のすみか」

15位 CRAVITY「Groovy」

 

5曲のCHART insightをみると、その傾向は大きく3つに分けられます。

 

ひとつは【フィジカルセールスが圧倒的に強い】ということ。フィジカルセールスは週間売上枚数が5万枚(推定)を上回る場合に係数処理が施されますが、それでも売上が多いことで瞬発力が高まり、週間単位では上位に進出することが可能となります。

一方でフィジカルセールスは2週目には急落することから、他指標(特にデジタルの接触指標群)が伴わなければ急落する傾向にあることは、上記エントリーにて以前お伝えした通り。ゆえにフィジカルセールス指標が突出して強い曲については他指標の動向も確認し、翌週の動向をみて真の社会的ヒット曲に成るかを見極める必要があります。

 

次に【デジタルがフィジカルセールス的な動きをなぞる】曲について。これはTravis Japan「Candy Kiss」が挙げられます。フィジカル未リリースでダウンロード指標を制した同曲は、総合にて「JUST DANCE!」(2022 4位)、「Moving Pieces」(2023 3位)を上回り自己最高となる2位を記録。そして「Candy Kiss」においてはストリーミング指標18位に達しています。

ストリーミングの強さは前作「Moving Pieces」をなぞっていますが、これは前作および今作にてLINE MUSIC再生キャンペーンを実施していることに伴います。一方でApple MusicやSpotifyでもキャンペーンは実施していますが、たとえばデイリー再生回数が一定の順位まで可視化されている日本のSpotifyでは「Candy Kiss」は200位以内に登場していません。

LINE MUSIC再生キャンペーンはストリーミング指標に影響を及ぼします。LINE MUSIC側が昨年秋に再生回数のカウント方法を変更したことで影響度は下がったものの、しかしながらダンスボーカルグループやアイドルを中心に採用されることが少なくありません。ストリーミングは主にライト層の人気を示しロングヒットの要となる接触指標ですが、キャンペーン参加者はコアファンが多く、ゆえに所有指標的な動きが生まれます。

そのためLINE MUSIC再生キャンペーンが終了した後の動向もチェックし、ヒットが継続するならば社会的ヒット曲に成る可能性が高まると考えていいでしょう。これはTravis Japan「Candy Kiss」に限らず、他のキャンペーン採用曲についても同様です。

 

ロングヒット曲においては所有指標が強くなくとも接触指標群が牽引しヒットが持続する傾向にありますが、最新のソングチャートで8位に初登場したキタニタツヤ「青のすみか」については【接触指標および所有指標の双方が高い】状況です。ゆえに今後しばらくヒットが持続するかもしれません。

実は「青のすみか」においてもLINE MUSIC再生キャンペーンが展開(→こちら)。再生回数が多いほど当選確率が上昇するものの回数のハードルはないこと、また他のサブスクサービスでもヒットしていることを踏まえれば、キャンペーンに頼らずもヒットしたと捉えていいでしょう。Spotifyでは下記グラフの通り、また7月12日公開分ビルボードジャパンソングチャートと集計期間を同一とするApple Musicでは14位に入っています。

加えて、「青のすみか」は所有指標のダウンロードも高い状況です。これは同曲がテレビアニメ『呪術廻戦 懐玉・玉折』(毎日放送/TBS)のオープニングテーマに起用され、アニメソング特有の動向をなぞるためと考えられます。所有指標は徐々に落ち着くとして、アニメ人気も相まって「青のすみか」が勢いをキープするだろうことについては、次週のソングチャートにおけるストリーミング速報記事からも見て取れます。

現在2位のキタニタツヤ「青のすみか」は、当速報では374.4万回を記録し初登場。

 

上記速報記事では、NewJeans「Super Shy」が258.9万回を記録し4位にランクインしていることも伝えられています。同曲は最新7月12日公開分ビルボードジャパンソングチャートにて60位に初登場を果たしていますが、日本での公開は7月7日金曜13時であり、わずか2日半でこの位置に到達したこととなります。

NewJeans「Super Shy」においてもLINE MUSIC再生キャンペーンが展開(詳細はこちら)。500回のハードルおよび7月16日(すなわち次週7月19日公開分ビルボードジャパンソングチャートの集計期間最終日)が期限となるため、7月中のチャート動向を注視し真の社会的ヒット曲に成るかを見極める必要がありますが、キタニタツヤ「青のすみか」同様にApple MusicやSpotifyでも上昇し、十分ヒットする可能性が考えられます。

そして興味深いのが、トップアーティストチャート(Artist 100)の動向。デジタルに強い曲が複数ある歌手においては新曲リリースが過去曲のフックアップにもつながることから、このチャートで再び上昇する傾向がみられます。特にK-POPの第4世代女性ダンスボーカルグループはストリーミングが強く、リリースの度に総合順位のステージが一段高くなる傾向がみられるため、NewJeansにおいてもその可能性は十分と言えます。

 

無論、今後の動向を確認しない限りはキタニタツヤ「青のすみか」やNewJeans「Super Shy」が社会的ヒット曲に成ったと断言することはできませんが、重要なのはLINE MUSIC再生キャンペーンを採用したとしてその終了後もヒットが持続すること、および他のサブスクサービスでもヒットすることであり、すなわち曲のヒットの範囲をコアファンからライト層に拡げることが重要となります。

アニメソングやK-POPはそのジャンルを強く好むファンが少なくなく、接触指標においても瞬発力が高い傾向にありますが、一方でその人気はライト層にも拡がる傾向にあります。ダンスボーカルグループやアイドルの運営側そしてコアファンの方々はその傾向を学び、推す歌手の作品をどう伝えるかにフィードバックする必要があるでしょう。