イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

SpotifyやApple Musicの年末年始の動向は、紅白やレコード大賞の影響力を感じるに十分である

ビルボードジャパンは本日、2週分の各種チャートを発表します。

1月3日公開分は昨年の大晦日まで、1月10日公開分は今年の元日以降の、それぞれ一週間が集計期間。それゆえ、特に後者においては『輝く!日本レコード大賞』(TBS 2023年12月30日放送 以下"レコード大賞"と記載)および『NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか 2023年12月31日放送 以下"紅白"と記載)の影響が反映されるものと思われ、以前このようなエントリーを掲載しました。

今回は年明けリリース作品を含め、ソングチャートにおけるストリーミング指標の基となるサブスクサービスの動向を紹介します。

 

 

昨日発表されたApple MusicのチャートではYOASOBI「アイドル」が返り咲きを果たしました。

その「アイドル」を含め、Apple Musicで順位を上げた作品の大半はレコード大賞および紅白で披露された曲、そしてその歌手による関連作品であることが解ります。

(なお、Number_i「GOAT」については記事のタイトルにて5位とありますが、実際は10位となります。)

 

では、デイリー200位までの再生回数が可視化されるSpotifyの動向はどうでしょう。下記は最新1月8日付における上位50曲について、再生回数の順に掲載したものとなります。歌手名および曲名において、レコード大賞および紅白での披露曲は赤、出演した歌手の関連作品は青で表示しています。

 

Spotifyにおいては通常、平日の中でも金曜の再生回数が減ります。また平日より土曜、土曜より日曜の再生回数が伸びる傾向にあります(一方で三連休の場合はその傾向が当てはまりにくい状況です)。

200位の再生回数を定点観測すると、昨年12月30日付では土曜にも関わらず再生回数が減り、元日が最も少なくなっています。正月三が日まではその傾向が強いのですが、成人の日まではまだ完全に回復していないといえる状況です。なお大きな自然災害があると再生回数が下がる傾向にあり、2024年においては元日に発生した地震の影響に伴い回復が遅れる可能性も考えられます。

 

その前提において、大晦日までの1週間と元日からの一週間における前週比、またクリスマス関連曲が大挙上昇しピークを迎えたことで全体の再生回数が底上げされたクリスマスイブと成人の日との差を比較すると、レコード大賞紅白歌合戦での披露曲がやはり上昇していることがみえてきます。

クリスマスイブから成人の日にかけて特に大きく伸びたのは10-FEET「第ゼロ感」(紅白にて披露)、NewJeans「Ditto」(レコード大賞および紅白で披露)および「OMG」(紅白で披露)ですが、この3曲は年末年始にトップ50内に返り咲いたことが影響しています。日本ではデイリーチャートの上位50曲をまとめたトップ50プレイリストの影響力が大きく(下記エントリー参照)、プレイリスト入りしたことで急浮上した形です。

言い換えれば、レコード大賞や紅白の前からデイリー50位以内に入っていた曲においては伸び率が高くなりにくいかもしれないのですが、レコード大賞を受賞したMrs. GREEN APPLEケセラセラ」は昨年12月29日から大晦日にかけて14→8→3位と上昇し、それまでの最高位である4位を上回りました。クリスマスイブから成人の日にかけての伸び率は154.9%と他の曲に比べて高く、また他のミセスの作品も伸びています。

そしてYOASOBI「アイドル」はクリスマスイブから成人の日にかけての伸び率が127.0%に。2023年において様々な記録を塗り替え世界にも轟いた曲ですが、紅白を初披露の場としたこと、日韓のアイドル/ダンスボーカルグループや橋本環奈さん、anoさん等がダンサーとして一斉に参加したパフォーマンスが大きな話題となり、大晦日に首位に返り咲いて以降は最新1月8日付までその座をキープしています。

 

日本のSpotifyにおいてクリスマスイブから成人の日にかけての伸び率が大きく上昇した曲の中には、back number「高嶺の花子さん」(148.1%)等レコード大賞や紅白と関係のない曲もあります。また双方で披露(ただしレコード大賞では過去の映像をOA)しながらも伸び率が104.0%と高くないAdo「唱」のような例もありますが、今回のSpotify動向からはレコード大賞や紅白の影響力がみえてくるのではというのが結論です。

 

 

紅白は一昨年においてSNS、そしてYouTubeでの活用を徹底。その実績はメディアが好んで取り上げるリアルタイム視聴率だけでは測れない指標の存在を示すに十分でした。昨年における動向も徒然研究室さんが追いかけていますが(上記ポスト群参照)、リアルタイム視聴率が低下したこととは大きく異なる動きだと解ります。

(一昨年の紅白の動向については、徒然研究室さんのnote、また徳力基彦さんがYahoo! JAPANに寄稿したコラムにて確認可能です。下記にリンクを掲載します。)

 

そして紅白やレコード大賞の動向は、音楽チャート面にも反映されます。尤もその影響は一週間程であり、それを今後にどうつなげるかが歌手側に問われるのですが、紅白等に限らずテレビでのパフォーマンス映像を歌手側の公式YouTubeチャンネルにてフルで四六時中公開することを望みます。音楽チャートへの影響度や歌手側のエンゲージメントの確立、そして最終的にはテレビの音楽番組への評価にもつながることでしょう。

そしてテレビにおいては、ビルボードジャパンによる複合指標から成るソングチャートのような、ネット配信等と組み合わせた複数の視野から成る判断基準を作らないといけないのではというのが私見です。そうすればリアルタイム視聴率のみを判断材料とし(他の好い動向はスルーして)、紅白等の非難に勤しむメディアや市井も減ることでしょう。

 

 

最後に。年末年始で音楽聴取の時間が狭まり、且つレコード大賞や紅白披露曲が上昇を果たす中にあって、元日にリリースしたNumber_i「GOAT」の動向は注目に値します。1月8日付では上位50曲中で唯一前日から再生回数を下げたことは気になりますが、仮にビルボードジャパンソングチャートで好成績を収め、メディアでも紹介される等によりライト層へも浸透すれば、ロングヒットの可能性は高まるかもしれません。